
大分県のゆたかな森で、
森に根ざしたものづくりを行う
ブランドがあります。
長年にわたり林業を営んできた
「久恒山林(ひさつねさんりん)」が手がける、
「六月八日」です。
森づくりの経験を活かし、
スギやヒノキ、クロモジなど、
森の素材から香りのアイテムなどをうみ出しています。
このたび「六月八日」と、
ほぼ日のいい眠りのためのコンテンツ、
「ねむれないくまのために」が出会い、
あたらしいアイテムが誕生しました。
ここちよい森の香りで眠りをささえる、
「森のなかでねむる」シリーズです。
アイテムをご紹介する前に、
まずは「六月八日」のみなさんが大切にしてきた、
大分県中津市の、
耶馬渓(やばけい)の森をご案内しましょう。
ほぼ日乗組員のくま「ねむくま」と、
私たち「ねむくま編集部」が体験した、
森の記録をお届けします。
- アロマテラピストの植村さんのもと、
森の香りについて学びながら、
オリジナルアロマミストづくりを体験しています。
- ──
- ん、この香りは!
これはひと嗅ぎしただけでわかりました。
昨日、お父さんに嗅がせてもらったあの枝と同じ香り。
これは、クロモジですね。
- 植村
- はい、正解です。
- ──
- すごい、精油にしても、
森の中で感じたそのままの香りがします。

もくもくと精油をブレンドするねむくま編集部
- ──
- 精油ってブレンドしても、1つの香りにならずに、
それぞれの香りを感じられるのがおもしろいですね。
しかも、ひとつずつで嗅ぐよりも、
まぜ合わせたほうが、
親しみやすい香りになる気がします。
- 植村
- ええ、そうなんです。
香りは、組み合わせることによって
より引き立つんですよ。
- ──
- ほう。
- 植村
- たとえば、カボスなどの軽快な香りは、
フレッシュで感じ取りやすいんですが、
長続きはしません。
ですが、そこに重さのある
ヒノキなどの香りをブレンドすることで、
お互いを補い合って、
香りに奥行きをあたえてくれるんです。
- ──
- さまざまな香りが響き合う‥‥。
まさに、オーケストラですね。
- 植村
- ふふふ、そのとおりだと思います。
香りの世界でも、「ベースノート」というように、
音にたとえて表現をしたりします。
相性のよい香りどうしは、
お互いを引き立て合ってくれるんですよ。
- ──
- なるほど。
では、相性の悪い香りもあるのでしょうか。
- 植村
- ありません。
- ──
- ない。
- 植村
- ええ。
アロマテラピーの考え方としては、
香りの相性のよい悪いはあるのですが、
今回ご用意しているものの中では、ありません。
- ──
- それは、どうして?
- 植村
- 私たちがつくっている香りは、
すべて、この耶馬渓の森からうまれたものです。
同じ場所でうまれ育ったものですから、
どの香りもみんな仲良しで、
とても相性がいいんです。
- ──
- そうか。
もともとは同じ森で育ったもの同士ですからね。
混ざりあっても、
あの森のここちよい香りになるわけです。

オリジナルのアロマミスト、完成しました
- 植村
- じつは香りって、
体にとってとっても刺激の強いものなんです。
こういった精油も、
人によっては、
ムカムカと気分が悪くなってしまったり、
頭痛がおきてしまったりします。
- ──
- なんと‥‥。
いくらいい香りだからといって
強くしすぎてしまうと、
かえって体の負担になってしまう。
- 植村
- はい。
自然由来のものだからといって、
体にいいことばかりではないんです。
- まゆ
- 私たちは、
体にとってちょうどいい、
自然な濃度の香りを心がけています。
- ──
- 自然な香りの強さ‥‥。
というと、どのくらいの濃度でしょうか。
- 植村
- 森の中をあるいたときのことを、
思い出してみてください。
- ──
- ‥‥はい。
- 植村
- 森の「香り」を感じませんでしたか?
- ──
- あ、言われてみれば。
歩いているときはあまり気づきませんでしたが、
車から降りた瞬間や、深呼吸をしたときに、
たしかに感じました。
- 植村
- そう、その「香り」です。
決して強くは感じ取れないけれど、
ふんわりと、でも確かに香るあのかんじ。 - 私たちは、あの濃度が体にとって負担にならず、
いちばんここちよいと考えています。
森のなかで感じたあの香りそのままを、
みなさんに届けたいんです。
- シュッ‥‥。(ミストの音)
- ──
- はぁ‥‥、ほんとうだ。
目をつむると、本当に森の中にいるみたいです。
思わず深呼吸をしてしまいます。

- 植村
- ぜひご自宅で、
完成したアロマミストを、
このアイピローに吹きかけて使ってみてください。
- ──
- わぁ、それはよく眠れそうです。
- 植村
- 森の香りって、
寝室との相性が、とてもいいんですよ。
- ──
- ほう。
- 植村
- 森の香り、
つまり木々が出している香りの成分は、
「フィトンチッド」と呼ばれています。
この香りは、
入眠を助ける香りだと言われているんです。
- ──
- なんと、眠りを。
- 植村
- 森の中には、
目に見えないくらいの、
ほんのわずかな濃度でこの成分が漂っています。
遠くの山がぼんやり霞んで見える
「ブルーヘイズ」という現象も、
じつははこの「フィトンチッド」が影響しているんですよ。
- ──
- ああ、見たことがあります。
あれは、香りだったんですね。
- 植村
- ええ。
さきほどお話ししたように、
香りは基本的に、人間にとって刺激ですから、
強すぎると脳が興奮してしまいます。
でも、森の中にふんわりとただよう自然な香りは、
体に負担をかけることなく、
心と体をそっとととのえてくれるんです。
- ──
- まさに「眠り」にぴったり。
あらためて、「ねむれないくまのために」
とコラボレーションしていただいて、
ほんとうにありがとうございます。
- まゆ
- こちらこそです。
私たちが大切にしているのは、
森の「普通」をそのまま届けること。
お薬のような即効性はないけれど、
森の香りで、誰かの眠りの助けになれるなんて、
とてもうれしいんです。
(つづきます)
2025-05-12-MON