
大分県のゆたかな森で、
森に根ざしたものづくりを行う
ブランドがあります。
長年にわたり林業を営んできた
「久恒山林(ひさつねさんりん)」が手がける、
「六月八日」です。
森づくりの経験を活かし、
スギやヒノキ、クロモジなど、
森の素材から香りのアイテムなどをうみ出しています。
このたび「六月八日」と、
ほぼ日のいい眠りのためのコンテンツ、
「ねむれないくまのために」が出会い、
あたらしいアイテムが誕生しました。
ここちよい森の香りで眠りをささえる、
「森のなかでねむる」シリーズです。
アイテムをご紹介する前に、
まずは「六月八日」のみなさんが大切にしてきた、
大分県中津市の、
耶馬渓(やばけい)の森をご案内しましょう。
ほぼ日乗組員のくま「ねむくま」と、
私たち「ねむくま編集部」が体験した、
森の記録をお届けします。
- ──
- あの、
そもそものお話になってしまうのですが‥‥。
- まゆ
- はい。
- ──
- ブランド名の、
「六月八日」には、どんな意味があるのでしょうか。
- まゆ
- 私たちが、理想としている森。
それが、6月8日の森なんです。
- まゆ
- それは、ちょうど梅雨入りのころです。
長い冬をこえ、4月から5月にかけて、
森の植物たちが一斉に、ぐんぐんと成長します。
けれど、その時期って、
雨はあまり降らないんです。 - そんな森にふわっと降りそそぐ、
梅雨のいちばん最初の雨。 - それはもう、ほんとうにやさしくって。
サーッと降りそそぐと、
森じゅうの緑が、きれいにかがやくんです。 - まるで、
森のみんなが待ち望んでいたみたいに。
森全体がホッと一息ついているような、
安心感につつまれます。
- ──
- わぁ‥‥。
- まゆ
- 梅雨の時期には、
林業に携わる人々も、しばらく森に入らなくなります。
チェーンソーの音も止んで、しんと静かなんです。 - けれど、どこかざわざわとしていて。
木や、草や、虫や動物たち‥‥、
森のみんなが、いきいきとしているのが、よくわかる。 - 1年のうちで、最も生命力にあふれるこのとき。
6月8日の森を、大切にしていきたい。
そしてこの森を、多くの方に届けたいと思っています。

- ──
- まさに、
昨日、社長に案内していただいた、
「理想の森」ですね。
- まゆ
- ええ。
そもそも「六月八日」として
森の素材から精油づくりを始めたのも、
社長の発案からでした。
- ──
- ほう。
- まゆ
- ええ。
これからも森づくりをつづけていくには
どうするべきなのかを、
人一倍考えていましたから。 - やはり、
世の中の情勢が日々変わっていくなかで、
林業だけをつづけていくのは、むずかしいです。
そんななかでも、
これから先も、
森とともに暮らしていくために、
森にまつわる仕事を広げていかなくてはなりません。
- 植村
- 耶馬渓のある中津市には、
「ここで仕事をしたい」という若い方が、
多く移住してきています。
- まゆ
- 中でも、
耶馬渓の森に関わる仕事がしたいという
志を持ってる方が多くいらっしゃって。
- ──
- たしかに耶馬渓には、
森に関わる仕事が、ちゃんとある。
- まゆ
- そうなんです。
ですが、それが林業となると
どうしてもハードルが高くなってしまう。
そこで、
「六月八日」のようなアロマ製品なら、
森にまつわる仕事の、いい入り口になると思ったんです。
- ──
- なるほど。
同じ気持ちをもった人たちと、
うまくご一緒できているわけですね。
- まゆ
- はい。
植村さんは、7年ほど前から
「六月八日」の一員になりました。
もともとご自身でアロマブランドを持っていて、
最初はお客さんとして
「六月八日」に来てくれていたんですよ。
- ──
- そうでしたか。
- 植村
- ええ。
出会ってからはじめの2年ほどは、
それぞれのブランド同士でコラボレーションをして、
一緒にワークショップを開いていました。
- まゆ
- 植村さんの、香りの専門的な知識が
私たちのつくる「森の香り」にも加わることで、
「六月八日」の取り組みについて、
より深く伝えられるようになったんです。 - 「ああ、だからこの香りには、こんな力があったんだ」と、
あらためて気づくことが、たくさんありました。

- まゆ
- じつはすこし前から、
森の素材を活かした、食品づくりをはじめました。
- ──
- 食べものですか?
- まゆ
- ええ。
森や里山にまつわる食文化を背景にして、
おいしくたのしく、
日々の滋養にしていただけるような提案をしたくて。 - たとえば、
クロモジのお茶や森の素材を使ったクッキーなどです。
- ──
- なんと。
ほんとうにムダになるところがない。
- まゆ
- そうなんです。
森は、単純に「取るだけ」で終わるものではありません。
山から分けてもらって、
また手入れをして育てていく。
これからも森とともに暮らしていくためには、
そんな「循環」が大切なんです。
- 植村
- そのために私たちは、
森と人のペースを合わせることを意識しています。
- ──
- ペース?
- 植村
- ええ。
たとえば、「芳香蒸留水」です。
- まゆ
- ご覧いただいたとおり、
木から採れる精油の量はほんのわずか。
それなのに、
もし私たちがどんどん精油を消費してしまったら、
森の成長スピードを追い越してしまいます。
- ──
- それでも使おうとすると、
森が枯渇してしまう。
- まゆ
- そのとおりです。
そこで、副産物である
「芳香蒸留水」も一緒に活用します。
こうすることで、人の消費のペースと、
森の成長のペースとを、合わせることができるんです。

- まゆ
- 「循環」ともうひとつ、
大切にしていることがあります。
- 植村
- アロマ製品を販売したり、
ワークショップを開催したりする時に、
いつも目標にしていることなんですが。
- ──
- ほう。
- まゆ
- お客さまを、「森に近づける」ことです。
- ──
- 森に、近づける。
- まゆ
- いま、都市部に住んでる方でも、
一度か二度は、森に触れた記憶があると思うんです。
- 植村
- たとえば、
子どものころのキャンプや、公園の大きな木とか。
そんな身近な自然も、立派な「森」です。
- まゆ
- 私たちの製品を使って、
みなさんが自分の中にある
森の記憶を思い出してくれたら、すごくうれしい。 - さらに、
「あの公園、久しぶりに寄ってみようかな」とか、
「今度の週末、高尾山行ってみようかな」って、
そう思ってもらえたら、もっとうれしい。
- ──
- この2日間、
みなさんに森のことを教えていただくうちに、
普段なんとなく見ていた土や木にも、
自然と目が向くようになりました。
- まゆ
- わ、うれしい!
- ──
- 自分の家の近くに生えている木が、
いったいどんな木だったのか、
いまとても、気になっています。
- 植村
- わあ、よかったです。
- まゆ
- なにも、「みなさん、耶馬渓に来てください!」
というわけではありません。 - ただ、風にゆれる公園の木をみて、
ふと「森」を思い出してくれたら。 - すこしでもこころを、
「森」に近づけてくれたなら。
多くの人が、「森」を想ってくれることが、うれしいんです。
「六月八日」のみなさん
(おわります)
2025-05-13-TUE