大分県のゆたかな森で、
森に根ざしたものづくりを行う
ブランドがあります。
長年にわたり林業を営んできた
「久恒山林(ひさつねさんりん)」が手がける、
「六月八日」です。

森づくりの経験を活かし、
スギやヒノキ、クロモジなど、
森の素材から香りのアイテムなどをうみ出しています。

このたび「六月八日」と、
ほぼ日のいい眠りのためのコンテンツ、
「ねむれないくまのために」が出会い、
あたらしいアイテムが誕生しました。
ここちよい森の香りで眠りをささえる、
「森のなかでねむる」シリーズです。

アイテムをご紹介する前に、
まずは「六月八日」のみなさんが大切にしてきた、
大分県中津市の、
耶馬渓(やばけい)の森をご案内しましょう。
ほぼ日乗組員のくま「ねむくま」と、
私たち「ねむくま編集部」が体験した、
森の記録をお届けします。

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第3回 木のすべてを、 あますところなく。

森を案内していただいた翌朝、
私たちは、
雄一郎さんが森に入って作業をしているという、
山の中へとやってきました。
──
おはようございます。
雄一郎
おはようございます。
いまちょうど、
間伐で切り倒したヒノキの
枝の処理をしているところです。

雄一郎
枝や葉は、すぐにしおれてしまうので
幹に比べて、鮮度が落ちやすいんです。
枝葉まできちんと使うなら、
切り倒してすぐに処理をするのが、いちばんいい。
幹といっしょに、
こうやってちいさくして、
トラックに積んで帰ります。

森から帰ってきた私たちは、
雄一郎さんの案内で、
「六月八日」の拠点へとやってきました。
──
‥‥す、すごい。

──
とても立派で‥‥。
木もふんだんに使われていて、すてきな拠点ですね。
まゆ
さあどうぞ、入ってください。
──
おじゃまします。
植村
こんにちは。
アロマテラピストの植村です。

植村
「六月八日」でつくっている、
「香り」をご紹介しますね。
──
はい、よろしくお願いします。
‥‥あっ。
なんだか、いい香りが。
雄一郎
いまちょうど、ヒノキの蒸留をしているんです。
これが、精油を精製する蒸留釜。

植村
「六月八日」の精油は、
すべてこの場所で作っています。
まゆ
もともとキッチンだったところに、
父が蒸留釜をつくったんです。
ふつうにコンロなどがあった場所なんですが、
あるとき父が急に、
「ここに蒸留釜をつくる」って(笑)。
──
それは、すごい行動力です。
まゆ
ふふふ、
私も母も、はじめはびっくりしちゃって。
雄一郎
よいしょ。
これが、下ごしらえをしたヒノキです。
幹の部分を皮ごと、
フレーク状に細かく砕いています。

雄一郎
これに熱い蒸気をあてて、
香りの成分を引き出します。
──
蒸気で?
植村
ええ。
「水蒸気蒸留法」といって、
木のフレークに熱い蒸気をあてると、
精油の成分が水蒸気といっしょにあがってくるんです。
──
ほう。
植村
それを冷やすと、
精油と水分とが分離する。
純粋な精油を取り出すことができます。
雄一郎
ほら、
ここに精油がたまってきているでしょう。
──
ん?
雄一郎
このうわずみのところです。

──
あっ、
この2ミリくらい浮いている‥‥。
雄一郎
そう。
1度の蒸留で抽出できる精油は、ほんのわずかです。
この作業をくりかえし、
ひとつひとつ、アロマ製品をつくっています。
まゆ
精油の下にたまっている液体にも、
成分がとけだしているので、
「芳香蒸留水」として使うことができるんですよ。
──
どのように使うんですか?
植村
「芳香蒸留水」は、
精油にくらべて成分の濃度がやさしく、
刺激が少ないのが特徴です。
なので、ルームミストや、
アイロンがけをするときのミストとして、
気軽に使うことができます。
まゆ
私たちは化粧水として使ったりもします。
──
化粧水にも。
生活のいたるところで活用できるんですね。

まゆ
では、これからみなさんに、
「六月八日」の香りを、
実際に体験していただきます。
植村
今回は、眠る前に使っていただける
アロマミスト作りのワークショップをご用意しました。
──
わ、うれしい。
よろしくお願いします。

植村
いくつかの香りをお渡ししますので、
ひとつずつ嗅ぎ比べてみてください。
その中からお好みの香りをブレンドして、
オリジナルの香りを仕上げていただきます。

ヒノキ、スギ、カボスなど
すべて、耶馬渓の素材からつくられた精油 ヒノキ、スギ、カボスなど すべて、耶馬渓の素材からつくられた精油

植村
ではまず、
この香りから。
──
わ、すごい、「木」のいい香り、
ヒノキ風呂に入っているみたい。

植村
つぎは、この香りを。
──
わぁー。
さきほどより、さわやかな香りがします。
植村
では、こちらはいかがでしょう?
──
あ、柑橘系のフルーツのような。
こっちはさきほどよりも、
若くてスッキリとした香りですね。
植村
いまお渡しした3つの香り、
じつはすべて「ヒノキ」の香りなんです。
──
えっ!?
3つとも、ヒノキ?
植村
はい。
おなじヒノキでも、
抽出する部位がちがいます。

植村
1つ目の香りが、
ヒノキの「木部」から抽出した香りです。
──
「木部」というと、幹の部分ですか?
植村
はい。
ヒノキの幹を皮ごと細かくして、蒸留しています。
檜風呂のような、
なじみのあるヒノキの香りがすると思います。
2つ目の香りはヒノキの「枝葉」、
3つ目の香りは「葉」を蒸留して作りました。
──
ヒノキの葉って、
こんなにもフレッシュで
明るい香りだったんですね。
部位がちがうだけで、
こんなにも香りにちがいが出るなんて。
植村
一般的に出回っているヒノキの精油は、
木部からつくるものがほとんどです。
ですが、
山でヒノキを切るときには、
当然、枝や葉もいっしょに伐採します。
──
‥‥その枝や葉は?
植村
伐採した木を下ろすときに
山の中で切り落として、
そのまま放置されることが多いです。
──
さきほど山で
実際にヒノキを見ましたが、
枝や葉も、かなりの大きさがありました。
植村
そうでしょう。
そもそも、
1本の木を木材として使うときって、
半分くらいしか活用されていないんです。
──
なんと、半分だけ。
まゆ
木材として使えるように形を整えたり、
そもそも、
間伐材の活用法が限られていることもあって、
どうしても使わないところがでてきてしまうんです。
植村
なので私たちは、
アロマ製品づくりを通して、
これまで使われてこなかったようなところまで、
木のすべてをあますところなく、
活用していきたいんです。

DSC01928.JPG など

(植村さんのワークショップ、つづきます)

2025-05-11-SUN

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