みうらじゅんさんと糸井重里は、
40年以上のつきあいで、10歳違い。
なんだかんだでタイプのちがうふたりですが、
いろんな世界に飛び込んでは大きく口を開き、
何ごとも飲み込むようにつとめたことは、
共通項なのかもしれません。
いつもの思い出話からはじまり、
変わり目をともに振り返るおしゃべりは、
「ええかげんにしなさい!」
という漫才の最後の声がかかるまで、
終わることはありません。

>みうらじゅんさんとは

みうらじゅん

1958年、京都生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。
以後、作家、ミュージシャンなど多方面で活躍。
1997年にはみうらさんの言葉「マイブーム」が
新語・流行語大賞のトップテンに選出。
「ゆるキャラ」の名づけ親でもある。
2018年、仏教伝道文化賞沼田奨励賞受賞。
著書に『マイ仏教』、『「ない仕事」の作り方』
(2021年本屋大賞「超発掘本!」に選出)、
『アウト老のすすめ』、『ブツゾー・キッド』、
『老いるショック大賞』など

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第7回 ハエつきX。

みうら
僕はひとりっ子で、
望むものはできるかぎり与えてやりたいという
親のもとで育ちました。
「ゴムヘビはたくさんあったほうが怖い」
ということはね、
当時から、知ってたんですよ。
糸井
そうだよね、たくさんあったほうがね。
みうら
ゴムヘビといっても
当時はまだ、ちっちゃいやつが主流でした。
いまでこそほんとうにリアルな
デカいやつが売っていますけどね。
ですからなおさら当時は、あんなもん
「ほんとうのヘビだ!」と思う人、いませんでした。
しかし、あのちいさいやつであっても
5、6匹がトグロ巻いてたら、
なんとなく「うわぁ!」ってなるんですよ。
糸井
なるね。わかっててもね。
みうら
僕の実家は道の角にありました。
それを利用して、窓から外に
5体ぶち撒いてみました。
こんなふうに、わっと。
糸井
邪気を払うみたいに。

みうら
そして通る人がどんな反応をするか、
家の隙間から見てました。
糸井
まだ漢字だった「三浦純」の少年時代から、
そんなことを‥‥。
みうら
はい。
「やっぱりヘビも、たくさんのほうが
みんなびっくりするのがわかった」
とか調べて、
ノートにつけたりしてました。
小学生の頃は、もっぱら
ヘビと、ゴムでできたうんこ、
あれでやってました。
糸井
ああ、ゴムのうんこ、ありましたね。
あの名前はなんて言うんですか?
ゴムフンなのかな。
みうら
いえ、じつは、
業者の方がつけられた名前があるんですよ。
「ハエツキX(エックス)」とそれ以外、
というんですけど。
会場
(笑)
糸井
ヘビとおなじく、トグロありますよね。
みうら
トグロあります。
会場
(笑)

みうら
僕が当時持っていたのはトグロじゃなくて、
バッテンのタイプでした。
その説明書に「お湯をかけるとよりリアル」
みたいなことが書いてありました。
ほら、湯気が出ますから。
糸井
あああー、いいですね。
会場
(笑)
みうら
書いてあったとおりに湯気を立てて、
道のとこに置いて、
みんなが「わっ」となるのを見てました。
ヘビと同じで、
たくさんあったほうが効果的なんですよ。
糸井
うんこも団体客なほうがいいんですね。
みうら
「なんだよ、ここ! この地帯!」
糸井
「そういうとこかよ!」
「しかもなんかお湯かかってるし!」
みうら
大人になっても
その光景が頭にずーっと残ってました。
そうするとまぁ、
「これ作ってる工場、あるんだよな」
と思いますよね。
糸井
はいはい、思いますね。

みうら
僕は昔、ある深夜テレビ番組でコーナーを
持たせていただいていたことがありまして、
テレビ局の方に、
「ゴムのうんこ工場を見学したい」と
企画として申し出たことがあるんです。
調べてもらったところ、名古屋あたりに
工場がありました。
たしか「あんまりたくさんで来られても」
ということで、
残念ながら僕自身は足を運べなかったのですが、
ディレクターの人がひとりで行って、
工場の方にインタビューしてくれました。
で、工場の方が
「いつもは見せないんだよ」といって
秘密の製造工程をカメラに
見せてくださったわけですよ。
糸井
うんこの製造工程を?
みうら
そうです。
たい焼きみたいな型、
あれがうんこ型になってて、
そこにゴムをジャーっと流し込んで。
「誰にも見せないんだけどな、いつもはな」
とおっしゃりながら。
糸井
たしかに見たい人も
そんなにはいないかもしれないけども。
みうら
さらにその方が、焼いたうんこに、
別の段ボールから何かをひょいっとつまみあげて
ツッと刺す工程を見せてくださいました。
それね、ハエなんですよ。
糸井
ああ、なるほど。
会場
(笑)
みうら
それが「ハエツキX」と呼ばれている商品でした。
糸井
ショートケーキのイチゴに当たるものが
ハエなんだな。

みうら
そうです(笑)。
最後にイチゴを乗せるように、
あざやかに職人技で刺しておられました。
「おまえのとこだけだぞ、公開したのは」
ということでしたので、
ディレクターさんもその場で段ボールひと箱、
買って帰ってきたらしいです。
糸井
ひと箱、ハエつきのやつを。
みうら
「業者買い」っていうやつですかね。
収録後「みうらさん、欲しいでしょ」と
言ってきました。
欲しいって言うしかないじゃないですか。
「もちろん! もらいます」
糸井
そこも、鯉ですからね。
みうら
いまだに事務所の床に、
側面に「ハエツキX」と
マジックでなぐり書きされた
段ボールが置いてあります。

糸井
Xというのは交差してる形、
という意味なんだね。
みうら
そうです。
おそらく縦一本もトグロも
それぞれあるんじゃないでしょうか。
糸井
理想は一本だもんね、やっぱり。
みうら
そうですよね、ええ。
そのオヤジさんがね、ほんとに匠で、
焼いたうんこの表面にチャッチャッと色を
おつけになるんですよ。
糸井
急いで、
変わり目の話に行きたいんだけど。
会場
(笑)
みうら
そうですよね、
変わり目の話でしたよね。
いやいや、僕としても、
変わり目の話を、
はなっからしたかったんですよ。
途中で糸井さんが
なんか違うことをおっしゃるから。
糸井
鯉の口あたりが入口で、
ゴムヘビでちょっと邪魔が入ったけど、
俺はいいと思う(笑)。
全体的に、好きですよ。

(明日につづきます)

文中写真:池ノ谷侑花(ゆかい)

2026-09-16-WED

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