ミナ ペルホネンの大規模な展覧会が、
東京都現代美術館ではじまりました。
ミナが好きな人だけでなく、
はじめてミナを知るという人にとっても、
たくさんの発見と驚きのあるすばらしい展覧会です。
デザイナーの皆川明さんにご案内いただきながら、
ミナの洋服が大好きな乗組員といっしょに、
会場をぐるっと見てまわってきました。

>皆川明さんのプロフィール

皆川明(みながわ・あきら)

1967年東京生まれ。デザイナー。
1995年に自身のファッションブランド
「minä(2003年よりminä perhonen)」を設立。
時の経過により色あせることのないデザインを目指し、
想像を込めたオリジナルデザインの
生地による服作りを進めながら、
インテリアファブリックや家具、陶磁器など
暮らしに寄り添うデザインへと活動を広げている。
また、デンマークKvadrat、
スウェーデンKLIPPANなどの
テキスタイルブランドへのデザイン提供や、
朝日新聞の挿画なども手掛ける。

過去にご登場いただいたコンテンツ
はたらき方をさがす旅。
ひと粒の麦から。
魚河岸とミシン。

>「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」について

ミナ ペルホネン/皆川明   つづく プロフィール画像

ミナ ペルホネン/皆川明 つづく

会期 :2019年11月16日(土)~2020年2月16日(金)
会場 :東京都現代美術館 企画展示室3F
時間 :10:00~18:00 ※展示室入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(2020年1月13日は開館)、12月28日~2020年1月1日、1月14日

都内の美術館では初となる
ミナ ペルホネンと皆川明さんの創作に迫る
大規模な展覧会です。
生地や衣服、インテリア、
食器などのプロダクトはもちろん、
デザインの原画、映像、印刷物や皆川さんの挿画など、
創作の背景を浮き彫りにする作品や資料も
たくさん展示されています。
またとないこのチャンスをお見逃しなく。

展覧会特設サイトはこちらからどうぞ。

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第5回

終わりなき循環。

──
きょうはありがとうございました。
皆川
ありがとうございました。
ひとまずツアーはこれで終わりですが、
もしなにか質問などがあれば‥‥。
やまかわ
じゃあ、あの、いいですか?

皆川
どうぞ。
やまかわ
皆川さんが原画を描かれるときって、
頭のなかでどのくらいの完成イメージを
もっているんでしょうか?
皆川
例えば、プリントの場合だと、
ベースの素材を決めてない段階で、
すでに走ってるケースもあります。
感覚としては50~60%っていう感じですね。
やまかわ
サンプルで上がったものを見て、
イメージとはちょっと違うとか、
そういうこともけっこうあるんですか?
皆川
もちろんあります。
その意外性が良いときもあれば、
これじゃあダメというときもあります。
走りながら様子を見て、
素材を組み合わせていったり、
その生地でつくる洋服をイメージしながら、
すこしずつ完成に近づけていきます。
最初からあまり100%のプランはないですね。

やまかわ
つくりながら100%に。
皆川
そうですね。
やまかわ
ありがとうございます。
勉強になります。
──
私もいいでしょうか?
皆川
はい。
──
この展覧会を拝見して、
アウトプットの量もそうですが、
バリエーションの数にもすごく驚きました。
普段、どういうところから
インプットをされているんでしょうか?
皆川
ぼくの場合、
意外とアウトプットがインプットなんです。
つまり、絵を描いてる間に、
また別のことを思いついたりするので。
──
アウトプットがインプットになる?
皆川
そうです。
それこそアウトプットひとつで、
10コも20コも気づきがあります。
ぼくの場合は、
アウトプットとインプットが別々じゃなくて、
同時に起こるようなものなんです。
アイデアを出している限り、
新しいアイデアが入ってくる感覚があります。

──
アウトプットとインプットが、
ぐるぐる循環しているような‥‥。
皆川
そうですね。
終わりのない循環というか。
「インプットをする時間は必要だ」
と言う人もたくさんいると思うのですが、
ぼく個人のことを言えば、
あんまりそんなふうに感じたことはないです。
つくりつづけている限り、
いくらでもアイディアは出てくるんです。
かえって終わりが見えないくらい。
──
はぁぁ、まさに「つづく」なんですね。

皆川
ぼくらがタンバリンという柄を
いろいろ派生させているのは、
まさにそういうことなんです。
タンバリンをつくりつづけることで、
「あぁ、こういう可能性もあるんだ」って、
別のアイデアが生まれたりします。
技術的な可能性とビジュアルの可能性とが、
枝葉がわかれていくみたいに、
それぞれ新しいアイディアになる。
そういう循環を生むためにも
「つくりつづける、アウトプットしつづける」
ということは大事なんだと思います。
──
ありがとうございます。
皆川
最後にもうひとつ、ふたつくらいなら。
はい、どうぞ。
トミタ
きょうの展示を拝見して、
こんなに刺繍には可能性があるんだって、
ものすごく驚きました。
皆川
はい。
トミタ
皆川さんが刺繍という表現のおもしろさを感じたのは、
なにかきっかけがあったんでしょうか?

皆川
もともと機械をつかった刺繍は、
「均一なステッチしかできない」と、
人間側が勝手に思い込んでいたのか、
そういう均一なものがとても多かったんです。
トミタ
私もそう思い込んでました。
皆川
ぼくが最初に刺繍に興味をもったのは、
ミナを立ち上げる少し前からで、
「なんで刺繍って均一なタッチばっかりなんだろう」
ということになんとなく気づいたのが、
きっかけだったような気がします。
そもそも均一かどうかって、
じつは機械を動かすプログラムの問題なので、
ランダムに針を刺そうと思えば、
機械はそのランダムもちゃんと再現できるんです。
もっと自由でふぞろいで、
人間がするエラーすらもプログラムすれば、
まるで人間が縫ったようなタッチになります。
そうすることで機械と人を、
すこしだけ近づけることができるんです。

みつい
あの、私もいいでしょうか。
皆川
どうぞ。

みつい
ミナでは毎シーズン、
あたらしい柄がたくさん生まれていますが、
みんなでディスカッションして決めるのか、
それともそれぞれがアイデアを持ち寄るのか。
ミナのデザインはどのようにして
決まっていくんでしょうか?
皆川
最初のとっかかりのことばは共有して、
あとはけっこう自由ですね。
みつい
「とっかかりのことば」というのは、
皆川さんが「次はこれで行こう」という感じで、
みなさんに共有されるんですか?
皆川
まあ、ぼくだけじゃなくて、
誰かが思いついて、
それに同意したら決まるっていう感じですね。
みつい
へぇーー。

皆川
テーマというのも、
言ってしまえば解釈の仕方で変わります。
ひとつのことばが手がかりになったり、
一見、テーマとは無関係に思えても、
自分たちがそこにつながりや
解釈を見つけられればそれでいいので。
たとえば、太陽に対して水星のような、
すごく近い周期のアイデアもあれば、
冥王星のように距離は離れているけど、
同じ太陽系の惑星ということもあります。
みつい
ちなみに、新しいテキスタイルって、
ワンシーズンでどれくらい生まれるものなんですか?
皆川
いまちょっと絞りはじめてるんですが、
柄としては15から20のデザインがあって、
テキスタイルとしては130〜140くらいでしょうか。
もうちょっとあるかもしれないけど。
シオリ
えっ、140! それを毎シーズンですか?

皆川
そうですね。
シオリ
それでもちょっと絞ってるんですね‥‥。
皆川
最近はそうですね。
というのも、出そうと思えば
自分たちは限りなく出てしまうんです。
でも、お客様の立場からしたら、
そんなにたくさん種類があっても、
逆に困ってしまうんじゃないかって。
一同
はーーー!
──
ええ、そろそろ時間のようなので、
このへんで終わりにしましょうか。
皆川さん、きょうはありがとうございました。
一同
ありがとうございましたー。
皆川
ありがとうございました。
田口
じゃあ、最後に集合写真をとりましょう。
皆川
そうですね。とりましょう。
田口
みなさん、皆川さんを囲むような感じで。
「つづく」も見えた方がいいから、
その前にちょっとしゃがんでもらえますか。

皆川
ここ、上から照明がくるから、
顔にちょっと影が落ちちゃうんです。
みんな、すこし上を向いた方がいいかも。
田口
ああ、そうですね。
じゃあ、みなさん、
ちょっと上向いたままカメラを見てください。
スガノ
上向きでカメラを見る? 
なかなか難しいよ、それ(笑)。

田口
うん、いい感じです。
じゃあ、ラスト、もう一枚だけ! 
最後はこっちに手をふって終わりましょう!
みなさーん、おつかれさまでしたー!
一同
はーーーい!

(ありがとうございました!)

2019-12-14-SAT

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  • 渋谷パルコ8階「ほぼ日曜日」の
    ミナ ペルホネン企画展『つづくのつづき』、
    12月11日(水)よりスタート!

    東京都現代美術館で行われている
    展覧会「つづく」の「つづき」のような、
    そんな関連企画イベントを
    「ほぼ日曜日」でひらきます。

    展覧会「つづく」からあふれ出た
    貴重な原画やテキスタイル、スケッチなどを
    8つのテーマにわけて展示します。

    詳しくはこちらのページをごらんください。

    「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」記念企画

    会期 :2019年12月11日~2019年12月29日
    場所 :渋谷パルコ8階「ほぼ日曜日」
    時間 :10:00~21:00
    入場料:500円(小学生以下無料)
    主催 :株式会社ほぼ日