さあ、冬季五輪です。今年はイタリア。
ミラノとコルティナダンペッツォ(長い!)で
2月6日から2月22日まで開催されます。
かつては膨大な量のメールを
狂気じみた長さで翌日に掲載していた
「観たぞオリンピック」シリーズですが、
東京オリンピックでその形式は終わり、
その後に開催されたオリンピックからは、
ぼくが1日に1本、原稿を書く
というスタイルでひっそり続けています。
あ、ぼくというのは、ほぼ日の永田です。
さて、今回のオリンピックでは、
さらにのんびりと、書けたら書きます、
というくらいの感じで行きたいと思います。
そしてリアルタイムの観戦実況的な発信は、
Xの「#mitazo」をご覧ください。
さあ、はじまったらはじまっちゃうよ?
開会式から閉会式まで、よろしくお願いします!

 

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#04

4年後を目指し続けた竹内智香選手

 
7大会連続でオリンピックに出るということは、
いったいどういうことなんだろう。
わかるはずもないことを考えてみているのだから
わかるはずがないのだが、
それにしても、わからない。
ソルトレークシティオリンピック、2002年。
トリノオリンピック、2006年。
バンクーバーオリンピック、2010年。
ソチオリンピック、2014年。
平昌オリンピック、2018年。
北京オリンピック、2022年。
そして、ミラノ・コルティナオリンピック、2026年。
竹内智香選手が歩んだキャリアである。
はじめて出場したソルトレークシティから、
ついに競技生活を終えた今回のミラノ・コルティナまで、
単純に計算すれば24年だが、
それぞれのオリンピックのあいだに
4年の月日が流れているということが、
ぼくを途方もない気分にさせる。
いや、ぼくが途方に暮れてもしかたないのだけれど。
7大会連続オリンピック出場というのは、
24年として計算してはいけないと思う。
それは、4+4+4+4+4+4なのだ。
4年+4年+4年+4年+4年+4年なのだ。
竹内選手が出場するパラレル大回転は、
ほんとうにシビアな競技だ。
タイムで競う予選もシビアだが、
それを勝ち抜いたあとに待ち受けている
一発勝負の決勝トーナメントがほんとうに厳しい。
たとえば、惜しくも(ああ、惜しくも!)、
昨日、準々決勝で敗れた三木つばき選手と
相手選手の差はわずか0.02秒だった。
0.02秒なんて、ボードがちょっと
雪にひっかかっただけでロスしてしまう。
転倒はもちろん、ちょっとラインがふくらんだだけで、
ちょっとバランスを崩しただけで、
「4年に1度」のチャンスは終わってしまう。
それが、パラレル大回転という競技だ。
そしてほんの一瞬のなにかの要因で
勝負が決まってしまうと、
つぎのチャンスは4年後である。
そのあたりが一般人にはよく理解ができない。
葬送のフリーレンの瞳の奥をのぞき込むような気分だ。
それを6回くりかえしたのが、竹内智香選手である。
もちろん、オリンピックだけが勝負の場ではない。
ワールドカップや国内の大会も目標だとは思う。
けれども、長野オリンピックを観てスノーボードをはじめ、
卒業文集にも「夢はオリンピック」と書いた彼女が、
それを一番のモチベーションに
していることは想像に難くない。
靭帯断裂といった大怪我を乗り越え、
平昌オリンピックのあとは2年以上競技から離れ、
それでもオリンピックを目指し、
目指しただけではなく、日本代表として選ばれ、
7大会連続でオリンピックに出場している。
つぎこそ、と4年後を目指すことを、
6回もくり返したのが、竹内智香選手だ。
今シーズン限りでの引退を表明し、
このオリンピックを「卒業論文」と表した彼女は、
残念ながらきびしい決勝トーナメントに
進むことなく、競技人生を終えた。
直後に雪の上で行われたインタビューで竹内智香さんは、
とうとう現役を終えたことについて訊かれ、
「今日という日を選んでよかった」と答えた。
いろんなアスリートの最後のコメントを耳にしてきたけど、
こんなに清々しく、曇りのないことばは聞いたことがない。
そして、おせっかいだけれど、つけ加えておく。
7大会連続でオリンピックに出場したベテランのアスリートが
予選を通過できず引退、という事実だけをとらえて、
さすがに衰えてしまったんだな、
と思った人もいるかもしれない。
しかし、竹内智香選手は2025年、
スイスで開催されたワールドカップにおいて
3位となり、4年ぶりに表彰台に上がっている。
あたりまえだけど、それは紛れもない実力で、
たしかな実力で日本を代表することを、
7回も続けたのが竹内智香選手だということを忘れずにいたい。
最後に、この日、準々決勝で0.02秒差で敗れ、
6位という結果に終わった三木つばき選手は、
ものすごく悔しそうだった。
あの目は、きっと4年後を見据えているし、
ひょっとしたら竹内智香さんの魂を受け継いで、
その後も4年後を目指し続けるかもしれない。

(つづきます)

2026-02-09-MON

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