次第に日差しがあたたかくなってきました。
きれいで、やさしくて、おいしいものが
大好きなわたしたち。
親鳥であるニットデザイナー・三國万里子さんの審美眼に、
ときめきに花を咲かせる4人が水鳥のようにつどい、
出会ったもの、心ゆれたものを、
毎週水曜日にお届けします。
「編みものをする人が集える編み会のような場所を」と、
はじまったmizudori通信は、
ニットを編む季節の節目とともに一旦おやすみします。
ニット風景も一挙ご紹介です!

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♯012

2021-01-27

 
押入れを整理していて、古いスケッチブックを見つけました。
めくると、どうやらわたしが26、7歳頃に
落書き帳にしていたものらしいのですが、
見覚えのある絵も、ない絵もあります。
手を動かした記憶はなくても、
描かれているものに覚えがあることもあり、
「あ、この靴懐かしい」と手が止まったのが、上の写真の絵です。
描くときに高さがが必要だったのか、
ジョルジュ・シムノンのミステリー小説を台に使い、
底を見せてごろんと置いてある、この靴…。
たしか栗色の柔らかい革のチャッカーブーツで、
新婚生活のゆとりのない財布の中から
思い切って買ったものでした。
描きたいほど気に入っていたものだから、
記憶にも残っていたのでしょう。
もう20年以上も前のことなのに。
この絵の主役は明らかに靴なのですが、
眺めているうちに、台にした本の両脇に
消しゴムカスほどの大きさで
何かが描き込まれていることに気づきました。
左に描かれているのはこちらに背を向けて寝そべっている人物。
手前にはリュックサックと管楽器の形のケースが置いてあります。
ということは、これは間違いなく夫です。
彼は結婚当時、トロンボーンの奏者をしていましたから。
すると右側にいる人物はわたしと考えるのが妥当です。
自転車を傍らに立てて、
背を本に凭れかけ、脚を投げ出して座っている。
おそらくわたしは靴を描いた後で
気まぐれに自分と夫を画面に入れてみたのでしょう。
それにしてもこの人物たち、
新婚生活を送っているにしては
全く「ラブラブ」な気配が漂っていません。
距離を隔ててそっぽを向き、
それぞれの物思いにふけっているようで、
なんだか寂しそうです。
新婚時代、わたしたちはこんな夫婦だったっけ?
久しぶりにその頃のことを思い返してみると、
はい、たしかにこんな夫婦でした。
お互い、似た者同士なところに惹かれて
付き合って半年も経たずに結婚したのですが、
その似ている部分というのが
「自分を譲れないマイペースで頑固なところ」だったもので、
一緒に暮らし始めてみたものの、
どうやって距離を詰めたらいいのか、
(少なくともわたしは)わからなかった。
縄張り意識の強い野生動物みたいな男女が、
譲り合うことを知らないまま
狭いマンションで暮らし始めたのですから、
うまくいかないのは自然の成り行きです。
ただのいたずら描きではあるのですが、
深読みすれば、当時のわたしの寂しさと混乱が
この絵に表れているような気もします。
それでもわたしは夫のことを嫌ってはいなかったんだ、
とわかるサインが、よくよく見ると、
絵の中にこっそり隠されていました。
どこかというと、夫のお尻の後ろあたりの漫画的な記号。
小さな夫が、小さな「おなら」をしています。
ばかみたいですが、こういう描き込みをするとき、
わたしは相手のことをちょっとかわいいと思っている。
もう少し言うと、夫は夫で寂しいのだということを、
それをわかっていることを、
このため息のような記号で表そうとしているような気もします。

 
このころに比べて、今、
わたし達はずいぶん変わりました。
ひとことで言えば、調和的に、仲良くなった。
お互いの距離は、縮まったというよりは、
相手を見ながら適正な距離を測れるようになりました。
長い間に「夫婦だって人付き合い」だということを知り、
また家庭以外の場所で人と関わりながら、
それぞれに自立できるようになったのが良かったのでしょう。
何はともあれ夫とわたしは、
音楽や料理について気の合うおしゃべりのできる、
なかなかないくらい、いい友達同士になりました。
もし絵の中のわたしに、今のわたしから
何かアドバイスできるとしても、しないと思います。
何はともあれ自分で生きてみる、そうしないとわからないから、
という頑固なところは、今も昔も変わっていないからです。

冬服のお手入れ

 
ちょっとずつ日が長くなってきましたね。
冬の始まりに、クリーニングから帰ってきた
洋服を気持ちよく着ていたはずなのに、
もうだいぶ冬の終わりに近づいているようです。
気持ち、洋服が疲れているような‥‥。
我が家には汚したい放題の2歳児がいることもあり、
わたしの服は常に汚れる危険と隣合わせ。
汗や食べ物飲み物の汚れは
やっぱり水洗いが一番ちゃんと落ちるので、
できることならちゃんと自分で手洗いしたい。
知り合いの編集者のかたに
「洗えば洗うほどいい香りで柔らかくなって
 とってもいいのよ~~♡」
とおすすめされたのが、
写真右のTHE LAUNDRESSのウールカシミヤ素材
専用のシャンプー。
これを使ってセーターをざぶざぶ押し洗いしていると
ふわっといい香りが漂ってきて、
セーターの汚れもみるみる落ちるし、
とーってもすっきりとするので、わたしはすごく好きです。
セーターは平置きで陰干しすると、
きれいに仕上がりますよ。
(わたしは折り畳める洗濯用平干しネットを愛用してます)
そしてDr.BeckmannのStainRemoverは、
アパレルデザイナーのかたに
「白い服を着るなら、
一本持っておくと服が長持ちするわよ!」
とおすすめされて、買ってみました。
実は8年ほど気に入って着ている白いコートの襟が
悲しいくらい汗ジミがついてしまっていて、
春にクリーニングに出したものの
「落とせませんでした」と戻ってきて
これは捨てるしかないのだろうか‥‥と
落ち込んでいたのです。
なんせお気に入りだったため、
8年間ドライクリーニングのみの
お手入れで着ていたので、
自宅でウェットクリーニングするのをためらいましたが、
捨てる前に一回チャレンジ!の精神で、
シュシュっと洗剤をつけて、
つけ置きしてみたところ‥‥
だいぶ落ちました!!
洗剤の説明書を読むと
一度で落ちないシミにはもう一度つけ置きしてください。
と書いてあったので、二度目を試したところ、
だいぶすっきりと落ちて、
「お上着お預かりします」と言われても
堂々とお預けできるというくらいの白さになりました。
水洗い後、ドライクリーニングに出して、
ばっちり。
これで春までのお出かけも楽しく過ごせそうです。

外国からやってきたマグカップ。

 
先日、永く使っていたマグカップを割ってしまいました。
愛着があったのでどうにも寂しくなり、
いそぎ、心の穴を埋めてくれる後任マグを探すことに。
数日間、インターネット上のあらゆるマグを見続けるうち、
そういやあれは素敵だった、とふと思い出したのは
数年前に観た映画「Skyfall」でした。
007ことジェームズ・ボンドをサポートする武器開発係として
「Q」という男性が登場するのですが、
彼が使っていたイニシャル入りのマグカップ。
まんがみたいに大きく入った「Q」の文字が、
なんとも愛嬌があり魅力的だったのです。
さっそくネットの力を借りて捜索したところ、
イギリスのお店が販売しているデッドストック品を発見。
自分のイニシャル「Y」のものを注文し、
そわそわ待つこと1週間。
MI6のお国から、無事に我が家にやってきました。
新たな愛用品(になる予定)が手に入ったのも
もちろん嬉しかったのですが
外国から品物が届くというのが、
新鮮でしあわせな気持ちになれました。
海外はおろか、国内旅行にもなかなか行けず、
つい気持ちが内側に籠るような日々ですが、
小さい窓がひとつ、外に開いたような出来事でした。
また気軽に出かけられる日をまちわびつつ、
今日はこのマグで紅茶を飲んでいます。

miknitsのkinokoが編み上がりました!
私はボタンにこだわりがあって、実は毎回編み始める時に用意します。
けど、編み始める前に用意したボタンを
完成後に付けることは実際あまりないんです。
なんか、出来上がったニットをみると、
「この子に似合うのは、コレじゃない。」となる訳です。
今回も、すごく気に入ったボタンだけど、やめました。
手持ちで、すごーく気に入ったボタン
だけど、売り切れで3,4つしか買えなかった)
2種類を混ぜました。金属とタグアナッツのボタンです。
今日も職場で自慢げに着て、ボタンを見て誰か「手編み?」と
声を掛けてくれないかなあ〜と待つ私です。
(ゆり)

 

ステキなボタンですね!
バッチリなものがつけられると、
よりお気に入りになっていくような気がしますが、
違うと思ったら付け替えられるのも手編みのたのしさですね。

 

とても美しいkinoko ですね!
糸の色が冬の終わりに咲く
カタクリの花を思わせます。
微妙にいろんな色の混じったこの糸に
2種類のボタンを合わせたところにセンスを感じます。
会社の人、気づいてくれたかしら?


 

“わたしのニット風景”を引き続き募集します。
ほぼ日の中で編みものの進み具合やできばえを
みんなでたのしみあえたら、と思います。
完成した作品のコーディネート、お供のお菓子やお茶など
写真とひとこと添えて送付ください。

送り先→postman@1101.com 件名→わたしのニット風景

三菱アルティアムで行われている「編みものけもの道 三國万里子展」は31日(日)まで。渋谷PARCO「ほぼ日曜日」は2月7日(日)より開催します。お買い物も楽しめる場所なので、ぜひイベントページをチェックしてください!

2021-01-27-WED

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