日本語のわからない海外の人が、
翻訳ツールを使って
ほぼ日を毎日読んでいるとしたら? 
世界のどこかにひとりくらいは、
そんな人もいるのかなぁと思っていたら、
なんといました! ほんとうにいたんです!

彼女の名前は、マデリン。
オーストラリアに住む16歳の女の子からでした。
自動翻訳の精度に満足できず、
「公式の英訳記事をもっと出してもらえませんか?」
というメールをほぼ日に送ってきたのです。
日本語のわからない彼女が、
どうしてそんなにほぼ日を読むようになったのか、
ちょっと気になりませんか? 
メールでのやりとりを通して、
彼女が読んでいる「HOBONICHI」のこと、
もっとくわしく教えてもらうことにしました。
それでは、マデリン、よろしくね。

>マデリンのプロフィール

Madeleine(マデリン)

オーストラリア在住。
現在は17歳になり、
高校の最終学年を迎えました。
地元のスピーチ大会では、
3度の優勝経験を持つそうです。
好きな科目は「数学」。
好きなゲームは「MOTHER」。

翻訳ツールをつかいながら、
いまも毎日ほぼ日を読んでいるそうです。

※プロフィールは随時更新予定です。

前へ目次ページへ次へ

#04 本当にやりたいことは?

 
メールのやりとりを通して、
マデリンのことが少しずつわかってきました。
地元の学校に通う16歳で、
いま経済学に興味があるということ。
地元のスピーチコンテストで
3回優勝したことがあるということ。
そしてそれらのスピーチには、
糸井重里の書く「今日のダーリン」から
インスピレーションをもらっているということ。
それがどんなスピーチだったのか、
みなさんもやっぱり気になりますよね?
ということで、今日と明日にわけ、
本人おすすめのスピーチを2つご紹介します。
マデリンがどんな女の子なのか、
これを読むとちょっとわかるかもしれません。
それでは、まずはひとつめ。
タイトルは「本当にやりたいことは何ですか?」。
日本語で読みたい方は、
メール上の「Japanese」のボタンを押してくださいね。

『What Do You Really Want To Do?』

What do you really want to do?

Really?

Not just, ‘what would be something cool to do?’. Not just, ‘what do you tell adults that you’re going to do when you’re older?’. No, what is your real passion? What do you really want?

I don’t know what I really want.
Maybe you don’t know what you want, either. A lot of young people don’t know what they really want. Regardless, adults still constantly bombard us with the question of “what are you gonna do when you’re older?”
They expect us to aim high, and choose a career where we’ll make a lot of money, But at the same time, they expect us to be realistic and choose a traditional job.

Neither of those things really depend on our passion. Even if we find what we really want to do, it’s so far removed from our career and everything else in our life. Passions simply don’t pay the bills, and delegating what I love to be just a hobby” doesn’t seem right. Simply having fun on the weekend surely isn’t my reason for being.

True, career creatives artists, actors, writers they’re the people who are truly living their dream, who truly have free will to do what they really want. And it is these people who make the masterpieces of our time. People like Leonardo Da Vinci, Elvis Presley – those people.

You and I are not one of those people. Even if we wish we were.

I know that I’m smart. I’m capable. I’m hardworking. I’m sure you guys are too. But without a passion, how am I supposed to create my magnum opus? And, even if I find my passion, what I really want to do, still, to make it to the top of such highly competitive fields seems impossible.

This question of “what do you really want to do” ignores the reality of society, which is that your life is not really about you and your wants. Not only do we live with other people, but ultimately, we live for other people.

Simply doing what you really want in isolation won’t make you happy. It won’t contribute to a larger purpose. It won’t give you any sort of legacy. Rather, we should look to pursue an art or a meaning by sharing our talents with our community, even if the way we do that isn’t exactly what we really wanted to do.

Let’s say, there is a fantastic writer. He writes what’s true to him, but it’s unpopular, so it never gets published. Is he fulfilled?

Or maybe, there is a completely moral politician it’s hypothetical. She proposes legislation that fights for the worthiest of causes, but won’t compromise her values, to work with the opposition and no law is passed. Is she fulfilled?

Conversely, imagine there is a world-famous singer. He produces dozens of hits, but next to none of the songs he sings he wrote himself. Still, people around the world love him, knowing this. His name is Elvis Presley.

What about an artist who creates a masterpiece, but it was only a commission he took for money. Still, people around the world find his work to be one of the greatest pieces of all time. His name is Leonardo Da Vinci.

Maybe you and I don’t have one sole purpose in our lives. However, we can still find purpose pursuing our passions by collaborating with other people. And for those of us who are still looking for one, you can search for what you really want to do in your spare time.

『本当にやりたいことは何ですか?』

本当にやりたいことは何ですか?

本当に?

ただ「やれたらかっこいいな」ということではなく。
大人たちに
「大きくなったら何々をするつもりだ」と
話すようなことでもなく。
そういうものではなく、
あなたの本当の情熱は何ですか? 
あなたが本当に望むものは何ですか?

私には自分が望むものがわかりません。
たぶんあなたも、
自分が何を望んでいるのかわかっていないでしょう。
多くの若者は自分が望んでいることなんて
わかっていません。
それにもかかわらず、大人たちは私たちに
「大人になったら何をするの?」
という質問を絶えず浴びせかけてきます。
彼らは私たちに高みを目指し、
たくさん稼げる職業に就くことを期待します。
でも同時に、現実的になって、
昔ながらの仕事を選ぶことも期待しています。

そのどちらも、私たちの情熱とは関係ありません。
たとえ本当にやりたいことを見つけたとしても、
それは仕事や人生の他のすべてから、
あまりにもかけ離れています。
情熱だけでは食べていけないし、
大好きなことをただの「趣味」にしてしまうのも、
何かが違う気がします。
ただ週末にたのしむことだけが、
私の生きる意味であるはずがありません。

芸術家、俳優、作家、
いわゆるプロのクリエイターこそ、
自分の夢を生き、本当にやりたいことをする
自由意志を持った人たちです。
時代の傑作を生み出すのはそういう人たちです。
レオナルド・ダ・ヴィンチや、
エルヴィス・プレスリーのような人たち。

あなたや私は、そういう人間ではありません。
そうありたいと願ったとしても。

自分が賢いことは知っています。
能力もあります。努力家です。
きっと、みなさんもそうでしょう。
でも、情熱なくして、
自分の最高傑作をどう生み出すのでしょうか? 
それに、もし情熱があって、
本当にやりたいことを見つけたとしても、
そのような競争の激しい分野のトップに立つことは、
不可能にも思えます。

「本当にやりたいことは何か」というこの問いは、
社会の現実を無視しています。
「あなたの人生はあなた自身とあなたの望みを
中心にまわっているわけではない」という現実を。

私たちは他人と共に生きているだけでなく、
突き詰めれば、他人のために生きています。
孤立して、ただやりたいことをやっているだけでは
幸せにはなれません。
より大きな目的に貢献することもありません。
何の功績も残せないでしょう。
むしろ、私たちは自分の才能を
コミュニティと分かち合うことで、
芸術や意義を追求すべきなのです。
たとえその方法が、
自分が本当にやりたかったことと、
寸分たがわぬものではなかったとしても。

素晴らしい作家がいるとしましょう。
彼は自分にとって真実であることを書きますが、
それは人気がなく、出版されることはありません。
彼は満たされているでしょうか?

あるいは、完全に道徳的な政治家がいたとします。
あくまで仮の話ですけどね。
彼女はもっとも価値ある
大義のために戦う法案を提案しますが、
自分の価値観を曲げて野党と協力することはせず、
法案はひとつも通りません。
彼女は満たされているでしょうか?

逆に、世界的に有名な歌手を想像してください。
彼は何十ものヒット曲を生み出しますが、
彼のうたう歌のほとんどは、
彼自身が書いたものではありません。
それでも、世界中の人々は、
このことを知りながら彼を愛しています。
彼の名は、エルヴィス・プレスリー。

また、傑作を創り上げた芸術家はどうでしょう。
その傑作は、彼がお金のために引き受けた
依頼仕事にすぎませんでした。
それでも世界中の人々は彼の作品を
史上最高の傑作のひとつだと考えています。
彼の名は、レオナルド・ダ・ヴィンチ。

たぶん、あなたや私には、
人生における唯一無二の目的などないのかもしれません。
しかし、私たちは他人と協力することで、
情熱を追求する中に目的を見出すことはできます。
まだそれを見つけられていない人たちは、
自分の自由な時間に、
本当にやりたいことを探せばいいのです。

 
いやぁーー、おもしろい。
というか、すごいよ、マデリン。
みなさんは読んでみて、どう思いましたか? 
この連載に届いたメッセージは
本人にもお送りしますので、
よかったら感想などメールで教えてください。
(遠慮なく日本語のままでどうぞ!)
宛先はいつもの「postman@1101.com」です。
2つめのスピーチは、また明日ご紹介します。
こっちもまたおもしろいんです。
どうぞ、おたのしみに。

(つづきます)

2025-10-02-THU

前へ目次ページへ次へ