にゃーご、にゃーにゃーにゃー!
2025年2月22日はいつもよりも
ネコ成分多めなネコの日がやってきました。
ただいまTOBICHI東京で開催中の
「コロコロ毛玉日記展」のために、
たっくさんの絵を描いてくださった
漫画家の中川いさみさんにインタビュー。
3匹のネコたちに見守られながら
ご自宅でお話をうかがいました。
ネコたちと、中川おとうさんの
のんびりした関係性が素敵ですよ。
聞き手は、ほぼ日のひらのです。

コロコロ毛玉日記
朝日新聞beで連載中!

姉御肌の美ネコ

ケダマ

いちばん元気な

クーちゃん

食いしん坊!

テツオ

>中川いさみさんプロフィール

中川いさみ(なかがわいさみ)

漫画家/エッセイスト
1962年7月8日生まれ。
学生時代から漫画を描き始め、
1989年、『ビッグコミックスピリッツ』にて
4コマ漫画「クマのプー太郎」を連載開始し、
ナンセンス・不条理ギャグ漫画の騎手として話題となり、
シリーズ累計100万部のヒットとなる。
2003年朝日新聞広告賞受賞。
朝日新聞の土曜別刷り版「be」にて
「コロコロ毛玉日記」を連載中。
公式サイト「グッモーニン!

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3

ぜんぜん違うから、おもしろい。

──
『コロコロ毛玉日記』の連載がはじまった2020年は、
コロナの状況がかなり危機感の強い状況でしたよね。
その頃に描いていた頃と今とで、
描き方も変わってきたんじゃないでしょうか。
中川
コロナの状態を描いてほしいっていう
お題だったんで描いてきましたけど、
土曜の新聞に暗いこと描かれても
うれしくないじゃないですか。
──
それこそ、コロナの状況だって
毎週変わっていましたし。
中川
朝日新聞の土曜日版に載せているのは、
週1で8コマなんですよ。
これが毎日とか、週に4本とかだったら、
もっと描きやすかったと思うんです。
でも、週1だとネタがしぼられちゃうの。
あんまりゆるい話も描けないし。
もう2、3本あれば適当な話も描けるんだけど。
──
たしかに、ネタの鮮度も影響しそうですね。
中川
そうそう、そうなんです。
描いてから掲載までに2週間ぐらいかかるから、
ちょっと先のことも描いたりするんです。

──
ネコの「あるあるネタ」みたいなことも、
飼っているうちに溜まっていきますよね。
中川
それはそうなんだけど、
もうあんまり描くネタはないかな(笑)。
犬だったら、人によって好きな犬種が違うけれど、
ネコの場合、ネコ好きの人って種類問わず好きだから、
そこは助かってると思いますね。
犬のほうが、みんなが読むような
漫画にするのはむずかしいと思います。
──
ああ、そうかもしれないですね。
中川さんは、ご自身がネコを飼うようになるって
想像はされていましたか。
中川
ペットって、飼う人の性格が出ますよね。
飼えそうな人が飼っているっていう
イメージがあるんですよ。
ネコはなんというか、ぼんやりした人が似合うかな。
──
中川さんの場合、
飼いたいなぁって思っていたわけじゃなく、
気づいたらネコがいたっていうぐらい、
ぼんやりとしていましたよね。
中川
これまでもね、ぼくは自分から
動物を飼おうとしたことはないんですよ。
犬を飼っていたのも、
親父がある日連れてきたから。
それでも、責任感ってあるじゃないですか。
飼うからには15年ぐらい生きるわけだし、
責任を取らなきゃいけないなとは思うんです。
どんなにかわいいと思っていてもね、
なかなか自分から飼おうって思えないんですよ。
でも、ケダマは気づいたらうちにいたんで。
それなら責任もあるし世話しようかなって。
──
動物を飼うのは責任感。
中川家にやってきた動物たちは安心ですね。

中川
ぼくね、ネコは飼ってなかったんですけど、
親父がいろんな動物を連れてきたんです。
犬、猿、鳥とか飼ってました。
──
猿まで!
並びが十二支みたい(笑)。
中川
親父が仕事仲間からもらってきた
タイワンザルがいたんですよ。
今は法律で飼えなくなってるけど、
昔はけっこう自由だったんです。
犬と一緒に猿を飼ってるとね、
猿は犬の背中に乗っかって遊ぶんですよ。
──
わ、かわいい。
中川
おもしろかったなあ。すごく仲よかったの。
おにぎり握って、ポイッと投げてやるとね、
キャッチして食べたりするんです。
でもね、猿って縦社会だから、
親父が主人だってわかっているんです。
ぼくは子どもだってわかってるから、
えらそうにするとすごく怒る。
「お前、生意気だ!」みたいな感じで。
なかなかむずかしいですね、猿は。
──
猿もかわいくて大好きなんですけど、
ネコの日の話なんで、ネコに戻りますね。
最初は1匹だったケダマから始まって、
クーちゃんが来て、さらにテツオも来ました。
その中で変わっていったことはありますか。
中川
3匹とも性格はぜんぜん違いますよ。
ぜんぜん違うから、おもしろいんです。
ネコがそんなに性格違うとは思わなかった。
実際に飼ってみると、だいぶ違うんですよね。
家に何頭かいる方が、
ネコにとってもたのしいんじゃないかな。
ケダマもお姉さんになってから、
後からきたテツのことを、ふっとばすんです。
ほんとに、ネコパンチで。

──
ネコパンチってほんとにするんですね。
ネコを飼いはじめてから、
中川さんご自身の変化はありましたか。
中川
やっぱりネコってかわいいな、
と思うようにはなりましたね。
前にトイプードルを飼ってたときも、
それまで全然かわいいと思ってなかったのに、
実際に飼うとね、「ああ、かわいいな」って。
他の犬を見てもかわいいって思うようになったし。
──
テレビでもネコ特集ってよくありますよね。
そういう番組の見方も変わりませんか。
中川
現実的に勉強になるっていうのはあるよね。
クーちゃん
 (ニャー、ニャー、ニャーー)
中川
あ、クーちゃんも気にしてるね。

──
『コロコロ毛玉日記』の連載をはじめてから、
読者の方から反応ってありましたか。
中川
あ、新聞の反響はすごかったですね。
はがきとか手紙とかいただくんで。
新聞なんでお年寄りが多いですけど、
展示会をやったときには、
小学生もお母さんと来てくれたりしましたし。
──
漫画雑誌に載せるものと、
新聞に載せるものって違うんですか。
中川
新聞の場合は、漫画を読まないような人も
読んでるわけだから、突飛なものは描けないですね。
新聞の漫画は日常的なもので、
誰でも読めるようにしてないとダメですよね。
雑誌だったら、青年誌とか少年誌とかの区切りで
誰が読んでるかだいたいわかるんだけど。
──
たしかに、漫画を読み慣れてないと
理解できない表現ってありますもんね。
中川
そうそう。
ぼくだって、いまの漫画雑誌の漫画で
「なんだ、これ?」みたいになって、
読めないことがありますから。
みなさん、紙の漫画を買わなくなってるでしょ?
──
そうですねえ、漫画のアプリで
読むのが当たり前になっちゃいました。
中川
デジタルで読まれることが増えてきて、
そうなると右ページと左ページだとか、
読ませるようなコマ割りだとか、
描き方が変わっちゃうからわかんないですよね。
昔は、ページをめくったときに
視線がいくように描けって教わったんですよ。
まあ、『コロコロ毛玉日記』に関しては
1ページ8コマだから、関係ないんだけど。
──
家にコミックスを置いていたら、
8歳の娘に「これ、読んでいい?」って言われて、
読んで笑ってましたよ。
思えば、ぼくも父親の漫画を読んで
いろんな知識をもらったなあと思うんです。
中川
いろんな勉強もね、
全部漫画にすればいいと思うんですよ。
日本史とかで学習用の漫画はあるけれど、
もっとゆるい絵で描いてもいいですよね。
文章読むのも面倒だから、
漫画で勉強できたらいいんじゃないかな。
──
ああ、それはいいですねえー。
娘は学童で読んだ『はたらく細胞』のおかげで、
やたらと細胞に詳しくなっちゃいました。
中川
世界的にも、日本の漫画は売れてるんだし、
漫画で覚える方が楽だし、たのしいですよね。
アニメの歌も、外国で日本語で歌われてますから。

──
漫画はまだまだ伸びていきそうですね。
『コロコロ毛玉日記』の場合は
読者の年齢層が高いっていう意味でも、
コミックスとの相性はいいですね。
中川
やっぱりね、わかりやすいじゃないですか。
「ネコの漫画なんだな」って、すぐにわかる。
読んだことのない漫画を買うのって、
昔よりむずかしくなってますよね。
最近は立ち読みができないように
パッケージされてることも多いじゃないですか。
だから、中身がどんなのかなってわかんないけど、
この本だったら「あ、ネコ」ってわかるから。
──
どうやらネコが冒険するわけでもないし、
ラブが生まれるわけでもないだろうし。
中川
「日記」って書いてあるんで、
まあ日記でしょってわかりますよね(笑)。

(次で最終回だにゃ)

2025-02-24-MON

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  • TOBICHI東京で開催!

    コロコロ毛玉日記展

    2025年2月21日(金)ー3月16日(日)
    ※2月25日は店休日 11:00-19:00

    朝日新聞の土曜日別刷りbeで連載中の
    エッセイ漫画「コロコロ毛玉日記」の展覧会を
    ほぼ日の「TOBICHI東京」で開催中です。
    漫画に登場する約30点の原画の展示や、
    本展のために40点以上描きおろされた、
    キャンバス画やイラストが会場にずらりと並びます。

    くわしくはTOBICHIのサイトへ