
にゃーご、にゃーにゃーにゃー!
2025年2月22日はいつもよりも
ネコ成分多めなネコの日がやってきました。
ただいまTOBICHI東京で開催中の
「コロコロ毛玉日記展」のために、
たっくさんの絵を描いてくださった
漫画家の中川いさみさんにインタビュー。
3匹のネコたちに見守られながら
ご自宅でお話をうかがいました。
ネコたちと、中川おとうさんの
のんびりした関係性が素敵ですよ。
聞き手は、ほぼ日のひらのです。

コロコロ毛玉日記
朝日新聞beで連載中!

姉御肌の美ネコ
ケダマ

いちばん元気な
クーちゃん

食いしん坊!
テツオ
中川いさみ(なかがわいさみ)
漫画家/エッセイスト
1962年7月8日生まれ。
学生時代から漫画を描き始め、
1989年、『ビッグコミックスピリッツ』にて
4コマ漫画「クマのプー太郎」を連載開始し、
ナンセンス・不条理ギャグ漫画の騎手として話題となり、
シリーズ累計100万部のヒットとなる。
2003年朝日新聞広告賞受賞。
朝日新聞の土曜別刷り版「be」にて
「コロコロ毛玉日記」を連載中。
公式サイト「グッモーニン!」
4
漫画ではないなにか。
- ──
- 出版社の方から聞いたんですが、
『コロコロ毛玉日記』の発売の際、
かなりたくさんのサインを書かれたそうですね。
- 中川
- 1万冊書きました。
- ──
- 1万冊も!?
- 中川
- おかしいでしょ?
発売記念の期間限定で募集したら、
そんなに注文がきちゃったんです。
予約がきても全部で700冊ぐらいだろうと
たかをくくっていたのにね。
毎日平均で100冊ぐらい描いて、
一日に500冊書く日もありました。
サインを描くのに2か月半かかりましたから。
- ──
- ひえー、そのまま売上につながるとはいえ、
とんでもない数ですね。
しかも、中川先生のサインということは
お名前だけじゃありませんよね。
- 中川
- 名前だけだったらもっと早く書けるんだけど、
絵も描いてほしいって言われて。
ケダマを描いたり、ときには別な絵を描いたり。
- ──
- 「クマのプー太郎」を描くよりも、
描きやすかったりはするものですか。
- 中川
- あ、ケダマのほうが描きやすいですね。
プー太郎ってなんか描きにくいんですよ。
ネコは、わりとどう描いてもネコになるから。
- ──
- ファンにとってのキャラクターは、
当時の絵でイメージが固定されちゃいますもんね。
2020年に連載がはじまって、
1巻が出るまでに4年かかっていますよね。
毎週8コマだと、かなり時間がかかるんですね。
- 中川
- 2巻はそこまで時間かからないと思いますよ。
ただ、コミックスのための描きおろし作業にも
結局半年ぐらいかかっちゃってね。
デザインのやりとりも手がかかってますし。
- ──
- しかも、絵描き歌まで追加してるし。
- 中川
- わざわざ作曲を松任谷正隆さんに頼んで
録音してもらってさ。どうかしてるよね(笑)。
- ──
- ぼくたち「ほぼ日」も松任谷さんのスタジオでの
レコーディングを見学させていただきましたけど、
レコーディングに参加する機会は
なかなか貴重だったんじゃないでしょうか。
- 中川
- あ、でも『ストラト!』っていう漫画を描いてて、
バンドでメジャーデビューしたんですよ。
- ──
- あっ! レコーディングされる側で。
- 中川
- そうそう(笑)。
バンド漫画を描いて、CDを出したんです。
一時期、ライブハウスで活動してました。
なんでね、レコーディングは何回か経験あります。
- ──
- じゃあ絵描き歌も、絵と歌詞だけでなく、
リズムも考えながら作っていたんですか。
- 中川
- 絵描き歌だから、まあそうなりますよね。
松任谷さんも「最初から曲できてたよ」とは
おっしゃってました。
- ──
- たしかに、絵描き歌特有のリズムがありますもんね。
- 中川
- 絵描き歌の録音では、
オペラ歌手の方や子どもたちに来てもらったりして、
けっこう大変だったんです。
- ──
- 男の子と女の子で収録日を分けてましたよね。
- 中川
- そうなんです。
女の子たちは最初からみんなうますぎて、
男の子が入ることででたらめな感じが足せましたね。
それは最初から狙ってたことでもあります。
- ──
- こんなにAIが発達してきていますけど、
でたらめの魅力って、人間にしか作れませんよね。
- 中川
- やっぱり、未完成な方がおもしろいです。
少なくとも、ぼくはそう思います。
ちゃんとしてる漫画はあまり読めないです。
っていうか、うまく描けないから、
適当に描いてるんだけど(笑)。
気合を入れず、ダラダラと普通の日常を描いてます。
一生懸命みたいな感じの漫画じゃないですね。
- ──
- TOBICHIでのイベントでは、
お店にいらっしゃっていただけるんですよね。
- 中川
- ええ、いますよ。
前に『しあわせうさぎ』の展示を
やらせてもらったときは、結局毎日いましたね。
- ──
- その節は、ありがとうございました。
今回もラジオブースで
絵を描いてくださるんですよね。
- 中川
- 前回がたのしかったですよ。
今回も絵をたくさん描かなきゃいけないんで、
またちょっと頑張ります。
絵を描くのって、漫画よりたのしんですよ。
- ──
- あっ、そういうものなんですか。
- 中川
- 漫画だと、話を考えなきゃいけないでしょ?
ネタを考えても何も思い浮かばないことがあって、
そうなると面倒くさいですよね。
ネタがある程度決まってないと
描きはじめることもできないわけです。
絵の場合は、描いているうちに
「あ、こうしよう」みたいな瞬間があるから。
絵を描いて暮らせるんだったら
それでいいんですけどね(笑)。
- ──
- お部屋に飾られている絵がとってもかわいいです。
これから絵の作品をたくさん描いて
準備を進めていくところだと思うんですが、
逆に中川さんが手を動かしながら
「こういうことやってみたいんだよね」
ということが見つかったら、それはぜひ。
- 中川
- え、いいんですか。
なんか抽象的な造形物とかでも?
- ──
- もちろん、そういうものでも。
- 中川
- 漫画と関係ないものはやってみたいですね。
締切がないとやらないんで、何も作ってないですけど。
その辺がやっぱり漫画家なのかな(笑)。
芸術家なら、言われなくても作る人ですよね。
締切がないのに描くなんてことは、
昔からほんとにしてませんから。
誰かに見せるっていうのがないと、描かない。
- ──
- こどもの頃から、
勝手に漫画を描いているとかではなく。
- 中川
- 人に見せる用に描いちゃってましたよね。
いまもほぼ日手帳に日記を書いているけど、
何年後かに誰かが読むっていう前提で
書いてるみたいなところはあります。
自分用に描くってのは、あんまり思いつかなくて。
- ──
- 会期がはじまってからでもいいので、
「こんなの作っちゃったんだよね」
というものがあったら、お持ちください。
- 中川
- ああ、ほんとですか。
昔、粘土でなにかを作るのが好きだったんですよ。
でも、たまたま近くにあった観音さんを作ったら、
お袋から「時代劇の役者?」って言われて、
がっくりきてやめちゃったんです。
- ──
- ああ、そこでやめちゃったんですね。
- 中川
- あとは、小学生の頃に夏休みの宿題で
木材で家を作ったんですよ。
そしたらね、うますぎるって言われたんです。
「お前が作ったんじゃないだろう」って。
あんまりうまく作っても、
褒められないっていうのがわかったんです。
- ──
- そんなこと言われたら
モチベーションが下がっちゃうなあ。
でも、そういうことほど記憶に残るんですね。
- 中川
- 年を取ると、趣味がないとダメだなと思うんですよ。
いずれ仕事を辞めたときに何をするか考えるんだけど、
活動的なことはできなくなりますよね。
油絵を描くみたいな趣味になるのか、
ギターを弾くのかなとか。
そういう趣味を今のうちに育てておかないと、
いきなり始めてもむずかしいかなと思うんです。
今のうちに、考えておかないとね。
- ──
- 中川さんの場合、漫画も絵も音楽も、
結局仕事になっていたりしますし。
- 中川
- そうなんですよね。
「これやってるだけでたのしい!」みたいな、
そういう趣味を今のうちになんとかしないと。
- ──
- じゃあ、もし2月の会期までに
うっかりなにかを作っちゃったら、
展示させてもらえるよう
TOBICHIのスタッフには伝えておきます。
- 中川
- そのタイトルがいいですね。
「うっかり作っちゃった」って。
- ──
- できればネコがテーマだと、
展示とのつながりができますよね。
- 中川
- そうですね、ネコみたいなものがあれば、
見る人にとってもいいですね。
- ──
- はい、それもゆるいくくりとして。
それでは、TOBICHIで開催する
「コロコロ毛玉日記展」たのしみにしてます!
(終わりますにゃ)
2025-02-25-TUE
-
TOBICHI東京で開催!
コロコロ毛玉日記展
2025年2月21日(金)ー3月16日(日)
※2月25日は店休日 11:00-19:00
朝日新聞の土曜日別刷りbeで連載中の
エッセイ漫画「コロコロ毛玉日記」の展覧会を
ほぼ日の「TOBICHI東京」で開催中です。
漫画に登場する約30点の原画の展示や、
本展のために40点以上描きおろされた、
キャンバス画やイラストが会場にずらりと並びます。