ただいま、渋谷PARCO「ほぼ日曜日」で
絶賛開催中の「どっち?展」。
キボリノコンノさんの木彫り作品を
クイズ形式でたのしむイベントです。
ほぼ日曜日でおこなったイベントの中でも、
メディアで取り上げていただいた数は
歴代ナンバーワン!の話題ぶりですよ。
木彫り作品がもっとたのしく見られるように、
木彫りファンの糸井重里によるクイズ体験と、
キボリノコンノさんとの対談をお届けします。
「どっち?展」は3月10日(日)まで、
ほぼ日曜日でお待ちしてますね。

>キボリノコンノさんプロフィール

キボリノコンノ

木彫りアーティスト。1988年生まれ。
2021年に趣味で木彫りを始め、
「あっと驚くもの」をテーマに作品を制作し、
SNSで発表し続けている。
「溶けかけの氷」をはじめ、
「注がれるコーヒー」や「シガールと袋」など、
数多くの作品がTVやインターネットで話題となり、
2023年からプロの木彫りアーティストとして
本格的に活動を開始。
全国各地で展覧会やワークショップなどの
イベントを開催。

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ほぼ日でのインタビュー記事はこちら。
キボリノコンノのおくりもの

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(4)精密すぎてもつまらない

糸井
コンノさんはつまり、
スケッチをするように木を彫っているわけですね。
コンノ
ああ、そうです。
ほんとにデッサンと同じなんですよ。
ぼくの場合は3Dを3Dに
コピーしているだけっていう感覚で、
そこについて難しくないんです。
なんというか、夕食の焼き鮭を焼いてるのと
同じくらいの感覚で木彫りをやってるんです。

糸井
できるに決まっていることを、
「さあ、やろう」と思って彫っている。
コンノ
そうなんですよ、ええ。
糸井
いま、ぼくのそばにあるマカロンを
そういう目で見てみたんですけど、
たしかに三次元のものだから
三次元の作品にする人がいても、おかしくないですね。
1回、二次元にすること自体が
どうしてできたんだろうって思ちゃった。
つまり、コンノさんの場合、
本物のマカロンが置いてあるものを見て、
「なんでおまえ、二次元に描けるんだよ!」
って思っちゃうわけでしょ。

コンノ
そう、ぼくにはそっちのが難しいですね。
糸井
ちょっとコンノさんの目が伝染しましたよ。
コンノ
3Dを3Dにコピーするほうが、
ぼくにはよっぽどスムーズなんですよ。
糸井
作業の数が3Dの方が多いっていうだけですね。
二次元っていうのは結局のところ、
見たものを平面にしているんですよね。
あっ、そうそう。
過去の絵描きさんたちの絵って、
写真の技術によって圧倒的に変化したんですよ。
それまでは、あんなに
精密には描けていなかったんですって。
コンノ
そうなんですか。
糸井
それを研究して発表したのが‥‥、
ちょっとぼくの教養をひけらかすと(笑)、
デイヴィッド・ホックニーなんですよ。
コンノ
ほう。
糸井
デイヴィット・ホックニーは
自分でも絵描きでありながら、
その研究をまとめて本にしているんです。
ものすごく細密に描ける画家でも、
そこはいいやって省略している場所が
いっぱいあるわけですよね。
コンノ
うん、そうですよね。
糸井
思考って全部そうなんですよ。
脳の使い方って、ここはいいやっていうものを
どのくらいまで追っかけていくか。
おそらく、コンノさんのやっていることも、
そこはいいやって部分はあるでしょう?

コンノ
あります、あります。
糸井
ね。
でも、機械だったらそんなことは許さない。
どこまでも、忠実に写そうとなって、
目の中とか、セーターの毛玉まで
全部が見えるように写しているわけですよね。
コンノ
そうですね。
糸井
写真の技術が発達してからの絵描きは、
「俺よりも見えてるヤツがいる」って
わかった状態で描いているんですよ。
言ってみれば、科学が神なわけ。
コンノ
はあー。
糸井
写真を見て描いてもいいんだと思ったら、
やっぱり見ちゃいますよね。
コンノ
ああ、確かにそうなりますね。
しかも今、パソコンとかスマホの画面で
見られるじゃないですか。
そうすると、実物より拡大できちゃうから、
肉眼では見えていないようなところまで、
たぶん見えているんですよね。
糸井
すでに、ある種のCGに近いような発想が、
絵描きの中で起こっちゃったんです。
だから、絵画はもう写真なんですよ。
コンノ
ああーー。
糸井
まいりましたね。
コンノ
まいりますね。
そのお話とちょっと近いんですけど、
ぼくもリアルさをもっと高める方法はあるんです。
糸井
うんうん。
コンノ
いまは絵の具と筆で塗っているんですけど、
たとえば、スプレーみたいなもので塗ったりすれば、
グラデーションの表現ももっとできるんです。
でも、それをやっちゃうと、
ぼくの作品をスマホで見ているかたが、
拡大しても木彫りかわからなくなっちゃうんですよ。
糸井
なるほどね。
コンノ
たのしみがなくなっちゃうんです。
スマホで拡大して、
「あ、本当に木彫りだ!」っていう驚きを
たのしんでもらうために、
わざと、ギリギリのリアルまでは
追わないようにしているんですよね。

糸井
絵本『どっち?』の表紙にあったフランスパンも、
写真を撮った時に、影みたいに見せたいから、
グレーを入れているって
おっしゃっていましたよね。
グレーを入れると再現した時に近く見えるっていう
判断は人間の仕業ですよね。
コンノ
ええ。
糸井
コンノさんがやっていることって、
もともとは冗談みたいなものだと思うんです。
ユーモアのひとつとして。
コンノ
そうですね。
糸井
これからどこに行くのかって、
自分で考えたことはありますか?
コンノ
ないです。
ぼく、考えてないんですよ。
糸井
人は聞きたくなりますよね。
コンノ
聞かれますね、やっぱり。
でも、ぼくにはあんまり夢とか、
こうなりたいっていうのがあまりなくて。
でも、そんな気持ちでやっていると、
逆に無限にやりたいこと出てくるんです。
以前はスポーツもやっていたんですけど、
目標をひとつ決めちゃうと、そこに達成できない時、
ストレスを感じてたのしくなくなることが多くて。
だから、なんにも夢もなくたって、
今できるたのしいことを
全力でたのしくやっているんです。

糸井
大好きです、そういう考え方。
コンノ
ああーっ、よかったです(笑)。
糸井
結局、目標を作ると、
その材料を作る時間になっちゃうんです。
目標という素晴らしい建築があるにしても、
毎日その材料を運んでるだけの日とか、
地道な努力で意義があるのかもしれないけど、
目標の奴隷になっちゃうんですね。
コンノ
ええ、ええ。
糸井
それは良くないよって思うんだけど、
コンノさんを見てると、
やれそうもないことを探してるから、
どうなるんだろうなって思ったんです。
コンノ
自分でもわかんないですね(笑)。

(つづきます)

2024-02-29-THU

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  • 「どっち?展」は、3月10日(日)まで!

    渋谷PARCOの8階「ほぼ日曜日」で
    キボリノコンノさんの著書『どっち?』
    出版記念イベント「どっち?展」を開催中。
    木彫りの作品と、本物を並べて
    「木彫りはどっち?」とクイズ形式で
    作品をたのしむような展覧会です。
    クイズが全部で20問、合計24点満点のうち、
    あなたは何点を出せるかな?
    多くの方にご来場いただいているこのイベントも、
    3月10日(日)が最終日です。
    気になっていた方、後で行こうと思っていた方、
    あと少しで終わっちゃうので、お見逃しなく!

    キボリノコンノ クイズ型展覧会
    「どっち?展」
    期間:2024年1月26日(金)-2024年3月10日(日)
    場所:ほぼ日曜日
    時間:11:00~20:00
    備考:当日会場にて受付いたします。
       事前予約制ではございません。
    入場料:700円(小学生以下無料)
    詳細は「ほぼ日曜日」のページで。

    ほぼ日のYouTubeチャンネル「ほぼベリTUBE」の
    メンバーが「どっち?展」の体験レポート!