──

荒木さんは雲に愛情を持っていると思っていまして。
雲のどんなところを魅力に感じているんですか？

荒木

そうですね。
雲ってすごい素直なんですよ。

こちらの雲なんですけど、
規則的にできているんですよね。

──

等間隔ですね。

荒木

しかもつるっとした見た目してますけど、

実はこの写真の左側の方に山があって、
そこを越えてきた空気が山の風下で波打っているんです。
その波打っているところの波が高くなっている山の部分で
空気が上昇して雲ができて、
谷に向かうところで 空気が下降して雲が消えているという
状況になっています。

上がって下がって、上がって下がって、
というような空気の流れが見えている。

──

おぉ〜。

荒木

面白いですよね？
これはですね雲の姿が空の状態を反映して、
雲の姿、形が決まっている。
やっぱり周りの状況に素直に応えて、
雲がその姿を変えているということなんです。
その素直さが私はすごい好きなんですよ。

──

雲は周りの状況に合わせて形を、
変えてくれていると言えるわけですね。

荒木

逆に言うと、
雲の姿を見ることで空の様子もわかっちゃう。

例えばこれは山の上に雲が出続けている
状況になっています。
周りの雲は流されているんですけど。
同じ場所に雲が居続けるっていうのが、
山を越える空気の流れがまさにそこにあって、
そこに雲ができていることを示しているものです。

荒木

実はこれ、上空の風が強くて、湿っているときに
さっきの雲が空に吊るされているように見えるので、
吊るし雲とかレンズ雲とかいうんですけど、
こういうのができているときは
結構、天気が崩れやすい。

▲吊し雲（レンズ雲）

荒木

天気が下り坂になっているようなときに
まあこういう雲ができやすい。

天気の変化まで 私たちに教えてくれるんですね。

──

雲ってやさしいですね！

荒木

やさしいのかな‥‥

これ、衛星で見た雲です。
冬に東北の太平洋側で波打っているような雲が、
波状雲という雲 。
山を越えている空気の流れがあるから、
あそこに波ができているんですね。
その波がつながっているような状態になっています。
これを見るだけでどこに波があるのかが
わかっちゃいます。

▲波状雲

荒木

あとはこちらご覧ください。
九州の南の屋久島と
九州の西にある韓国の済州島の風下で
雲が渦巻いているのが見えますか？
渦の列ができているんですよね。

冬には寒気が吹き出して、海上に雲ができます。
屋久島と済州島を迂回する流れが
風下側で渦巻いているのは、
カルマン渦列（うずれつ）というものなんですね。
まさに普通は見ることのできない空気の流れを
雲が見えるようにしてくれているんです。

▲カルマン渦列

──

空気の流れを見える化してくれているんですね。
めっちゃ面白いです。

荒木

面白いの押し付けかもしれないですが‥‥。

あと、これ彩雲です。
虹色に見える雲があるんです。
年中見ることができます。

▲彩雲

荒木

巻積雲、別名イワシ雲、ウロコ雲と呼ばれる雲が
出ている時に特に見られやすい雲です。
高いところにある雲で、水の粒でできています。
水の粒が太陽の光とか月の光を曲げることで、
このように色が分かれて虹色になるんですね。

上空の風が強いと、雲がレンズ状になって、
大規模な彩雲が現れることがあります。

実は彩雲を見るためのコツがありまして、
コツさえつかめば結構見やすい。
イワシ雲とかウロコ雲と呼ばれている巻積雲が
空にあるようなときに、
まず建物などの影に入る。

太陽を直接見ちゃうと目を傷めてしまい危ないので、
まず自分の頭が建物とかの影に入っている状態になります。
太陽が建物とかでギリギリ隠れる位置に移動して
その太陽のすぐ近くの巻積雲を見てみると
虹色になっている。
肉眼でもわかるしスマホでも撮れます。

──

きれいな雲を見るにはコツがあるんですね。

荒木

そうなんです。
影に入って撮るというのがコツです。
これコツをつかむと、
いい雲や空がめっちゃ撮れるようになるんですよ。

私もそうだったんですけどコツを知らないで
撮っていたときは全然うまく撮れなかったんですよね。
それがちゃんと影に入って体を隠して撮ると、
とても高頻度で出会えます。

——

年に数回みられますか？

荒木

数回どころじゃないですよ。
何十回も撮れます。
数日に１回とかぐらいで撮れることもあります。
今日のように快晴で雲一つない状態だと
できないんですけどね。

ほかにも空一面にこういう巻層雲、
つまり薄雲とよばれるような
雲が広がっている時には
太陽に対して決まった位置に虹色の光の現象が
現れるということがあります。

▲巻層雲（うす雲）