よく見かけるのに
あまり知らないもの‥‥
それは雲です。
毎日雲を愛でている
「すごすぎる天気の図鑑」シリーズの著者で
雲研究者の荒木健太郎さんに、
雲の魅力と、
災害などをもたらす雲とうまく付き合う方法を
教えてもらいました。
雲が身近に感じられて、
空を見上げるのがたのしくなる。
そんな授業です。
担当はほぼ日のかごしまです。
荒木健太郎（あらきけんたろう）
気象庁気象研究所主任研究官。
1984年生まれ、茨城県出身。
慶應義塾大学経済学部を経て気象庁気象大学校卒業。
地方気象台で予報・観測業務に従事した後、現職に至る。
専門は雲科学・気象学。防災・減災のために、
気象災害をもたらす雲の仕組みの研究に取り組んでいる。
映画『天気の子』気象監修。
『情熱大陸』『ドラえもん』など出演多数。
著書に『すごすぎる天気の図鑑』シリーズ（KADOKAWA）、
『空となかよくなる天気の写真えほん』シリーズ（金の星社）、
『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』（ダイヤモンド社）
- ──
- ところで、荒木先生のご著書
「すごすぎる天気の図鑑」シリーズ（KADOKAWA）には
パーセルくんという空気の塊のキャラクターが
でてきますよね。 - パーセルくんのおかげで
雲ができることがわかりやすく理解できました。
パーセルくんはどうやって思いついたのですか？
- 荒木
- 気象学を勉強しようとしている人たちが
一番はじめにつまずきやすいのが
熱力学っていう分野なんです。 - 空気の熱的な振る舞いとかを議論する分野なんですけど
空気が持ち上げられて、気圧がどうなっていて、
温度がどう変わって、水が出て‥‥が難しいんですよ。
特に数式が入っているとさらに難しい。 - どうにかしたいなと思って
できたのが、パーセルくんです。
- ──
- 気象学を学ぶ人のために編み出されたんですね。
- 荒木
- 英語だと空気の塊をエアパーセルと言われるので、
そこから名付けています。 - 例えば雲ができる仕組みを考えてみましょう。
パーセルくんって温度が高い状態になっていると
水蒸気をめっちゃ飲むんです。 - つまり水蒸気を溜め込むんです。
でも温度が下がると水蒸気を全然飲めなくなっちゃう。
まだまだ飲めるって言って満足するまで水蒸気を飲んだ状態が
いわゆる湿度100%の飽和している状態です。 - ちょっと無理してたくさん飲みすぎちゃうことも
あるんですけど、
いっぱい水蒸気を飲んでいる状態のパーセルくんが
何らかの要因で冷やされると
飲める水蒸気の量が減るので、
水を体から出してしまうんです。
ゲボって出てきてきた水が雲なんですね。
- ──
- 雲って空気が飽和して
水が溢れ出している状態なんですよね。 - 空に雲があると、つらそうな顔をしている
パーセルくんを思い出して
「あー空気が飽和している状態なんだ」と
思うようになりました。
すごくわかりやすいです！
- 荒木
- 本当ですか？ これわかりにくくないですか？
- ──
- めちゃくちゃわかりやすいです。
長年の抱いてきた、
雲はどうやってできているかという疑問が溶けました。
- 荒木
- そうですか。
実際の空で、どういうふうにパーセルくんが
冷えるかというと
いろんな要因あるんですけど、
多くの場合はパーセルくんが持ち上げられることによって
雲ができているんです。 - パーセルくんは、地上にいると
気圧が高いんで周りから強く押されている状態なんですけど、
山の上に行くとポテトチップスの袋が大きくなるように、
空高いところで気圧が低いと、
空気が物を押す力が弱いんです。
押される力が弱まった分、
空気そのものが大きくなっちゃう。 - つまり膨張するわけですが、
体を大きくするエネルギーが必要なんです。
それを熱のエネルギーから使うんです。
そうすると温度が下がってしまうのです。
- ──
- パーセルくんの体が大きくなるのに、
熱エネルギーを使うので温度が下がるんですね。
人間っぽいですね。
（つづきます）
2025-04-24-THU
-
「すごすぎる天気の図鑑」シリーズの
スピンオフシリーズの
第2弾は防災がテーマ。
豪雨、台風、猛暑などの異常気象、
地震や噴火が起きる現象を
荒木健太郎さんがわかりやすく解説。
さらにそれに備える方法も
教えてくれています。
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