
こんにちは。ほぼ日の松本です。
私は人と暮らすことに興味があります。
でも、うまくできる自信がありません。
そこで、さまざまな形で人と一緒に
暮らしている人たちに、お話をうかがうことにしました。
最初に登場いただくのは、中学からの同級生であり、
17年間一軒家で同居しているお笑いコンビ、
カナメストーンさんです。
自分たちの信じる「おもしろい」を体現し続けるおふたり。
そのハッピーでシュールな仲の良さは、
揺るぎない覚悟と柔らかい心のもとに生まれていました。
互いを尊重しながらおもしろがる
ふたりの暮らしぶりを知れば、
誰かと一緒に生きる不安が、希望に変わるかもしれません。
- ──
- そもそもの話になりますが、
おふたりが一緒に暮らし始めたのは
どうしてだったのでしょうか。
芸人さんでも、コンビの相方どうしで
一緒に暮らしている方って、
けっこう珍しいと思いますが‥‥。
- 山口
- 零士が持ちかけてくれたんです。
- 零士
- 大学生のときに、
いろんなドラマを見ていた影響で、
「同じ家に暮らすのって楽しそうだな」と
思ったんです。
あれ、憧れるじゃないですか。
その憧れの延長線上で、
山口と住むとたぶん毎日が楽しいぞ!
みたいな(笑)。
その気持ちを行動に移しただけですね。
- 山口
- 俺も「よくわかんないけど楽しそうだな」
って。
- 零士
- たぶん、みんな、小学校とか中学校、
高校の友だちと「大きくなったらさ、
一緒にパン屋さんやろうよ」
みたいなこと、話すじゃないですか。
- ──
- ありました、ありました。
- 零士
- あれをみんな、
本当にやったらいいのにって
思っちゃいます。
なんで、いつの間にか「やらないでおこう」
となっちゃうんだろう。
- ──
- たしかに、
なんで諦めちゃったんでしょうね。
- 山口
- 中学のときから、
「将来はふたりでなんかやろうね」って、
ふんわり話していて。
そのときはたしか、
スタイリストになる話をずっとしてました。
「誰のアシスタントになって」みたいな。
- 零士
- その話するだけで、もうワクワクしたね。
「東京ってどんな街なんだろう」とか。
- 山口
- それが、最終的にはお笑いになったんです。
- 零士
- 俺がお笑いが好きで、山口を誘いました。
- 山口
- なんでもよかったんだよ、零士とできれば。
- ──
- おふたりで一緒にいることが
自然な流れだったんですね。
- 零士
- 「ふたり暮らしやめよう」と思ったことも、
一回もないですね。
- 山口
- タシカニ.
- ──
- すごい。
- 山口
- 17年か。
- 零士
- すごいよね、よく考えたら。
- ──
- 最初から、
一軒家に住むことは決めていたんですか。
- 零士
- なんとなく「一軒家いいなあ」と
思っていて、不動産屋さんに行ったら、
一軒だけヒットした一軒家が
いまの家なんですよ。
「ここで暮らしたら絶対楽しい」と思って、
即行で決めました。
- ──
- 一軒家だと、きっと、
自分だけのスペースがあるのも
いいですよね。
- 零士
- そうなんですよ。
ひとりの時間もぼくら、
意外と好きだったりするんです。
- 山口
- そうね。
- ──
- ひとりの時間があるんですか。
- 零士
- ‥‥でも、寝る前の30分だけか(笑)。
- 山口
- そのときだけだね。
- 零士
- それでじゅうぶんっていう
ところまできましたね。
いま、もう17年住んでいるとなったら、
まわりから「こえー」みたいな見られ方を
するようになって、
それも最高だなって思ってます。
「俺らそんな怖いんだ、なんかうれしいな」
みたいな(笑)。
- ──
- 怖がられるのがうれしい、ですか。
- 零士
- 自分たちが、
長い年月をかけて怖くなっていったのがね。
- 山口
- そういう映画みたいでね。
- 零士
- そうそう、
そういう映画がぼくら、
めっちゃ好きなんです。
あの映画に寄っていけてるのが、
すごくうれしいです。
- ──
- アメリカの片田舎の、
誰も住んでいないはずの洋館で‥‥
みたいな映画でしょうか。
- 零士
- そうそうそう!
たまたま入ったら、ヤバい住人がいて。
- 山口
- でっかいミキサーみたいな機械に
人間を入れてて。
- 零士
- 粉々にするやつね。
本来は木とか岩を粉々にするための
機械なんだけど。
- 山口
- そうそうそうそう。
- 零士
- そういうことをふたりでやってるやつら、
みたいな(笑)。
いま、そんな見られ方になってきたのが、
もう最高です。
一緒に住み出したころは、
まだ若かったから、怖がられなかったけど。
- 山口
- そうね。俺らが、まだ住んで
1~2年目ぐらいのときはさ、
家のまわりのやつらが、怖く見えたじゃん。
- 零士
- そうなんですよ。
近所に住んでいるおじいちゃん、
おばあちゃんを見かけては
「ずっと住んでる、こえー」って。
- 山口
- ずっと同じ人たちがいて、
集落みたいになってたからね。
- 零士
- それが、いまは。
- 山口
- いまは俺らよ。
- 零士
- 俺らがそっち側になっちゃった(笑)。
まわりの人から「なに、あの家」
「なんか、いつもふたりで
チャリンコで出かけてて、怖いんですけど」
と思われることに、
心地よさすら感じています。
- ──
- 最高ですね。
芸人さんのなかでは、とくに男の人だと、
なんとなく「仲が悪いほうがかっこいい」
という風潮もあったかと思うのですが、
そのなかでもおふたりはずっと自然に
仲良くいられたんですか。
- 零士
- 自分たちがあまのじゃくだったのが
よかったんだと思います。
当時は、たしかに、芸人は
相方とそこまで仲良くしない、
お互いの電話番号も知らないくらいがいい
という価値観が大きかった気がします。
その価値観を否定したかったわけではないですが、
真似するのは、俺たちはなんだかイヤで。
「いやいや、無理して仲悪くなる
必要なんかまったくないし」と
思っていたんです。
- 山口
- そうそう、無理して仲悪くなるなんて、
いちばん意味わかんないもんな。
- 零士
- うん、いちばん意味わかんないよ。
本当に仲が悪くなったんだったら
しょうがないですけど、
仲いいのに仲悪いふりをする必要はない。
結果的に、みんなと違うことを
することにはなったけど、
あまのじゃくだから、
ちょうどよかったんです。 - あるとき、千鳥のノブさんがテレビで
「コンビなんて絶対仲いいほうがいい」
とお話しされていたのを聞いて、
「よかった」と思いました。
尊敬する先輩がそう言っているんだから、
俺ら間違ってなかったんだなって。
(明日に続きます)
2026-08-12-WED