京都のアサヒビール大山崎山荘美術館で、
みうらじゅんさんの「マイ遺品展」が開催中です。
京都といえば、みうらじゅんさんの故郷。
おそらく「故郷に錦」のすごい展覧会に
ちがいありません。
そこで、いつもみうらさんにお世話になっている、
ほぼ日の見習い乗組員の鳥、シジュちゃんが
美術館におじゃますることにしました。
なぜなら展示の中にシジュちゃんの写真もあるという
情報を聞きつけたからです。ほんとうにあるのかな‥‥?
みうらさんが館内を案内してくれます!

みうらじゅんさんのOFFICIAL SITE

見習い乗組員シジュとは

背景:みうらじゅん「コロナ画」より
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第4回

糸井さんに見せたい画。

シジュ
次は待ちに待った、
ゆるキャラのいる展示館に移動だね。
みうら
シジュちゃん、
廊下を渡るの、たいへんじゃない?
シジュ
だいじょうぶだジュ。

みうら
一回脱いで、歩いて、
また着たほうが
早かったんじゃない?
シジュ
そうとも言えるだジュ。
みうら
もうちょっと距離あるよ。
シジュ
ふぅぅ、着いた。
あ、みうらさんのお人形がいた。
みうらさーん。

みうら
見えてんの?
シジュ
見えてるよ。
これ、ゆるキャラじゃないね。
いったいなんだジュか?
みうら
これは「ワニックブーム」だよ。
シジュ
ああ、ワニね。
ワニのマイ遺品。
みうら
これは比較的最近のブームだね。
僕、ワニを集めだしたんだよ。
ほら、この僕に似せた人形は
ラコステ着てるでしょう。
僕はあのトレーナーを買うとき、
生まれてはじめて
ラコステのお店に入ったよ。

シジュ
なんでワニなんだジュか。
みうら
ワニのパニック映画って
けっこうあるんだけど、
いまひとつ流行ってないなということに気づき、
僕がどうにかしなきゃなと思ったんだね。
シジュ
そうかそうか。
みうらさんは、
「好きになるのが好き」なんだった。
みうら
そうそう、
好きになるのが好きなだけで、
もともと好きなわけじゃないんだよ。
だからまだ、
ワニもそんなに好きじゃないんだ。
シジュ
どうして好きになるのが好きなんだろう。
みうら
昔からそうだったんだ。
好きになるのが好き、ということはつまり、
「好きになる過程」が好きなんだ。
見てよ、冷蔵庫に貼るマグネット。
こんなの好きになるわけないじゃん、普通。
シジュ
そうだジュよね。
みうら
「冷マ」と呼んでるやつなんだけどさ。

シジュ
これもずいぶん集めたねぇ。
びっしり貼ってあって、
もう冷蔵庫なんだかなんなんだか
わからないだジュよ。
集めたやつも、作ったやつもあるね。
これはみうらさんの絵の「冷マ」?
みうら
ああ、これはね。
シジュちゃんには前に
電話で伝えたことがあるでしょう。
このコロナ禍で描いた、
コロナ画の冷マ化だよ。
美術館のショップでこの冷マを
セット売りしてるから、帰りに見てみて。
シジュ
コロナ画って、あの巨大な‥‥?
みうら
F10号のキャンバスに連作を描いていったら
いつの間にか巨大になってしまった、
コロナ収束を締め切りとする絵画だよ。
もちろん今回も展示しています。
現在のところ55枚になったから、タイトルを
「コロナ画55(ゴーゴー)」にしました。

シジュ
いまは55枚だけど、さらに増えていくわけだジュね。
みうら
すでに家で3枚くらい完成しちゃってるよ。
いずれピカソの「ゲルニカ」クラスの大きさには
なると思うんだけどね。
シジュ
どこを最初に描きはじめたんだジュか?
みうら
やっぱり最近の「ワニックブーム」が
頭にあったので、
ワニにカエルが乗っているとこを描こうと思ったら
うまく描けなくて、鼻の部分がはみ出たんだよ。

シジュ
いろんなものが、
ここには描かれているだジュけれども。
みうら
こうなったら、僕が
63年間で影響を受けてきたものを、
死ぬ前に見るという「走馬灯」に
入れておこうと思ってさ。
こうしていちど絵に描いておくと
たぶん頭にフィックスすると思うんだよね。
だから、僕が死ぬときには
この絵を見ていると思ってください。

シジュ
これさ、最終的に糸井さんに
見てもらいたいって絵なんでしょ?
みうら
そうなんですよ。
糸井さんに、昔、
「あんたは絵が下手だからね、
たくさん描きなさい」
というグッドアドバイスをもらったの。
それでこうして41年、やってきました。
ほんとに、感謝してるんだよ。
そのことを、コロナ禍で思い出してさ。
シジュ
そっかぁ。
みうら
うん。
最近の僕はちょっとおごってたのかもしれない。
手を抜いてスカスカに描いた絵もあったと思う。
だから今回は、ビッチビチに描いてます。
これを最終的に、糸井さんに見てもらいたいんだ。
締切はまだ先のようだからね。
シジュ
そうだね、あらたな第6波が来てしまって。
みうら
これが完成したあかつきには、
糸井さんに見せるために、
どうにか展示してくれるかなぁ? シジュちゃん。
シジュ
うん、わかった。まかしてだジュよ。

このときのふたりのおしゃべりのようすを、
よかったら、動画でごらんください。

(明日につづきます。明日は最終回)

2022-01-21-FRI

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  • アサヒビール大山崎山荘美術館
    開館25周年記念
    みうらじゅん マイ遺品展
    2021年12月18日(土)– 2022年3月6日(日)

    みうらじゅんさんが長年にわたり収集、制作し、
    自ら「マイ遺品」と名づける品々を、
    出身地である京都の地で一挙に公開する展覧会。
    ゆるキャラ、いやげ物、スクラップ、ヘンヌキなどの
    みうらさんの「マイ遺品」が
    国の有形文化財として登録されている「大山崎山荘」と
    安藤忠雄さん設計の「地中館・山手館」からなる
    静かな美術館にずらっと並ぶさまは、圧巻です。
    京都の歴史ある空気を味わいながら実感する、
    みうらじゅんさんの偉業のかずかず、
    ぜひおたのしみください。

    カフェでは特製のどらやきも食べられます。

    【会場】アサヒビール大山崎山荘美術館
    〒618-0071 京都府乙訓郡大山崎町銭原5-3
    JR山崎駅または阪急大山崎駅より徒歩約10分
    【開館時間】10:00 – 17:00(最終入館 16:30)
    【休館日】月曜日(ただし、祝日の場合は翌火曜)