たなかま

ひびのさんの中で、この編み物ワークショップなどの
今後のプランってありますか？

ひびの

まだ決まってないんですけど、
これからも続けてやっていきたいですよね。
東京でも、珠洲でも。

ただ珠洲では、
みなさんの交通手段の確保が難しいから、
１日ずつ場所を変えて
あちこちでやれるといいですよね。

あと今回、東京で２度目のワークショップをやって
「編み棒を太くしたら楽だ」とわかったんです（笑）。

続けることでわかることもいろいろあるので、
その意味でも、このまま、
ときどきやっていけたらと思っています。

製作スピードも上がった、２回目のワークショップでの編み物パーツ。

やすな

あとはやっぱり飾り自体は、半年に１回は
メンテナンスの必要性を感じますね。
飾ってから時間が経つと少し色あせるから。

ひびの

そうですね。
それと私の中では、素材のことは
最初からけっこう気になっていて。
やっぱり環境のことを考えると、ちゃんと
自然に還る素材でやったほうがいいとは思うんです。

ただ、それなりに丈夫で、安価で、
みんながすぐ手にできる材料でなければ‥‥と考えると、
いまの選択肢としては、ほかにないんですよね。
毛糸を使うと絶対汚くなるし、焼けちゃうし、
いい手がまだ見つかってないというか。

もともと、食堂の建物自体が
「期間限定ではあるから」ということで、
だったら許されるのかな、と
やってるところはありますね。

試行錯誤しながら、今後もやれることを
やっていけたらいいなと思っています。

取材中、たまたま通りかかった糸井重里とともに。

たなかま

最後に、この記事では、能登以外の方に向けて
「ぜひいちど珠洲に行くといいですよ」
という紹介もしたいんですけど、
ひびのさん的に
「珠洲に来るならここに行くといいよ」
という場所ってありますか？

ひびの

そうですね。ようやく道路の整備がすすんで、
珠洲でも日本海側の道を
だいぶ走れるようになったんですよ。
車で走ると、震災の大きさを感じられる場所が
あちこちあるので、
その風景はぜひ見てほしいですよね。
もちろん運転にちゃんと自信のある人が
行ってほしいですけど。

この前も一緒に行ったダンサーの人たちが、
びっくりしてたんです。
山もそうだし、海岸もそうだし。
で、その状態を、完全に何もなかったように
きれいにしてしまうんじゃなく、
次につながるかたちで残してほしいんだよね。

そうすると、それを見ることが
珠洲に来るひとつの理由にもなると思うから。

ゆーないと

ああー、そうですね。

ひびの

陸地に道路を通せなかった、という理由で、
海の上を道が走ってる場所もあるんですけど、
すごかったんですよね。
そこもさらに整備がすすんで、安全に通れるようになったら、
ほかにない景色だから、けっこうお客さんが来ると思う。

珠洲の大谷側（日本海側）の道路。 （写真提供／ひびのこづえ）

　

（2025年８月現在、工事車両や地元の方々のみ通行可。
雨の日など、リスクが高まるときは随時、
全車通行止めになっています。行く場合は必ず
現地の道路情報をしっかりとご確認ください）

ひびの

見附島もすごいボロボロになっちゃって、
木が枯れてきてるけど、
震災前の写真と見比べると伝わってくるものがあるから、
それも行くといいかな。

塩田はまだ半分ぐらいしか営業してなかったけど、
そこを通ったり。
あと、倒壊した家屋がまだまだあるので、
そのあたりの様子からも感じてほしいし。

芸術祭の作品も、点々と残ってて。
公開できてないものもまだ多いけど、
見られるようになったらそれも見てもらって。
（常設作品の被害状況はこちら）

やすな

現地に行かないとわからない
「こういうことだったんだ」って、
本当にいっぱいありますよね。

ひびの

ありますね。

あとは、珠洲という土地を感じるなら、銭湯の
「あみだ湯」に行くだけでもすごくいいですよね。
あそこ、お風呂場の窓から海が見えますもんね。

食べものだったら「すずなり食堂」もあるし、
あとはやっぱりお寿司じゃないですか。

よく紹介されるのは、ろばた焼きの「あさ井」かな。
海のものがいっぱい出るから、
この前もテレビで紹介されてました。
飲みに行く感じのお店です。

すずなり食堂の「福幸丼」。（写真／幡野広志）

やすな

この前行ったとき、わたしたちは、
食事処としては「潮騒レストラン」さん、
「かふぇれすとらん きへえどん」さん、
パン屋さんの「古川商店」さん、
そして「二三味珈琲」さんにお邪魔しましたね。

ひびの

ああ、いいですね。

ゆーないと

あと食べものじゃないけど、できたばかりの
「スズレコードセンター」とかも
行けてよかったです。
珠洲や奥能登のこれまでとこれからを考える、
記録の場所。
そういうところもみんな行ってみてほしい。

「スズレコードセンター」にて。

ゆーないと

ただ、泊まるとこが少なかったりするから、
そのあたりは調べて行ってほしいですけど。

やすな

珠洲や輪島、能登町はまだ宿泊できる場所が
限られています。
が、小規模では戻ってきています。
能登半島の付け根の七尾まで行けば、
またすこし増えるんですけど。

ひびの

前は芸術祭のとき、珠洲に泊まって、
宿でごはんを食べるのが最高だったんです。

ただ、先日珠洲で泊まった民宿も、もともとは
刺身の盛り合わせがすばらしかったらしいんです。
お父さんが釣ってきたものを入れてくれたり、
めちゃくちゃご馳走で。
でも、いまは仕入れができないらしくて、
女将さんが「当分やれない」って言ってました。

でも、そういうことも、すこしずつ
戻っていくように応援していきたいですよね。

ゆーないと

ほんとに応援したいですよね。

やすな

ほんとに。

たなかま

ひびのさんは結局、震災後は
まだ海に潜ってないですか？

ひびの

そうなんですよ。
だから次のアクションとしては、
なにか海をフィーチャーしたことをやりたくて。

2023年の芸術祭の準備のときは、１日休みにして、
スタッフみんなで木ノ浦の海に泳ぎに行ったんです。
そしたらみんなすごくて、
ほとんど素潜りで（笑）、
「こんなにきれいなんだ！」って
やっぱり本当に感動してて。
なんだか、そういうツアーを
作れたりしないかなって思ってますね。

ただそのためには、海のことをよく知ってる人に
一緒にいてもらわないといけないし、
震災後の海は誰も入ってないから、
スペシャリストの人に関わってもらう必要があるけど。

でもそういう「珠洲の海を知る」
みたいなことをやれたらいいなと夢見ています。

たなかま

ああ、いいですね。

ひびの

いまこそ、海を紹介できたらいいと思うんですよ。

いままでだと遠くて怖かったようなところが、
海岸が隆起したことで、すぐ行けたりもするんです。

あと、珠洲にはすごく広いキャンプ場があって、
そこも気持ちいいんですよ。
芸術祭のとき、演劇やパフォーマンスの場所として
みんなが集まったりして、よかったんですよね。

珠洲のキャンプ場のたのしい小道。（写真提供／ひびのこづえ）

やすな

じゃあ、まずは偵察に行かないとですね。

ひびの

ねえ！ 絶対、偵察したらいいですよ。

ゆーないと

あと、海も行ってみたいなあー。

ひびの

海行きましょう！ 絶対感動するよ。
珠洲の海、ほんとすごいから。
ぜひみんなに知ってほしい。