18歳のときにアパレルブランドを立ち上げ、
若手起業家として注目のハヤカワ五味さん。
最近は会社経営者としてだけでなく、
エッセイを書いたり、動画を配信したりと、
インフルエンサーとしても活躍されています。
そんな彼女を遠くから見ていて、
一度は会ってみたかったという糸井重里。
彼女のラジオ番組にゲストとして呼ばれ、
はじめてお会いする機会がやってきました。
そのときのふたりの初対談を、
ほぼ日編集バージョンにしてお届けします。

>ハヤカワ五味さんのプロフィール

ハヤカワ五味(はやかわ・ごみ)

1995年東京生まれ。
株式会社ウツワ代表取締役。
ランジェリーブランド『feast』、
その姉妹ブランド『feast secret』、
ワンピースブランド『ダブルチャカ』を立ち上げる。
ラフォーレ原宿の直営店『LAVISHOP』の
企画・運営も行なう。

自身がパーソナリティを務める
ラジオ番組『マスメディアン 妄想の泉』は、
TOKYO FMにて毎週土曜24:30-25:00放送中。

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04

デコボコだけど、最強。

糸井
あくまで個人的な意見になるけど、
ハヤカワ五味という起業家の話を
聞きにくる人たちのなかには、
どこかプレゼン上手になりたいとか、
そう思ってる人も多いんじゃないかなあ。
ハヤカワ
ズレちゃってるってことですか? 
私が伝えられることと。
糸井
つまり、おいしい料理を
まだつくれていないうちから、
「私の料理をみんなに食べてもらうには、
どうしたらいいですか?」
っていうことをあなたに訊くんですよ。
ハヤカワ
ああ、中身の部分じゃなく。
かたちの部分にこだわっちゃうというか。
糸井
そのまったく真逆のことを、
あなたはやってきてるわけですよね。
「ほんとにやるもん」っていう部分を。

ハヤカワ
たしかに私の場合、
こういうものをつくりたいとか、
目指したい社会みたいなものが、
まずは先にあって、
何かを「伝える」というのは、
ある意味そのための手段というか‥‥。
糸井
でも自信もあるよね、そこに。
ハヤカワ
逆にそこしかないくらいに思ってます。
糸井
「伝え方が9割」という本もあるし、
それがまちがってるとは言わないけど、
若い人がそれを先に勉強しちゃうのは、
ちょっと順番がちがいますよね。
ハヤカワ
そうですね。
最終的に必要になるかもしれないけど。
糸井
そうだね。でもそれは最初じゃない。
ハヤカワ
いまって「手段」を売ろうとしたら、
いくらでも売れるような時代じゃないですか。
糸井
うん。
ハヤカワ
みんなもそっちに目が行きがちだけど、
でも、ほんとに重要なことって、
何をしたいのか、何を語りたいのかっていう、
そっちの部分のような気がするんです。
糸井
そういうこと、いつどうやって気づいたの?
ハヤカワ
私、じぶんのビジネスを
やっていこうと思ったときに、
別にお金を稼ぎたくて
やりはじめたわけじゃなくて、
やりたいものとか、つくりたいものが
まず先にあったんです。
糸井
うん。
ハヤカワ
そのあと、いろんな人たちが
私の商品をほしいって言ってくださって‥‥、
というのがビジネスのはじまりです。
それから2、3年くらい経ったあと、
夢とか、叶えたいことをうまく語れる人って、
世の中に意外と少ないんだということに、
そうなってはじめて気づいたんです。
糸井
ほう。
ハヤカワ
それこそ私の場合、
まわりから経営者というふうに見られますが、
仕事ができるタイプかって言われたら、
たぶん微妙なラインだと思うんです。
もし普通の会社ではたらいていたら、
おそらく使いものにならないと思う(笑)。
糸井
じぶんではそう思うんだ。
ハヤカワ
まったく使いものにならないと思います。
糸井
そこまでは言わないけど(笑)。
ハヤカワ
でも逆に経営者としての私は、
こういう社会を目指したいとか、
こういうプロダクトっていいよねって、
人前で語れることがふつうなんです。
しかもそういうようなことが、
意外と世の中では必要とされてるって、
あとになってから気づくことができたんです。
だから最初は、そういうところが、
じぶんの強みとも思ってなくて。
糸井
へーー。
ハヤカワ
だから、すごく数字が得意な人とか、
細かい約束ごとをまったく忘れませんとか、
そういうのもその人の強みですよね。
みんなそれぞれ強みをもってるのに、
それに気づいてない人が多いような気がします。

糸井
これが私の強みというのは、
どうやって気づけたんだろう。
ハヤカワ
私の場合は、
やっていくうちに知れたって感じですね。
いろんな人を見ていくなかで、
こういうのがじぶんの特徴なんだって、
糸井
それはまだ美大生のときですか。
ハヤカワ
そうですね。
私、美術大学に入ったとき、
じぶんよりいいデザインをする人が
まわりにたくさんいて‥‥。
糸井
‥‥落ちこんだ?
ハヤカワ
かなり落ちこみましたね。はい。
でも、だからこそ誰かに何かを伝えるとか、
何かの軸足をつくるみたいなところは、
私にしかできない強みなのかなって、
そんなふうに思えることができたんです。
糸井
それは気づいてよかったね。
ハヤカワ
よかったですね(笑)。
もし気づけてなかったら、
けっこうつらかったでしょうね。
それに気づけたおかげで、
他のすごい人たちのことも、
ちゃんとリスペクトできるようになったし。
糸井
その最初の落ちこみが、
すごくいい経験になったんだろうなあ。
やっぱりそういうのがないと、
何かをやりたい理由もなくなるよね。
ハヤカワ
いや、ほんとそう思います。
糸井
それは嫉妬にも似てるんだけど、
またちょっと違う感情なんだよなあ。
最初のほうで話したけど、
ぼくもドラクエのエンドロールに
じぶんの名前がなかったときは、
ほんとうに寂しくなったんです。
うまく言えないんだけど、
いまでもそのときのこと憶えてるからね。

ハヤカワ
私も憶えてますね。
それに、じぶんが大学に入って、
心から悔しいって思えたのも、
そういう人をちゃんとリスペクトして、
逆に私は別のところをやろうと思えたのも、
やっぱり高校時代の3年間、
ものすごく絵の勉強をしたからなんです。
糸井
あー。
ハヤカワ
やれるだけのことはやったのに、
それでも上には上がいたというのが‥‥。
糸井
なるほどね。
ハヤカワ
だからこそ割り切れたような気がします。
私よりすごい人はやっぱり尊敬するし、
逆に他の人がうらやましく思うものを、
じぶんも持ってるかもしれないなって。
糸井
そこを客観視できるんだね。
じぶんとじぶんの周囲を。
ハヤカワ
あと、私の場合、
チームということも大きいのかなって。
糸井
ああ、そうか。チームだもんね。
ハヤカワ
RPGはまさにそうなんですけど、
私、ドラクエの主人公って、
役に立たない人が多いと思ってるんです。
マルチに何でもできるんだけど。
糸井
万能に見えるんだけどね。
ハヤカワ
万能だけど、特徴がないというか。
他の人も魔法だけがやたらすごかったり、
めちゃくちゃ防御力が高かったり、
どこかデコボコした人たちなんだけど、
チームとして集まると、
最終的にものすごく強いみたいな。
糸井
うん、そのとおりだ。
ハヤカワ
なんか、結局そういうのが、
一番強い集団のような気がするんです。

(つづきます)

2020-04-26-SUN

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