2023年7月現在で、YouTuber活動歴11年。
動画数2700本以上。チャンネル登録者数1050万人。
いちばん見られている動画の再生回数は1.2億回。
そんなはじめしゃちょーも、ことし30歳。
ゲーム『MOTHER2』の大ファンということもあり、
今回、糸井重里に会いに来てくれました。
そもそもはじめしゃちょーって、どんな人?
どんな子供時代を過ごし、どんな思いがきっかけで
YouTubeで活動するようになった?
昔からずっと面白さを感じていることは?
その創作の背景を教えてもらいました。

>はじめしゃちょー プロフィール

はじめしゃちょー

1993年2月14日生まれ、富山県出身。AB型。
「自由」がモットーのフリーダムなYouTuber。
実験系をメインにオールジャンルで
なんでもしたいことを動画にしており、
体を張ったネタや、誰もしないような
斬新で手の込んだ動画で、
若年層より圧倒的な支持を得ている。
2023年7月現在、いちばん見られている動画
「世界最大級のグミを1人で食う!(多分)」は
1.2億回視聴突破。
YouTubeチャンネル登録者数は1050万人。
現在は静岡と東京を中心に活動。

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8 まだまだ、ぜんぜん飽きてない。

はじめ
今回、糸井さんに相談したいことを
考えてみたんですけど、
ぼくはいま30歳なんですけど、
次のステップがなくてですね。
なんかもう、動画を作ってるのが楽しくて。
糸井
ああー。
はじめ
チャンネル登録者数がHIKAKINさんを
上回っていた時期もあったんです。
でも、HIKAKINさんに抜き返されて。
そのあと別にガーンと落ちたわけでもなく、
平和に活動させていただいているんですけど。
たぶん、なにかものを作るって、
「ヒットしたあとでうまく続けていく」
というのが、特に難しいという思いもあって。
だからいまは特に無理をせず、
「自分の好きなことを、
本当に楽しいと思え続けながらやる」のが
いちばん大事かな、って思ってて。
もう、お金とかでも動かないですし。
この先テレビに出たいとかも別にないですし。
本当に自分の好きなことをして、
それを動画にできて、見てもらえて、
そういうことが仕事になってるだけで幸せというか。
これ以上ないかなと思っているんですね。
糸井
なんだか、プロスポーツ選手みたいに
なってますね(笑)。
はじめ
ぼく、そうですか(笑)。
この先、この影響力を持って何かを成したいとか、
そういうのも別になくて。
ちょっとサウナが好きで、
サウナ屋さんやりたいぐらいはあるんですけど。
糸井
サウナも楽しいよね。
はじめ
いいですよね。だけどほんとそれぐらいで。
だから、なんて言えばいいんでしょう。
この先、次のステップみたいなことが
見えないんですけど、
「なにか考えたほうがいいのかな」とか。
こんなふうに自分の好きなことに
忠実に生きてるので、
きっと動画も将来、楽しくなくなることがあったら
やめると思うんですけど。

糸井
うーん‥‥。
でも、もしも動画をやめることがあったとしても、
動画をやめることと、
はじめしゃちょーをやめることは別だし、
何かやめても、何かが繋がってる状態は
必ずあるんで。
はじめ
たしかにそうですね。
はじめしゃちょーはいつかやめると思いますけど、
いや、はじめしゃちょーやめるも、違うなぁ‥‥。
糸井
フリーの先輩としてのぼくの話をすれば、
フリーの時代のぼくは、
絶えず「飽きる」ってことと戦ってたんです。
だけどまぁ、幸いなことに
頼まれ仕事はいろいろあって、そこで依頼される
「俺できるかな?」と思うようなことを
「やれた!」がうれしかったから、
そういうのをやってるだけでまずは楽しかったんですよね。
それで20年ぐらいはもつんですよ。
その後は、またあるんですけど、
はじめ
ああ。
糸井
そして、はじめしゃちょー物語としては、
まだぜんぜん飽きてないと思うんですよね。
まだ動機はたっぷりあるし、
やり残したことだらけでしょうから。
はじめ
そうですね。はい。
糸井
誰かがやってることに対して
「羨ましい」とか「楽しそうだな」って
思う気持ちも、まだむんむんしてますよね。
はじめ
それも動機ですよね。
糸井
そう、すごい動機ですよね。
30歳、実際にはそういうのがきっと、
まだまだいっぱいあるんじゃない?
だからいまは、
何も考えない方がいいんじゃないの?(笑)
はじめ
ああ、なるほど。
考えずにやる。そっか。
糸井
うん。それでいいんじゃない?
逆に「考えてるふりをしながら飽きてる」
というのが、いちばんつまんないですよ。
会社とかって、そうなりがちなところがあって。
みんな未来のことを「5か年計画」とかで
「ああしてこうして」って言うんだけど、
そういうことばかり考えてると、
「なんでそんなことしたいんだっけ?」という
そもそもの動機が
わかんなくなっちゃったりするんですよ。
はじめ
ああ、そうですよね。
糸井
だけど、いまから30代‥‥。
うーん、30代は飽きてない気がするなぁ。
はじめ
次のステップは見えないですけど、
ぜんぜん飽きてはないですね。
とりあえず、これからどんなふうになるとしても、
何かしら動画には関わってたいとは思うんです。
ぼく、編集のほうが好きなんですよ。
撮られるより、撮影するより。
糸井
そっか。動画編集って、
「間で勝負!」みたいなところが
あるじゃないですか。
はじめ
ああ、間で勝負ですね。
糸井
あれってきっと
「誰にもわからなくても俺はこうしたい」
みたいなことが、すごくいっぱいあるんですよね。
はじめ
そうなんです。
その部分は、スタッフに伝えたりするのも
なかなか難しくて。
糸井
ああ、個性だからなぁ。
はじめ
個性と感性とセンスとかの話になってきて。
糸井
音楽みたいなものですよね。
はじめ
そうですね。

糸井
この間たまたま、ヴァン・ヘイレンという
アメリカのハードロックバンドの
ギターの解説動画を見たんです。
それが、耳で追えないくらいの速弾きなんですよ。
聴いてても、リャラララララー♪ って、
「速い音を鳴らしてるな」ぐらいしかわかんない。
でも、解説の人が
「音をゆっくりしてみましょう」って、
スローにすると、はっきり音を刻んでるわけ。
当たり前ですよね、分かってて弾いてるんだから。
その解説者が
「ここまではぼくもできるんです」と言うわけです。
だけどその後で
「もうちょっと遅くしますから聴いてください」と
さらにスローにしたんです。
すると、この刻んでる音ひとつひとつに、
スウィングが入ってるんですよ。
ドゥンドッ、ドゥンドッ、ドゥンドッ、ドゥンドッ
‥‥って強弱が。何それって(笑)
はじめ
へえー! すごいですね。
それはむずそうだな。
糸井
動画の編集も、好きでやってる人たちって、
たぶんそういうようなところを
面白がりながら追求してるんだから、敵わないですよね。
スポーツ選手の話も、聞いてみると
「それはとんでもないですね」ってことだけだし。
だから、そういう意味でも、
先の楽しみは山ほどあると思うんで。
はじめ
ああ、そうか。そうですね。
糸井
さらに言えば、YouTubeかどうかも
わかんないじゃないですか。
メディアも形を変えていくから。
はじめ
ぜんぜん動いていきますね。
時代の動きというのも本当に速いし。
たまたまいまYouTubeなだけな
可能性もあって。
糸井
もしかしたら、YouTubeとリアルの劇場が
つながることだってあるかもしれないし、
NETFLIXだって、いまは自分たちで
映像を作ってますけど、もともとは貸しビデオ屋だよ?
あんなになると誰も思ってなかったわけで。
はじめ
いますごいですもんね。
糸井
だから、いちばん最初に
「普通の人がお菓子食べてるだけの動画」に
びっくりしたときのようなことって、
まだまだこれからいっぱい起こるんじゃないかな。
ぼくにはそんなふうに思えますね。

(つづきます)

2023-08-07-MON

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