entoanが「ほぼ日」に登場したのは、
2012年の秋冬シーズンのこと。
イラストレーターの大橋歩さんによる
「a.」(エードット)というアパレルブランドで、
「革のトートバッグ」をつくったのが、
“若き靴職人”、entoanの櫻井義浩さんでした。

そこからおつきあいがはじまって、
2015年からは「ほぼ日ストア」内で
独立した販売ページがスタート。
革靴をつくるさいにどうしても出てしまう「余り革」を
できるだけ無駄なく活用しようとつくりはじめた革小物
(ポーチ、お財布、トートバッグなど)を
紹介してきました。
「ほぼ日」で紹介した履物は、
通販でもサイズが選びやすい
ルームシューズとフリンジサンダルのみ。
本業である手づくりの本格的な革靴は、
櫻井さんたちによる対面でのフィッティングと
対話による微調整、そして発注してから
すこし長めの制作期間を必要とするため、
販売を展示会と直営店の実店舗にかぎっています。
そのため「ほぼ日」ではすっかり「革小物のentoan」の
印象が定着しているのですけれど、
今回、entoanのはじめてのスニーカースタイルの革靴を
「ほぼ日」で販売するにあたって、
櫻井さん、富澤智晶さんにお話をききました。
あわせて、あらためて
「革靴のentoan」がどんなブランドなのか、
entoanの靴をじっさいに履いている
三人のかたにお話をうかがうことにしました。

写真家、画家、都市経済学者、
それぞれのentoanとのおつきあいを通して、
彼らの創作姿勢に触れる連載です。

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03 長く履いていただくために。

──
さっきちょっとお聞きした
ソールの構造について教えてください。
いくつかの層になっているんですよね。
櫻井
はい。
一番下にビブラムソールがあって、
革のソールは3ミリの革で、
そこの上にクッションが2層です。
──
足を入れた時に、フワフワといいますか、
履き心地がとてもいいなと思ったんですけれど、
それはやっぱりクッションのおかげなんですか。
櫻井
そうだと思います。
じつはしばらく入れ方を決めかねていたんですよ。
試し履きしていただいたものは2層ですが、
1枚でやったほうがいいのかどうか、
そのクッションの素材はこれでいいのか、と、
何ミリでどういう素材かの組み合わせがいいか、
履きながら試していました。
結局、「3mmのクッションを2層にする」のが
いまの段階ではベストだと判断しました。
富澤
踵とベロのクッションと
底面部分のクッションは、
履きごこちに大きく影響しますからね。
ふんわり感っていうのはとくに。

櫻井
柔らかすぎても、足が横にずれちゃったりするんですよ。
だから柔らかければいいわけではなくて、
下の層は柔らかくして、
上はちょっと硬いほうがいいのかとか。
中敷きの革も最初のサンプルからは変えています。
──
entoanの刻印がある中敷きですね。
いちばん底になるビブラムは、
どんな観点から選ばれたんですか?

櫻井
こういうスポンジとかゴム系でも、
軽いのだとスポンジに近いような素材になって、
耐久性を重視するとゴム系の素材になっていきます。
そのいいところが合わさってるものもある。
entoanでは同じような構造で
ルームシューズを作ってるんですけど、
ルームシューズの場合はより軽さを求めて
スポンジ系のものを使ってるんですけど、
これはある程度耐久性がいるなあっていう判断だったので、
かなりゴム系に近いようなもので探し、
裏の模様が雰囲気と合うものを
チョイスしたっていう感じです。
──
なるほど。これは模様であり、機能ですね。
櫻井
滑りにくくとか、そういう機能性もありますね。
富澤
ゴムとスポンジ素材の配合が、
すごいいい配分だなって思うんですよ。
ゴムが多いと重くなるし、
スポンジが多いと減りが早くなるので、
結構難しいんですけど、
これは薄いのにそんなに減らないし、
そんなに重くもない。
絶妙だなって思います。
──
交換時期の目安は、
革が見えてくる前に?
櫻井
かかとの外側が一番減ると思うんですけども、
それが減ってきて革の部分にくる前に
修理の相談をしてください。
減ってきたところだけカットして、
斜めにパーツで補強します。
それを2、3回交換すると、
たぶん前のほうも減ってくるので、
そうしたらソール全部交換ですね。
もうその修理だけで、結構長いこと履けると思います。
──
完全に素人の質問ですみません。
よくグッドイヤー製法とか言うじゃないですか。
この靴には、なんとか製法ってあるんでしょうか。
櫻井
これはまったく同じつくりっていうのはないんです。
だから名前もない。
──
ということは「オーダーメイド革靴の技術が
生きている作り方で、いわゆる世の中の
工業生産のスニーカーとはまったく違うもの」ですね。
櫻井
そうですね。
──
手作業部分は‥‥。
櫻井
脇のここは手縫いです。

──
そうですよね。
この、人の手が入ってるのがなんとも素敵です。
富澤
これも最初は工場にミシン縫いでできないか
依頼したこともあったんです。
サイドを縫えるミシンがあることはあるので、
「こぐつ」のときに最初、縫い屋さんの専門の方に
ミシン縫いをお願いしたんですけど、
やっぱりきれいじゃなかった。
縫えてはいるんですが、
自分たちが良しとするクオリティにはならなかったので、
大変だけど手縫いにしようって。
ミシンのほうが失敗があるんですよ。
でも手縫いだったら確実ですし。
櫻井
手縫いでやってれば、修理するときも、
糸を切って交換してから
同じ糸の穴でもう一度縫うこともできます。
ミシンで、以前と同じ針穴に入れることはできません。
──
ずれてくと、穴と穴がつながって、
いずれ切れちゃいますし。
修理のためにも、そこは手縫いが大事ですね。
甲の部分も一か所手縫いですか?
櫻井
はい、ここも手で縫っています。

──
ちなみに、修理って、靴底だけじゃなく、
甲の側も可能なんでしょうか。
櫻井
はい、もちろんできます。
──
じゃあ、どの場所であっても、
「ここちょっとへたっちゃったな、直したいな」
と思ったら、相談できるって思ってていいですか。
櫻井
はい、大丈夫です。
──
わかりました。
最後に色のことを聞かせてください。
「ヌメ革 クリーム」が
フラッグシップモデルだということですが、
今回、スエードのグレーをベースにした
黒とのコンビ「スエード グレーxブラック」
ちょっとツヤ感のあるオールブラックの革のタイプ
「オイルキップ ブラック」も
つくっていただきました。
それぞれどんな特徴があるかお聞きしてもいいですか。
櫻井
革のメーカーは3種類とも違います。
「ヌメ革 クリーム」は日本の革で、
「エコヌメ」といい、なめし方がエコなんです。
環境負荷の少ない植物由来のタンニンを使用し、
製造過程での水質汚染を軽減しているんですね。
この革はヌメのわりにすごく柔らかいので、
この靴に合っています。
「スエード グレー×ブラック」は、
イタリアのオペラ社というところの革を使っています。
革の裏側をサンドペーパーなどで起毛させたものを
スエードっていうんです。
両面ともスエードみたいな革もあって、それは「ベロア」、
そして表側をザラザラにしてるのが「ヌバック」。
で、これはスエードなんですが、
革の銀面(表側)をレジン処理してあって
ツルツルしています。
この靴には1枚で使うところもあるので、
そこがちゃんと足当たりがいい。
しかも強度的にもしっかりしているものを、
と思っていたので、この革はぴったりだったんです。
そして防水加工がされているので、
汚れはつきにくくなっています。
グレーを選んだのは、
スエードで作るならグレー、と思っていたからです。
この革、ほかの色もきれいなので、
いずれ、シリーズで展開できたらと思っています。

──
なるほど。
櫻井
「オイルキップ ブラック」は、日本の革です。
「キップ」と言い、子牛と成牛の中間にあたる
生後6ヶ月~2年未満小さめの牛なので、
毛穴とか表面の肌の感じが結構きれいなんです。
ふつうの革よりもちょっとオイルを多く含ませているので、
そんなに硬くもないし、光沢もちょうどいい、
自分の好きな光沢だったので、この革に決めました。
ちなみに3つとも、食用肉由来の牛革です。

──
汚れの予防はいかがですか。
櫻井
ぼくの場合は、もうほんと何もせずに、
気にせずに履いています。
ヌメ革に、たとえシミがついてしまっても、
全体的に色が濃くなっていけば目立たなくなってくるし、
それが味になるっていう考え方なんです。
でもやっぱり気になる方もいると思うので、
そういう方には、
「オイルが含まれてる防水スプレー」を
「最初、おろすときに2回吹きかけてください」
と伝えています。
スプレーした瞬間に、
革の色が全体的に濃くなるんですけども、
1分とか2分とかすると、だいぶ元の色に戻ってくるので、
もう1回スプレーして、
それからちょっとブラッシングすれば履いていいですよ。
──
そのときは、詰め物をして、表面を万遍なく?
櫻井
そうですね。あとは定期的にそうするといいですよ。
──
黒はいかがですか。
櫻井
「オイルキップ ブラック」はふつうの革靴と同じように、
無色の、乳化性の靴用クリームを塗ってブラッシングです。
「スエード グレーxブラック」は、
基本的に撥水加工がされているので、
そこまで気にしなくていいですよ。
基本ブラッシングで大丈夫ですが、
気になる方はさきほど言ったように
最初に防水スプレーをしてもいいですよ。
──
わかりました。
履き方なんですけれど、
フリンジサンダルのときは、バックルを外して、
できれば靴ベラを使って履くのがお勧めとお聞きしました。
これはもう気負わず、スニーカーのように、
そのまますぽって履くかんじでよいでしょうか。
櫻井
ぼくはそうしていますし、
そういうふうにできるように
踵のところをVの字にしたりしていますが、
靴のことを第一に考えたら、
やっぱり紐はほどいて履いたほうがいいと思います。
できれば。
富澤
スニーカーでも、最初はほどいて履き脱ぎしても、
だんだん紐を結んだままになりますよね。
なので「正式には」ちゃんと靴紐をほどいてください、と。
──
entoanの革靴はメンズとレディースが
そもそもの木型から分かれていますけれど、
今回の靴は、木型が「こぐつ」由来ということは
男性、女性、関係なく履けるわけですよね。
櫻井
はい。
ふだん履いているスニーカーのサイズで
ご購入いただいて大丈夫です。
これから測る場合は、
足長(そくちょう)といい、
踵から指の先の一番長いところまで測ってもらって、
それと同じか、もしくは0.5上のものが
きちんと履きたい方にはお勧めです。
──
スニーカー的に考えたら「自分はほんとは26だけれど、
ファッションとのバランスで大きめの28を履きます」
というかたは、そうしてもらってもいいわけですね。
富澤
そうですね。
──
履く時に気をつけたほうがいいことはありますか。
櫻井
うーん‥‥、やっぱり雨の日に履くのは、
この靴にとっては、あんまりよくないです。
濡れたからといってすぐにひび割れたり壊れたりは
しませんけれど、
濡れるとその後のメンテナンスが重要になってくるので、
なるべく雨は避けたほうがいいかなと思います。
革靴と同じだと思ってください。
あと、革製品はみなそうなんですが、
ロットによって多少の色のちがいや、
ヌメの場合はシボ感の違いが、
多少ですが、あると思います。
富澤
これが靴にするヌメ革ですが、
シボシボしているところと、
ツルッとしてるところがありますよね。

櫻井
これは革の特性だと考えていただけたら。
表面積の大きなところには、
なるべく同じトーンの革を使っていますが、
パーツによっては、こういうところが
含まれる場合もあります。
──
ありがとうございます、理解しました。
櫻井
こちらこそありがとうございます。
今回は受注販売ということで、
ご注文からお届けまですこし時間をいただきますが、
たくさんのかたの目に留まったら嬉しいです。
──
製作、よろしくお願いします。
富澤
がんばります。ありがとうございました!

(おわります)

商品写真:神ノ川智早

2026-02-08-SUN

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    [販売方法]
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    2026年2月16日(月)午前11時〜2月26日(木)午前11時
    [出荷時期]
    6月中旬予定
    [商品価格(税込)]
    ヌメ革 クリーム ¥49,500
    オイルキップ ブラック ¥55,000
    スエード グレーxブラック ¥55,000
    [展開サイズ]
    22.0cm〜27.5cm(0.5cm刻み)
    [商品の展示について]
    2月6日~25日のあいだ、
    神保町のTOBICHI東京にて実物を展示いたします。
    そのなかの2月13日~15日の3日間のみ、
    サイズサンプルのご試着をしていただけます。
    (お試しいただけるサイズ:22.5cm~27.0cm)
    お近くにいらっしゃることがありましたら、
    ぜひお立ち寄りください。
    ●TOBICHI東京
    東京都千代田区神田錦町3丁目18
    ほぼ日神田ビル 1F
    営業時間 11:00〜19:00
    (2月13日のご試着可能時間は
     14:00〜19:00となります)