
ある日、ほぼ日に届いた1通のメール。
映画館でよく目にする「映画チラシ」を
30年以上趣味で集めている方からで、
「家に3万枚ほどあるのですが、
よかったら見に来ませんか?」というお誘いでした。
映画チラシが‥‥えっ、3万枚?!
しかも、この方がすごいのは、
ただチラシを集めているわけではなく、
「俳優別」に分類したファイルをつくり、
その俳優のデビューから最新作まで
出演した全作品のチラシを集めるという、
かなり変わった収集癖をお持ちの方だったのです。
誰に見せるでもなく、趣味で集め続けた映画チラシ。
その貴重なコレクションの数々、
ご自宅におじゃまして見せていただきました!
- Tさん
- シルベスター・スタローンは好きですか?
- ──
- 昔はけっこう好きでした。
「日曜洋画劇場」世代ですから、
『ロッキー』『ランボー』はそれこそ何度も観ました。
- Tさん
- あのスタローンでも、
下積み時代はチラシに名前すら入っていないんです。
- ──
- へぇー、こんな映画に。
まったく知りませんでした。
- Tさん
- 70年代の映画ですね。
この前にも無名時代にクレジット無しで
相当出ていたみたいですけど、
このファイルではこれを最初にしました。 - で、『ロッキー』のチラシがこれ。
- ──
- おぉー、かっこいい!
- Tさん
- 下っ端だったスタローンが、
ここでいきなり主演をして大ヒット。
そこから『ロッキー2』『ロッキー3』、
そして『ランボー』の黄金時代。
- ──
- 『ランボー』のチラシもかっこいいですね。
- Tさん
- ランボーの原題は『First Blood』。
邦題とぜんぜんちがうのですが、
日本で『ランボー』が大ヒットしたので、
じつは2からは原題も『ランボー』になるんです。
- ──
- あ、そうなんですね!
- Tさん
- それからのスタローンは説明不要。
スター街道まっしぐらです。
- ──
- 『ロッキー5』『クリフハンガー』『デモリションマン』。
たしかに圧巻の並びです。
‥‥んっ、『ザ・ボディガード』。
ケビン・コスナーじゃなく?
- Tさん
- あっちの「ボディガード」とは別物です。
タイトルをよく見てください。
『シルベスター・スタローン ザ・ボディガード』です。
スタローンの名前が入ってますから。
- ──
- 色ちがいで2パターン。
受ける印象がぜんぜんちがいますね。
- Tさん
- そして『ロッキー ザ・ファイナル』
『ランボー 最後の戦場』と、
人気シリーズが同じ時期に終了します。
- ──
- ファンとしてはちょっと寂しいですね。
年齢的にも体を張ったスタローンは、
このあたりで見納め‥‥。
- Tさん
- と、思わせておいて、
『エクスペンダブルズ』で大復活。
- ──
- 濃ゆい!!
- Tさん
- 前よりもパワーアップして帰ってきました。
- ──
- 落ち着いた方向に行くのかと思いきや‥‥。
スタローン、ブレない男です。
- Tさん
- こうやって俳優ごとに時系列にすると、
やっぱりそれぞれに物語があります。
- ──
- 大河ドラマが詰まってますね。
- Tさん
- 『エクスペンダブルズ』のような
人気俳優がたくさん出る映画は、
どうしても購入枚数が増えてしまいます。
- ──
- ちなみに、
これまで一番たくさん買ったチラシって、
何か覚えてますか。
- Tさん
- たぶん、是枝裕和監督の『海街diary』ですね。
- ──
- ああ、なるほど。
綾瀬はるかさん、長澤まさみさん、
夏帆さん、広瀬すずさん。
たしかにオールスターですね。
- Tさん
- 他にもリリー・フランキーさんや
是枝監督のファイルもありますから。
さらにあの映画、
チラシが2パターンあるので、
結局、10セット20枚くらい買いましたね。
- ──
- そもそも映画のチラシって、
1枚どれくらいで売っているんですか。
- Tさん
- レアなものじゃなければ、
安いショップで25円とか、50円とか。
- ──
- あ、それくらいなんですね。
- Tさん
- ただ、みんながほしがってるものは高いです。
私はレアなものに興味はなく、
ただ出演作を集めているだけなので。
- ──
- いままで集めたなかで、
一番苦労したチラシってなんでしたか。
- Tさん
- 苦労した‥‥なんだろう。
カトリーヌ・ドヌーヴでしょうか。
昔の俳優さんはやっぱり数も少ないので。
- ──
- 『昼顔』は1967年公開だから‥‥59年前。
そんな昔のチラシが
まだ残っているのもすごいですね。
- Tさん
- ときどき売っていたりするんです。
当時のものが手に入らないときは、
リマスター上映時のチラシを探したり、
復刻版を探したりします。
私にはあまり区別がつかないですけど。
- ──
- 映画の無料チラシって、
日本だけの文化なんですよね。
- Tさん
- 日本だけだと思います。
映画チラシってじつはすごい文化なんです。
このクオリティのものを、
毎週、全国で無料配布するわけですから。
- ──
- カトリーヌ・ドヌーヴがこのファイルを見たら、
きっと喜ぶでしょうね。
- Tさん
- 感動すると思いますよ。
全部、自分の出ている作品ですから。
- ──
- セガールにも見てほしい(笑)。
- Tさん
- ほんとですよね(笑)。
- ──
- 映画チラシコレクターって、
ときどきメディアに出てる方もいますけど、
俳優別で分類している方って
あんまり聞いたことがなかったです。
- Tさん
- おそらく相当レアではないかと思います。
他のみなさんは分類するとしても
年代とか、ジャンルだと思うんです。
ホラーとか、フランス映画とか。
もし俳優別で集めている方がいるにしても、
340人分もつくる人がいるとは思えない。
- ──
- 他のコレクターさんたちとは、
あんまり交流されないんですか。
- Tさん
- 私に関しては、ほとんどありません。
完全にひとりの趣味なんです。
ネットで購入して、
ファイルの空きをひたすら埋める。
孤独な趣味ではあります。
- ──
- 俳優別で分けはじめたのは、
いつ頃からですか。
- Tさん
- 最初にやろうと思ったのは、
それこそ十何年前だと思うんです。
けっこう数が増えてきたときに、
「この俳優のチラシ、けっこうあるな」と。
だったら専用のファイルをつくろうかなって。
最初はそれくらいの動機だったんです。
それが、どんどんのめり込んでしまって。
- ──
- で、気づいたら3万枚‥‥。
- Tさん
- ここまでコレクションが増えたのは、
やっぱり俳優別にしたからでしょうね。
ちょっとゲーム的感覚があるので、
ファイルが埋まっていくとうれしいんです。
この趣味がどうしてつづいたかというと、
単純におもしろいからとしか言いようがない。
- ──
- いままでSNSで公開したりも‥‥。
- Tさん
- 私、SNSやってないんです。
- ──
- じゃあ、ほんとうに初公開ですね。
- Tさん
- 誰かに見せたいと思ったこともないし、
ひたすら自分のための趣味。
がんばって集めたチラシを眺めるだけで、
幸せな気持ちになるんです。
(明日につづきます)
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