前へ目次ページへ次へ

vol.3 6種類のナッツで、6ヵ国をめぐろう。

3つ目の箱を開ける。
当たり前のことだけれど、
今回、グルーヴィーナッツさんと
ほぼ日でつくったナッツの箱は、
そんなにつぎからつぎへ開けて
ぱくぱくぽりぽりと食べるものではない。

それぞれの箱につまった6種類のナッツは
しっかりとボリュームがあるし、
量だけなく品質としてもたいへんに贅沢なもので、
ぽりぽり食べるというよりは、
じっくりと味わっていくべきものである。

だから、このようにぼくが、
つぎつぎに箱を開けているのは、
あくまでも仕事として試食しているからであり、
これまでの2箱にしても
さすがに完全に食べきっているわけではない
‥‥‥‥と、思いきや。
すみません、2箱、もう、空っぽです。
完全に食べきっちゃってます。

どうしてかというと、
俺が夜な夜なナッツを喰らうナッツおばけだから。
ではないわ。失礼な。だれがナッツおばけだ。
ナッツ食べちゃうぞぉ。だれがナッツおばけだ。

ナッツの消費量が多い原因は、家族である。
具体的にいえば、
まずうちの娘が父親に似てナッツ好きである。
そりゃまぁ、そうなるのもわかる。
これまでの人生、日常的に、ことあるごとに、
父親が千葉産のたいへん良質な落花生を
手際よくむいて皿に盛っていくのだから、
ひょいとそれをつまんじゃうだろう。
つまんで食べたらそれはおいしいのだから、
ナッツはうまいものだという認識ができるだろう。

それで、現在中学生の彼女は、
父親がぽりぽりやっていると、
なんとなく手をのばして自分もぽりぽりとやる。

そして、たいへんおもしろいことに、
「ああ、これはうまいなぁ!」
という落花生に出会って味わって食べていると、
それをつまむ娘も
「なんかこれうまいね」と言うのである。
落花生の英才教育とはこのことである。
十年後にこのコラムを書いているのは
うちの娘かもしれない。
落花生親バカとはこのことである。
というか二代続けてそんな
しょうもないことを書かなくてよろしい。

家庭の事情をさらすついでに、もうひとつ。
うちの妻はビールが好きである。
とりわけ暑い時期の冷えたビールが大好きである。
夏の高温多湿な一日に、
外からビールビールビールとつぶやきながら帰ってきて、
冷蔵庫を開けてそれがなかったときの絶望たるや
ほぼ下戸のぼくは「そんなに?」と思うほどである。

で、ビールといえばナッツである。
気分よく飲んでいる傍らにうまいナッツがあれば、
それはもう、妻はリズミカルにつまむ。
ナッツおばけファミリーとはこのことである。
失礼な。だれがナッツおばけファミリーだ。
落花生バーバパパとはぼくのことである。
ちがうわ。だれが落花生バーバパパだ。

まあ、ともかく、そのような環境であるから、
父親が魅惑のナッツ箱を会社から持ち帰って、
半分仕事だからなどと言いながらぽりぽりやって
「うわぁ」「これは」「うまい」などと言ってると、
妻と娘も当然のように一緒につまんで
「あらら」「これは」「おいしい」などと言うのである。
ちなみに、うちには高校生の息子もいるが、
彼はナッツに無関心なのであらゆるナッツに反応しない。
同じ家に生まれたって人それぞれ。
それもまたリアルである。

ともあれ、そういうわけで、
今回のグルーヴィーナッツさんのナッツを味わっているのは
ぼくひとりではないのだ。
エリートナッツ娘もビールおばけも食べているのだ。
失礼な。ビールおばけとはなんだ。

このコラムの最初の回でぼくは書いた。
「いいナッツは消えてしまう」と。
そもそもタイトルに掲げている。
「やがてナッツは消える」と。

緑の箱にぎっしり入った数々のナッツは、
すぐに消えてしまうナッツなのだ。
それで、いま3箱目を開けるところだが、
前の2箱はすでに空っぽなのである。本当。

またしても前置きが長くなった。
3つ目の箱だ。
その箱にはこういうタイトルがついている。

「ナッツで世界一周セット」

‥‥なんのこっちゃ。

ナッツをじゃんじゃん食べて
ナッツポイントを貯めて世界一周!
とか、そういう話はなく、要するに、
「世界のナッツを集めました!」ということらしい。
ははぁ、なるほどなるほど。
6種類のナッツで6ヵ国をめぐろう、と、
こういうわけですね。

たとえば、おなじみのやわらかくて歯ごたえがあって、
たっぷりしっかりのカシューナッツはインド産である。
はいはい、これはぼくもすっかり憶えました。
カシューナッツはこれまでの二箱に
わりとメインのナッツとして入ってたからね。
最高級カシューナッツの産地はインド。
もしもぼくが今後インドに旅行することがあったら、
かならず現地でカシューナッツを求めますよ。

そしてこれもおなじみ、アーモンド。
あ、オーストラリア産なんだね、このアーモンドは。
なんとなくアメリカだと思ってた。
カリッと香ばしいのに「木の実」感がある。
食べごたえがあるのに、どんどん行ける。
それがオーストラリア産のアーモンドです。

ヘーゼルナッツはトルコ産。
チョコレートのなかで出会いがちですが、
単独で食べると独特の風味があります。
これ、つぶしてサラダとかに
混ぜてもいいんじゃないかなあ。
とか言いながら、ぽりぽりつまんじゃいますけどね。

で、この殻付きのピスタチオは、
どこのものかというと、イランなんですって。
はーー、このピスタチオはイランから届いたんですか。
クイズとかだったら絶対正解しないね。
正直、まったくナッツの産地という
イメージがありませんでした。
ところが、ぽりぽり、この、ぱきっ、
ぽりぽり、おいしさですよ。

そして、ブラジルナッツは、
この箱ではじめて登場しました。
というか、4つの箱のなかでこの箱にしか入ってません。
これがね、なんというか、不思議なナッツなんです。
タイプとしては、わりとソリッドな、均質な食感。
香ばしさもあるけど、植物っぽいというか、
穀物っぽい感じもあるナッツ。
栄養価が高くてスーパーフードならぬ、
スーパーナッツとして注目されているそうですよ。

このブラジルナッツ、産地はもちろん、
ブラジル‥‥じゃない! なんでだ!
ボリビア産だって。うそだろ。
ブラジルナッツがボリビア産ってどういうことだ。
じゃあ、ボリビアンナッツにすればいいじゃないか。
キャプテン・アメリカがフランス人だったら変だろう。
ニッポニア・ニッポンがデンマークの国鳥だったら妙だろう。
東京ディズニーランドが千葉‥‥あっ!!!

げふんげふん、ええと、なんでしたっけ。
はいはい、6つ目のナッツは殻付きのくるみ。
こちらジャパンの北海道から。
この殻付きのくるみもこの箱でしか食べられません。
くるみを割るにはくるみ割人形が必要です。
どこのおうちにもありますよね? くるみ割り人形。
え? ないんですか? くるみ割り人形。
あるでしょ、ふつう、くるみ割り人形。
コンビニで買ってきたらどうですか、くるみ割り人形。
言いたいだけでしょ、くるみ割り人形。
そうなんですよ、くるみ割り人形。
チャイコフスキーの家にはあったんですかね?
くるみ割り人形。

ちなみにぼくの家にはくるみ割り人形はなくて、
代わりになぜかマカダミアナッツ割り機、
みたいなものがあったので、
それでパキャッと割りました。
殻を割って食べるのは、面倒だけど、おいしいんです。
そう、「ナッツのジレンマ」です。
いや、しかし、割りたてのくるみはうまい。
ぜひ、みなさんも食べたほうがいいですよ、
くるみ割り人形。ちがう。殻付きのくるみ。

ちなみに、殻のなかに入ってるくるみってね、
なんだか立体パズルみたいなんですよ。
こう、うまいこと組み合わさって、
見事にぴったり入ってる感じ。
みなさんもぜひパキャッと割ったあとに眺めてみてください。

さて、そんな感じで一箱食べ終わりまして、
ナッツで世界一周した気分になったかというと、
世界一周した気分にはなりませんが、
というか、世界一周した気分がどうだかわかりませんが、
ともかく、へぇぇ、とか、ふぅぅん、とか言い合いながら、
おいしいナッツを家族でじゃんじゃんいただきました。

こういう機会でもないと食べられない
おいしいナッツがいただけてたいへん満足です。
あっ、残り、一箱じゃないか!
なんだか、もう残念だなぁ。

(4箱目につづく)

2020-10-27-TUE

前へ目次ページへ次へ
  • デリな生活のたのしみ展
    ナッツ!ナッツ!ナッツ!
    Groovy Nuts × ほぼ日

    日本初のナッツ専門店として、
    2014年にオープンしたグルーヴィーナッツ。
    店内には、世界中から仕入れた「木の実」が
    博物館のように並んでいて、
    ひと粒、ひとつぶ、姿も味もさまざま。

    今回「デリな生活のたのしみ展」のために
    とくべつなセットを4つ、用意していただきました。
    ぜひ、お召し上がりくださいね。