
フランス帰りのレ・ロマネスクTOBIさんに
あるとき、聞いてみたんです。
「シャンソンって悲しげな歌が多くない?」って。
そしたら、TOBIさんは
少し笑いながら「うん、みんな悲しいよね」って。
でも、その悲しみは、涙だけに彩られない。
ときにあたたかく、ときにユーモラスに、
人生まるごとを包み込むような大きさがあります。
演歌歌手の神野美伽さんが
「はじめてのシャンソン」で歌う予定の13曲を、
一曲ずつ、勝手気ままに、とりとめもなく、
TOBIさんとおしゃべりしました。
(歌唱順に話したわけではありません)
だまされて、老いさらばえて、すべてを失って。
それでもなぜか、どの歌も、どこか明るい。
人の人生の悲喜こもごもを、包みこんでしまう。
それが、シャンソンの優しさなのかも。
さあ、一緒に13の歌をめぐる旅に出ましょう。
担当はシャンソン係の「ほぼ日」奥野です。
ボン・ヴォヤージュ。
- ──
- サンジャンのサンとは「セイント」ですか。
- TOBI
- そうです。「聖なるジャン」です。
- で、ジャンというのは、ラテン語でヨハネです。
ドイツ語では、ヨハン。
- ──
- へええ、ヨハン・シュトラウスさんとか、
ヨハン・セバスティアン・バッハさんのヨハンは
「ジャン」だったんだ。
- TOBI
- 英語で言えば、ジョン・レノンのジョン。
イタリア語だとジョバンニかな。 - だから、とにかく「ありふれた名前」なんですよ。
聖人の名でもあるんだけど。
ただ、この場合は、場所を差していると思います。
- ──
- たしかに、歌詞には
「♪サンジャンの人並みに 私は抱かれていた」
とありますね。
- TOBI
- フランスには「サンなんちゃら」って地名や店が、
山ほどあるんです。 - つまり「サンジャン」というのは、
「どこにでもある、名もなき場所」ということを
表しているんじゃないでしょうか。
日本で言えば「ナントカ銀座」とか「栄通り」、
「中央町」「本町」「桜町」みたいな感じかなあ。
- ──
- 名もなき横丁に住んでいる、私の恋人の歌。
- TOBI
- そう。ぼく、すごく好きなんです、この歌。
三拍子の曲なんですけど、「話が早い」んですよ。
- ──
- というと?
- TOBI
- だってほら、歌詞を読んでみてくださいよ。
もうはじめっから
「♪甘い囁きなら 信じてしまうもの
あの胸に抱かれれば 誰だってそれっきりよ」。 - いきなり「騙される寸前」なんです。
「♪あのまなざしに見つめられたときから
私はもうあの人のものよ」って。
- ──
- いまにもコロリといってしまいそうです。
- TOBI
- そうとう早い段階で、
「ああー、この人は騙されちゃうんだなあ」
ということがわかりますよね。 - 案の定、2番の冒頭で
「何にも考えずに みんなあげてしまった」。
- ──
- わはは、騙されるのが早い!
- TOBI
- しかも、どんな手口で、どんなささやきで、
どう騙されたかとかじゃないんです。 - 「騙されました」から、すべてがはじまる。
そんな歌です。
その後も「どうして騙されたか」の補足説明が、
えんえん続いていきます。
- ──
- はじめての恋だから夢中になってしまったとか。
アコーディオンの調べも誘いの罠だった、とか。
- TOBI
- そして、最後の最後に
「♪いいじゃないの あの人のことはもう
過ぎたことなのよ」と言って、終わる。 - つまり
「サンジャン私の恋人」というタイトルだけど、
その「騙された舞台」が、
サンジャンだろうが小川町だろうが、関係ない。
ただ「騙された」ということを歌っただけの歌。
- ──
- わるい男に騙された、若い女性の嘆き歌。
シャンソンにはこういう歌、多いですね。
- TOBI
- こういうのばっかりですよ。
- ──
- 演歌にも通じるような感じもあるなあ。
- TOBI
- そうですね。
ただ、演歌は耐え忍ぶ「待つ女」や、
受身の女性像が多い印象ですが、
シャンソンの場合は、
能動的に果敢に恋にチャレンジする女性、
というイメージがありますよね。 - 結果的に
同じように悪い男に騙されたとしても。
- ──
- なるほど! 深い洞察です。
- TOBI
- 歌詞の調子で言っても
「♪折れた煙草の吸いがらで
あなたの嘘がわかるのよ」という「五七調」が、
演歌の世界ですよね。 - そのあたりが、
シャンソンと演歌のちがうところだと思います。
やしきたかじんさんによる素晴らしい歌唱。聞き惚れます。
(つづきます)
撮影:福冨ちはる
2025-11-06-THU
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演歌歌手の神野美伽さんが歌う
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