シャンソンの魅力について教えていただく連載、 
第3弾は、ごぞんじROLLYさんです!
わたくし「ほぼ日」奥野にとっての
あこがれのギターヒーローでありながら、
日本のシャンソン歌手が勢ぞろいする
「パリ祭」では司会進行役をつとめるなど、
シャンソンにも造詣の深いROLLYさん。
それもそのはず、ロックよりも先に、
シャンソンに出会っていたそうなのです。
お話は大好きなQueenから日本の歌謡曲、
山本リンダさん、
幼少時に聞いていた「母のお経」まで‥‥。
ROLLYさんの私的シャンソン論、
縦横無尽・自由自在に展開していきました。
どうぞ、お楽しみください。

>ROLLYさんのプロフィール

ROLLY(ローリー)

1963年生まれ、大阪府高槻市出身。
90年「すかんち」のヴォーカル&ギターとしてデビュー。グラムロックを彷彿とさせるビジュアルと、ポップで親しみやすい音楽性で人気を獲得。96年バンド解散後、ソロアーティストとして活動をスタート。音楽活動にとどまらず、ミュージカルや舞台などさまざまな分野でその才能を披露している。天性のキャラとキレのあるトーク、独特のサービス精神でテレビ番組でも活躍するロックスター。

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第6回  グラムロックもシャンソンに近い

──
シャンソンとの出会いから人生がはじまった、
そういっても過言でなそうな
ROLLYさんは、
いまは、ソワレさんの主催する
「新春シャンソンショウ」でお見かけするし、
シャンソンの総本山「パリ祭」でも、
前田美波里さんと司会進行もされていました。
ROLLY
人生って、わからんもんやね。
その『ロッキー・ホラー・ショー』のあとに
草刈さんから、
「石井好子さんという
日本でいちばん有名なシャンソン歌手がいて。
彼女のチャリティーコンサートに、
あなたも出てみない?」と誘われたんですよ。
──
おお、さらに転がる人生。
ROLLY
「いや、でも、シャンソンっていわれても、
『リリー・マルレーン』くらいしか」
とお返事したら
「いいのよ。何でもいいからやってごらん」
とおっしゃるので、出ることになりました。
ピアノの前に座った音楽監督の岩間南平さんが
「何をやりますか」と聞くので
「では、『オー・シャンゼリゼ』を、
クイーンのような演奏で」と。
ぼくがイントロで「チッチッチッチッ」と
指を鳴らして、
マイナーのコードからはじめるアレンジで、
「街を~歩く~」とやったんです。
──
なるほど。「キラー・クイーン」の出だしも
マイナーですもんね。
ROLLY
すると、石井好子さんが「誰が考えたの」と。
「わたしが考えました」
「素敵だわ」
──
どんだけ素敵なんですか!(笑)
ROLLY
それで「パリ祭に」出ることになったんです。
そのときに桑山哲也さんとも出会いました。
──
はい、もと北海道の暴走族だった、
いまや日本を代表するアコーディオニストの。
その、はじめて「パリ祭」に出たというのは。
ROLLY
20年くらい前かな。
最初は地方公演でのゲスト枠だったんですよ。
当時もっともベテランだったのは高英男さん。
90歳くらいだったのかな。
映画『吸血鬼ゴケミドロ』で、
日本一のドラキュラ俳優と呼ばれた方ですよ。
「ゆーきーのふーる町を~」って歌、
みなさん知ってるでしょ。あれを歌ってた人。
──
つまりこうして、ROLLYさんの音楽人生は、
3歳児のころのマレーネ・ディートリッヒ、
小学3年生のころの山本リンダさんの
フレンチポップス、シャンソンから
ロックを経て‥‥
とうとう「パリ祭」までたどりついた、と。
ROLLY
わらしべ長者のようにして、
総本山にまでたどり着いた感じですね。
ぼくにとっては、
いたって自然な流れだったんですけど、
シャンソンが好きで
シャンソンをやってきたわけじゃない。
だから、
ちょっとトリッキーでなんだけれども。
──
シャンソンの会における、
ROLLYさんのパフォーマンスそのものも
すごくおもしろいです。
きらめきのギターソロを弾いちゃったり。
ROLLY
シャンソニエも行ったことがないしね。
シャンソニエのシャンソンって、
「こんな感じね」ってところがあるでしょ。
まあ、それはシャンソンだけじゃなく
「ロックってこんな感じ」
「エレキって不良がやるもんだよね」とか。
──
典型的なイメージってありますね。
古来より。
ROLLY
こんな感じでしょという先入観に対して、
「いや、そういうものじゃない」と、
いち早く気づいてきたのが、
わたしの人生なんです。

──
なるほど。
誰かの「こんな感じでしょ」をなぞって、
どんなにうまくできたとしても、
それだと、おもしろくないわけですしね。
ROLLY
シャンソンにしろ、ロックにしろ、
それまで、どこにもなかったものをやる。
それが大事じゃないかと思います。
──
肝に銘じます。
ROLLY
メインストリームの流行は、追いません。
世間のはやりなどというものとは、
まったく関係ないところをやるべきやね。
──
幼少時のシャンソンからロックに入り、
大人になって、
逆にロックからシャンソンへ切り込む。
そして、シャンソンのコンサートでは、
エレキギター弾くROLLYさん。
その音楽人生ふくめて、
ちょっと他にない感じがいたしますね。
ROLLY
自分がいいなあと思うことをやること。
そこに尽きると思います。
誰かのものさしではなく、
自分の好きなようにやるというのかな。
──
シャンソンの取材をはじめる前は、
コンサートに行くことひとつにしても、
ドレスコードがあるのかなとか、
「しきたり」とか知らないしなとか、
つまり
敷居の高い世界だと思い込んでました。
でも、こうやって取材を重ねてくると、
シャンソンには
「自由」ということをすごく感じます。
ROLLY
そうなんですよ。
──
みなさん、「マイ・ウェイ」ですよね。
ROLLY
そう。好きなことやってる。
──
今年はじめて「パリ祭」に行きましたが、
多くのシャンソン歌手のみなさんの
すばらしいシャンソンを聴いたんですね。
はじめての経験で感動したんですが、
そのなかに工藤夕貴さんがいましたよね。
すごい迫力のある歌声で、
ちょっとビビってしまったくらいです。
ROLLY
お上手でした。
──
自分的に、工藤夕貴さんって、
ずっと相米慎二監督の『台風クラブ』の、
あのイメージが強かったんです。
セーラー服の少女のままっていうか。
でも、あの夜一気に塗り替えられました。
長渕剛さんの奥さまとしても知られる
志穂美悦子さんが、
「鬼無里まり」とお名前を変えて、
スペシャルゲストとして登場したときも、
ただただビックリでした。
ROLLY
シャンソン歌手をはじめたんですよね。
つまり、そうやって
純粋なシャンソン歌手でない人の方が、
印象に残りやすいんです。
──
なるほど。
ROLLY
山本リンダさんも、前田美波里さんも
シャンソン歌手じゃないし。
当然、正統派のシャンソン歌手の方は、
音大でシャンソンを習って
シャンソニエで修行をしてきてるから、
「本物のシャンソン歌手」です。
その点、
わたしたちはトリッキーなもんだから、
印象に残っちゃうんです、
レ・ロマネスクさんとか、まさにそれ。
他にいないもの。
──
たしかに‥‥レ・ロマネスクさんにも
「老女優の回転木馬」
という稀代のシャンソンがありますね。
ROLLY
シャンソンの「老女優は去りゆく」と
「回転木馬」を合体したやつね。
昔の日本語の「歌舞く」って、
レ・ロマネスクさんのことだと思います。
英語で言う「キャンプ」の感覚。
──
キャンプ。
ROLLY
そう。「camp」って言葉は、
野山でやってるアレを指すだけじゃなく、
トリッキーとか、道化師っぽいとか、
つまりグラムロックな感じも意味します。
そう、グラムもシャンソンっぽいですね。
──
T・レックスとかデヴィッド・ボウイ‥‥
初期のクイーンも
グラムにくくられていたと思いますし、
ROLLYさんはもちろん、
さらには沢田研二さんなんかも、
両方を股にかけている感じがありますね。
ROLLY
そういう意味では、
「グラムロック」と「シャンソン」も、
かなり近いと思う。

ROLLY&谷山浩子のからくり人形楽団
ねこの森には帰れない
Queenの「キラー・クイーン」をはじめて聴いたときに「オー・シャンゼリゼ」にそっくりだ、これはシャンソンだ‥‥と思ったんです。でも、それより前に、姉が谷山浩子さんの「ねこの森には帰れない」を聴かせてくれたんです。この曲も、めちゃくちゃQueenっぽい。だから、はじめてQueenを聴いたときには、この曲のことも頭に思い浮かびました。のちに谷山さんとお話ししたら、谷山さん、Queenは聴いていなかったそうです。リンクは、ぼくがギターを弾かせていただいたバージョン。シャンソンとQueenと谷山浩子さん。それぞれちがう「断片」なんだけど、ぼくのなかでは「大きな結論」としてひとつにつながるのです。

(つづきます)

写真:福冨ちはる

2025-10-13-MON

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  • これまでジャズやロックに挑戦してきた演歌歌手の神野美伽さんが、今度はシャンソンを歌います! ただいま絶賛準備中、チケットはもう発売中。本番までに「ほぼ日」でシャンソンを楽しく学んで、当日はみんなで「オー・シャンゼリゼ」を歌いましょう! きっと素敵なコンサートになります。ぜひ、足をお運びください。

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