• こんにちは、ほぼ日の奥野です。

    2025年11月15日(土)に、
    演歌歌手の神野美伽さんがシャンソンを歌うコンサート
    「はじめてのシャンソン」を
    東京・赤坂の草月ホールで開催いたします。
    チケットはすでに発売中です。

    歌う神野さんも「シャンソン、はじめて」ならば、
    主催の「ほぼ日」もはじめて。
    なので、はじめてのお客さまにもぜひ来ていただきたい、
    はじめてのお客さまこそ楽しめる、
    そんなシャンソンの会を目指して準備しています。

    でもなぜシャンソンのシャの字もなかった「ほぼ日」が
    「はじめてのシャンソン」
    なるコンサートを開催することになったのか。

    少々、長い話になるのですが、順を追って説明します。

    なお、「はじめてのシャンソン」概要については、
    こちらのページからどうぞ。

    話はまず、2019年の「ほぼ日」に掲載された
    神野美伽さんのインタビューに
    画家の笹尾光彦さんが感動した日まで、さかのぼります。

    紅白歌合戦の出場経験もあり、
    すでに有名な演歌歌手だったにも関わらず、
    ニューヨークのジャズクラブで演歌を歌おうと決心して
    単身渡米し何度もオーディションを受け続けたり
    (結果、みごとその夢を果たしています)、
    元ミッシェル・ガン・エレファントで
    現The Birthdayのドラマー・クハラカズユキさん、
    ザ・コレクターズの古市コータローさんとバンドを組み、
    ロックのフェスに出場したり。
    最近では、尊敬する笠置シヅ子さんの舞台に主演して、
    いくつもの名曲ブギで会場を沸かせたりもしました。

    そんなふうに、演歌のみならず、
    これまでさまざまな挑戦を続けてきた神野美伽さん。
    その姿に、笹尾さんは感動したのです。

    そのときの神野さんのインタビューは、こちらです。
    時間があったら読んでみてください。

    しかし、それからほどなくして、世の中はコロナ禍へ突入。
    ほとんど同時に神野さんも体調を崩してしまい、
    何度かの大きな手術を経験しました。
    一時はHCU(高度治療室)にも入るほどだったそうです。

    神野さんにとって「生きること」と
    ほとんど同義の「歌」を、二重の意味で禁じられるなか、
    いまだコルセット姿の神野さんが、
    オンラインの配信で、ひとつの歌を届けてくださいました。
    それが「オー・シャンゼリゼ」でした。

    その動画は、こちらのページから視聴できます。
    いま見ても、元気が出てきます。

    上の動画中、神野さんのとなりで
    楽しげにアコーディオンを弾いているのが、桑山哲也さん。
    暴走族だった(!)10代のころから
    最高のアコーディオン奏者になるまでの半生を
    インタビューしているので、
    そちらもお読みいただけましたら。
    シャンソンまわりには、おもしろい人が多くて困ります‥‥。

    話を戻します。

    神野さんの「オー・シャンゼリゼ」の動画を見て感動したのが、
    何を隠そう、画家の笹尾光彦さん。ふたたび。
    涙がぽろぽろ流れて止まらない‥‥とメールをくださいました。
    そのことを神野さんにお伝えしたら、
    神野さんも「わたしも笹尾さんの絵が好きだったんです!」と。
    過去には個展にも足を運んでいたそうです。

    これは素敵なきっかけですねということで、
    神野さんと笹尾さんとわたくし奥野とで、ランチをしました。
    そのとき「オー・シャンゼリゼ」からシャンソンの話になり、
    神野さんは若いころからシャンソンが好きで、
    シャンソニエにも通っていた‥‥と教えてくださったのです。

    初対面は笹尾さんの個展会場でした

    ただ、ジャズやロック、笠置シヅ子さんのブギウギ‥‥など、
    いろんなジャンルに挑戦し続けてきた神野さんも
    「シャンソンだけのコンサートは、やったことがない」と。

    ここで、笹尾さんの「プロデューサー魂」に火が着きました。
    (ふたたび)何を隠そう笹尾さんという人は、
    元クリエイティブディレクターで
    50代半ばまで外資系広告代理店の副社長を務めており、
    さまざまな広告やイベントなどの「場」づくりを
    さんざんやってきた方だったのです。
    そこから画家へ転身したという、これまたおもしろいお方‥‥。

    そんな百戦錬磨時代の目になった笹尾さんが、
    ランチの手を止め、真剣な顔つきでこう言ったのです。
    「神野さん、シャンソンの会をやったらどうですか。
    主催は、ほぼ日。
    ほぼ日の読者なら、たとえシャンソンのことを知らなくたって、
    きっと興味を持ってくれるから」と‥‥! 

    それが、昨年(2024年)の11月です。

    そこから、手探りながら、シャンソンを聴きはじめました。
    エディット・ピアフ、イブ・モンタンなど
    名前だけは知っているような往年のスターから、
    日本人でも越路吹雪さん、美輪明宏さん、クミコさん‥‥。

    シャンソン歌手のソワレさんが主催している
    「新春シャンソンショウ」や、
    日本シャンソン界の総本山ともいうべき「パリ祭」にも、
    足を運びました。

    その結果、端的に言って、シャンソンを好きになったのです。

    ひとつの理由は、聴き覚えのある曲が多いこと。
    「愛の讃歌」だとか「枯れ葉」「オー・シャンゼリゼ」、
    「マイ・ウェイ」など有名な曲はもちろん、
    さまざまな生活の場面で、
    シャンソンを耳にしていることに気づいたのです。

    ふたつめは、歌詞の世界。その奥深さ。
    これはもう、聴いてみていただいたらわかると思います。
    人生の悲しみとか悲しい恋、戦争など、
    自分はいま40代ですが、
    この年になったからわかる世界なのかなという気もします。
    ただ、愛好家の集まりに行くとお若い人もけっこういます。
    大学生でシャンソンを歌っていて、カッコよかったり。

    みっつめは、本当にたくさんの人々のバックグラウンドに
    シャンソンがあったこと。
    そして多くの歌手が、シャンソンを歌っていたこと。
    沢田研二さんの歌う「脱走兵」など、何度も聴いています。
    ロックスターとして憧れていたROLLYさんは、
    ロックより前の3歳でシャンソンに出会っていたそうです。
    そういえば、レ・ロマネスクにもシャンソンはありました。
    「老女優の回転木馬」というホラー曲がそれ。
    自分も演奏していたのです。
    (わたくし、レ・ロマネスクのギター係をつとめています)

    そして最後に、とにかく「自由」だったという意外な事実。

    まず同じ歌でも、歌う人によってぜんぜんちがうのです。
    アレンジはもちろん、歌詞までちがったりする。
    歌う人の思いや解釈が重要だとされているからみたいです。

    さらに「新春シャンソンショウ」では、
    ROLLYさんが、煌めきのエレキギターを弾いてましたし、
    また、今年の「パリ祭」では、
    長渕剛さんの奥さまとしても有名な志穂美悦子さんが
    「鬼無里(きなさ)まり」さん、という名前で
    シャンソンを披露していました。
    工藤夕貴さんのド迫力の歌唱にも、ド肝を抜かれました。
    シャンソンと言うと「敷居が高い」っていうか、
    いろんな「しきたり」があるんじゃないかと思ってたのに、
    シャンソンに参入したばかりの人や、
    シャンソン歌手ではない人が、ステージで躍動している。
    シャンソンってむしろ「何でもありなのかも?」と感じて、
    「もっと知りたい!」と思うようになったのです。

    そのために、少し前から「ほぼ日」では、
    シャンソンにくわしい方々のインタビューを連載しています。

    すでにご紹介しましたが、
    コンテストで優勝するほどの腕前を持っていたのに、
    中学・高校で大いにグレて暴走族となった(!)経験を持つ
    アコーディオン奏者・桑山哲也さん。

    また、大好きな河合奈保子さんを追いかけるうちに
    越路吹雪さんと出会い、
    自身もシャンソン歌手になってしまったソワレさん

    このあともROLLYさんやチャラン・ポ・ランタンさん、
    糸井重里や笹尾光彦さん、
    レ・ロマネスクTOBIさんなども登場する予定です。

    それぞれのインタビューを読みながら、
    シャンソンについて知らなかったみなさんも、
    ぜひ、ぼくらと一緒に、
    シャンソンと出逢う旅に出てもらえたらうれしいです。

    ROLLYさんのインタビューも近日公開

    笹尾さんと神野さんの出会いのランチから、数ヶ月。

    われら「ほぼ日」が「本当のゼロ」から、
    「シャンソンとは何か?」から準備をはじめた
    「神野美伽さんが歌う はじめてのシャンソン」の本番が、
    もうすぐやってきます。11月15日の、土曜日です。

    バンドのミュージシャンのみなさんや制作スタッフの方々など、
    その道のプロの力を大いにお借りしながら、開催します。

    歌う神野さんもはじめてなら、主催の「ほぼ日」もはじめて。
    だから、シャンソンはじめてのお客さまにも、ぜひ来てほしい。
    神野さんの歌で、シャンソンの素晴らしさを知ってほしい。

    繰り返しになりますが、どの人のインタビューでも出てくるのが、
    「シャンソンって、本当は自由なものなんだよね」ということ。

    だから、「はじめてのシャンソン」のコンセプトも、「自由」。
    自由な気持ちで歌を楽しむ会にしたいです。
    ドレスコードなんかも、とくにありません。
    もちろん、おしゃれしたい人は、バッチリ決めてきてください。

    歌う曲も、きっとみなさん知っている曲がたくさん出てきます。
    (後日、歌唱予定の曲を発表します)。
    ラストは「オー・シャンゼリゼ」を
    みんなで一緒に歌えたらいいよね‥‥なーんて話もしています。

    そういう意味では
    「神野美伽さんが歌う」というタイトルではありますが、
    気持ちの上では
    「神野美伽さん『と』歌う はじめてのシャンソン」。

    そんなコンサートになったらいいなあと思ってます。
    そして、きっと楽しい会になります。

    たくさんのみなさんのご参加を、お待ちしています。

    これまでジャズやロックに挑戦してきた演歌歌手の神野美伽さんが、今度はシャンソンを歌います! ただいま絶賛準備中、チケットはもう発売中。本番までに「ほぼ日」でシャンソンを楽しく学んで、当日はみんなで「オー・シャンゼリゼ」を歌いましょう! きっと素敵なコンサートになります。ぜひ、足をお運びください。