アリのおしゃべりを解明する研究や
日本におけるヒアリの水際対策の第一人者、
九州大学の村上貴弘さんが、
なんといま、宇宙飛行士に挑戦しています。
なぜアリの先生が? なぜ50歳を超えて?
そんな疑問はぜんぶ、
「夢」ということばが吹き飛ばしてくれます。
JAXAが実施する宇宙飛行士候補者の
選抜試験に挑戦中の村上貴弘さんから
原稿が届く、毎週木曜日の連載です。
地球の裏側までアリを研究しに行く先生が、
地球から離れる日がやってくるかも?
どうか、宇宙へ飛び立つその日まで‥‥!

>村上貴弘さんのプロフィール

村上貴弘 プロフィール画像

村上貴弘(むらかみ たかひろ)

九州大学
「持続可能な社会のための決断科学センター」准教授。
1971年、神奈川県生まれ。
茨城大学理学部卒、
北海道大学地球環境科学研究科博士課程修了。
博士(地球環境科学)。
研究テーマは菌食アリの行動生態、
社会性生物の社会進化など。
NHK Eテレ「又吉直樹のヘウレーカ!」ほか
ヒアリの生態についてなどメディア出演も多い。
近著に『アリ語で寝言を言いました』(扶桑社新書)、
共著に『アリの社会 小さな虫の大きな知恵』(東海大学出版部)など。
ほぼ日ではこれまでのコンテンツで、
特定外来生物のヒアリについての知識や
ハキリアリのおしゃべりについて解説いただきました。

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第4回 宇宙飛行士になるための準備(健康編)

JAXAの宇宙飛行士選抜試験の
最初の関門は「書類審査」でした。
昨年、2021年12月のエントリーに向けて
まずは書類審査を通過しなければ。

最初に着手したのが健康面の対策でした。
ぼくは50歳を過ぎている割に
健康体ではあるのですが、
加齢による影響はそこかしこに出ております。

準備その1……「血液」

LDL(低密度リポタンパク質・
いわゆる悪玉コレステロールです)の値が
基準値を少し超えてしまっていました。
これをどうにか基準値の
真ん中付近まで近づけないとまずい。
ということで、
昨年2月から食生活を変えてみました。
「魚食中心」「洋菓子から和菓子へ」「玄米」
変更点はこの3点です。
食べる量のコントロールはしないで、
むしろ多めに食べていました。

そして3ヶ月後、
近所の内科で血液検査をしてもらったところ、
悪玉コレステロール値は
基準値の真ん中まで変化してひと安心。
さらに2ヶ月後にもう一度検査してもらい、
変化せずに安定していました。
このままキープすれば、
12月に控えている診断でも
問題なくクリアできそうでした。

準備その2……「目」

近視に乱視、そして老眼でもある我が目。
それまでの宇宙飛行士の条件ならば、
完全にアウトだったことでしょう。
今回はそこまで厳密な条件ではありません。
書類選考で示されていた条件は、
「遠距離視力で1.0以上」のみ。
これなら眼鏡の度を上げれば大丈夫。
ということで、
さっそく矯正視力1.2程度まで度数を上げました。
視力に関してはこれ以上できることはありませんが、
結果的には視力条件(乱視や強度矯正)で
引っかかった方もかなりいらっしゃったようです。
やはり、宇宙空間での作業を想定すると
ある程度の視力は必要なのでしょうね。
老眼が今後どう影響していくか、
ちょっと心配なところではあります。

準備その3……「歯」

0次選抜の健康診断項目に
「歯」の条件は入っていませんでした。
でも、おそらく必ず問題になると考え、
昨年の2月に歯科検診を受けて、
定期的に治療を行なっています。
明らかな虫歯はないのですが、
歯茎は年相応に老化しており、気になっていました。
正しい歯磨きの仕方を何回もレクチャーしてもらい、
そこから個人的に調整し、
実際に歯茎の状態などに効果が出たのは、
軽いブラッシングの後に、
歯間ブラシ(針金のもの、ゴムは効果が低かったです)
+デンタルフロス、
その後に歯磨き粉をつけてのブラッシングが
効果的だと感じて続けています。

そうこうしているうちに
JAXAの宇宙飛行士候補者募集の
エントリー開始日、
2021年12月20日がやってきました。

ドキドキしながらサイトをチェックし、
登録作業をして、申請書類に目を通します。
医学診断項目をチェックしてみますと、
えっ、「座高」!?
視力検査にも「球面レンズ度数」
「円柱レンズ度数」「円柱レンズ軸」!?

さらにさらに、血液検査項目の多いこと!
尿検査の「亜硝酸塩」なんて項目、初めて見ました。
ということで、近くの内科に問い合わせたところ、
亜硝酸塩の検査だけできない、との返事。

その後、九州大学病院、市内の大病院などなど
2021年内に10病院をあたってみるも、全て不可!
年内に書類提出をする目標でしたが、
残念ながら達成できませんでした。
年が明けてからすぐに調べ直し、
ようやく病院が見つかりました。
ただし、電話で予約すると10日後でないとダメ。
うーん、なかなか進みません。
これも宇宙飛行士になるための
試練の一つだったのでしょうか。

検査当日、宇宙飛行士のための
健康診断を受けに来られている方が
もうひとかたおられました!
なんだか南総里見八犬伝みたいです。
軽く会釈だけして、心の中でエールを送りました。
(お互い頑張りましょう)と。

準備の甲斐もあって、
書類選考は無事に通過しました。

(次回の更新は6月30日の予定。
村上先生の挑戦はつづいています)

2022-06-23-THU

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  • 村上貴弘さんの過去のコンテンツ

    正しく恐れるためのヒアリ講座

    アリがしゃべった!