アリのおしゃべりを解明する研究や
日本におけるヒアリの水際対策の第一人者、
九州大学の村上貴弘さんが、
なんといま、宇宙飛行士に挑戦しています。
なぜアリの先生が? なぜ50歳を超えて?
そんな疑問はぜんぶ、
「夢」ということばが吹き飛ばしてくれます。
JAXAが実施する宇宙飛行士候補者の
選抜試験に挑戦中の村上貴弘さんから
原稿が届く、毎週木曜日の連載です。
地球の裏側までアリを研究しに行く先生が、
地球から離れる日がやってくるかも?
どうか、宇宙へ飛び立つその日まで‥‥!

>村上貴弘さんのプロフィール

村上貴弘 プロフィール画像

村上貴弘(むらかみ たかひろ)

九州大学
「持続可能な社会のための決断科学センター」准教授。
1971年、神奈川県生まれ。
茨城大学理学部卒、
北海道大学地球環境科学研究科博士課程修了。
博士(地球環境科学)。
研究テーマは菌食アリの行動生態、
社会性生物の社会進化など。
NHK Eテレ「又吉直樹のヘウレーカ!」ほか
ヒアリの生態についてなどメディア出演も多い。
近著に『アリ語で寝言を言いました』(扶桑社新書)、
共著に『アリの社会 小さな虫の大きな知恵』(東海大学出版部)など。
ほぼ日ではこれまでのコンテンツで、
特定外来生物のヒアリについての知識や
ハキリアリのおしゃべりについて解説いただきました。

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第5回 宇宙飛行士になるための 準備(勉強編)

先日5月8日(日)に、
JAXA 宇宙飛行士選抜の英語試験が行われました。
オンラインでの実施で、
TOEICという英語能力を判定する
国際的な試験を利用して行われました。

僕は、テキサス大学やカンザス大学に
アリの研究で3年半以上滞在し、
パナマにある研究者しか入れない島
(今はエコツアーもやっております)で
合計1年近く滞在していたにも関わらず、
こういった英語の試験を受けたことがなかったので、
非常に緊張しました。

たのしかったのは、ライティングですね。
テーマがおもしろかったです。
僕は娘とのとある出来事が
ドンピシャでテーマに合っていたので
それを書きました。
いろんなことを経験しておくものだなぁ、
と回答しながらしみじみとしてしまいました。

スピーキングはとにかく時間が短い!
という感じです。
あれでどれくらいの能力が測れるのかは不明です。
予想外だったのはリーディングの分量が
非常に多くて全く時間が足りなかったという点です。

英語の試験対策は、とにかく英文を読み込むこと、
そしてライティング能力は
National Geographicの日本語版
(ウェブでも無料で公開されているもの)を
自分で英訳して、
英語版で採点するという作業を繰り返しました。

おかげさまでなんとか英語は突破できました。
問題は次の試験です。

そして5月29日に行われた
一般教養・小論文・STEM(理系科目)・適性試験は
範囲が非常に広くて対策が難しいものでした。
エントリーのはじまった昨年12月20日から
コツコツと勉強を始めていたのですが、
とにかく数学が難しい!

途中で嫌になってしまって
英語ばかりやっている期間もありつつ、
なんとか頑張りました。

試験は朝9時から夕方4時半までの長丁場です。
ここでもオンラインでの試験でした。
英語の試験でもかなり厳しく注意されていたのが
カンニング対策です。
画面から一定時間目線を外すと
カンニング判定されてしまうんですよ。
ずっと画面を睨んでいなくてはならず
なかなかのハードル。
キョロキョロしがちな人は辛かっただろうな。

そして、画面から離れてしまうと
そこで試験が終了してしまったり、
試験画面以外を開いても
そこで試験が終了してしまいます。
オンラインならではの難しさがありましたね。

僕もですね、きちんと対策をして
試験開始前にはちゃんとトイレに行っておいたのですが、
2時間の長丁場ということで
トイレに行きたくずっとモジモジしていました。
でも画面から外れるわけにはいかないし‥‥。
まあ、ここでは多くを説明しないことにしますが
試験には最後まできちんと取り組みながら、
「最悪の事態」は避けることができました。
宇宙飛行士試験も大変ですよ!

結果は6月下旬か7月上旬にわかります。
さてさて、どうなることやら。

(村上先生からご連絡があり、
試験の結果、残念ながら通過ならず。
この連載はストックがある限りつづきます。
次回は7月7日の予定です)

2022-06-30-THU

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  • 村上貴弘さんの過去のコンテンツ

    正しく恐れるためのヒアリ講座

    アリがしゃべった!