アリのおしゃべりを解明する研究や
日本におけるヒアリの水際対策の第一人者、
九州大学の村上貴弘さんが、
なんといま、宇宙飛行士に挑戦しています。
なぜアリの先生が? なぜ50歳を超えて?
そんな疑問はぜんぶ、
「夢」ということばが吹き飛ばしてくれます。
JAXAが実施する宇宙飛行士候補者の
選抜試験に挑戦中の村上貴弘さんから
原稿が届く、毎週木曜日の連載です。
地球の裏側までアリを研究しに行く先生が、
地球から離れる日がやってくるかも?
どうか、宇宙へ飛び立つその日まで‥‥!

>村上貴弘さんのプロフィール

村上貴弘 プロフィール画像

村上貴弘(むらかみ たかひろ)

九州大学
「持続可能な社会のための決断科学センター」准教授。
1971年、神奈川県生まれ。
茨城大学理学部卒、
北海道大学地球環境科学研究科博士課程修了。
博士(地球環境科学)。
研究テーマは菌食アリの行動生態、
社会性生物の社会進化など。
NHK Eテレ「又吉直樹のヘウレーカ!」ほか
ヒアリの生態についてなどメディア出演も多い。
近著に『アリ語で寝言を言いました』(扶桑社新書)、
共著に『アリの社会 小さな虫の大きな知恵』(東海大学出版部)など。
ほぼ日ではこれまでのコンテンツで、
特定外来生物のヒアリについての知識や
ハキリアリのおしゃべりについて解説いただきました。

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第3回 宇宙飛行士選抜試験の現状報告

2021年12月20日に
宇宙飛行士の公募が開始されたときに、
果たしてどれくらいの人数が応募してくるのだろう、
と考えました。
なにせ今回の募集では、
世界的に見ても例を見ないほど、
幅の広い公募人材像でした。
まず、今回の募集では
特定の職種に絞っていなかったのです。
前回でも少し触れましたが、
通常、宇宙飛行士は若干名しか募集しないため、
パイロットや医師など
宇宙空間で活動する上で確実に職能が活かされる
プロフェッショナル限定でした。
それは世界的に見ても同じです。
ところが今回のJAXAの公募では
そういった制限がほとんどなかったのです!
これには驚きました。
これを踏まえた僕の予想としては、
前回の公募が1000人弱だったので、
3倍くらいだろうか、と踏んでおりました。
結果はそれよりもかなり多い、4127名!
選考過程はこのようになっています。

[1]書類選考(健康診断)

[2]英語試験

[3]一般教養、小論文、STEM*試験、適性試験

※Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の略

[4]1次選抜(医学検査、医学特性検査、プレゼンテーション、資質特性検査、運用技量試験)

[5]2次選抜(医学検査、医学特性検査、面接(英語、資質特性、プレゼンテーション)

[6]3次選抜(医学検査、医学特性検査、資質特性検査、運用技量試験、面接(総合、英語、プレゼンテーション)

という長い長いプロセスを経て、
恐らく2~3名が
宇宙飛行士の候補として選抜されます。
この原稿を書いている現段階(2022年5月30日)で

[1]の書類選考で4127名から2266名に絞られ、

[2]の英語試験では恐らく
1000名弱くらいに絞られたのはないでしょうか。

そして先日、5月29日(日)に行われた

[3]一般教養、小論文、STEM試験、適性試験
が終了したところです。
恐らくここで100-200名くらいに
絞り込むのではないかと僕は考えております。
えっ、「手応えはどうだったか」ですか?
なかなか厳しかったです。
試験の内容は公開できませんが、
朝の9:00から夕方16:30までと長時間にわたる中で、
集中力を切らさずに作業をこなす必要があります。
恐らく、1次選抜以降では
さらにストレスのかかる環境で、
ストレスのかかる作業が待っていると思います。
なんとか0次選抜を突破できるよう、
皆様も祈っていてください!

(次回の更新は6月23日の予定。
村上先生の挑戦はつづいています)

2022-06-16-THU

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  • 村上貴弘さんの過去のコンテンツ

    正しく恐れるためのヒアリ講座

    アリがしゃべった!