犬香薷（イヌコウジュ）

　

『肯園（ケンユェン）が、
雙連埤（シュアンリェンピー）で
犬香薷（イヌコウジュ）』

一句詠む。

読みがなだらけで何のことだかわからないですよね。
しかし、尊い活動のお話です。

ルビを振ってる、意味不明な名詞が３つ。
私ですら「肯園」しか認識できていない。
そんな状態ですが、
「肯園」からのお誘いで、
「雙連埤」（実は地名）に、のこのこと行って来ました。

「肯園」は日本の女性誌でも何度か
取材させていただいている、アロマブランドです。
質の良いアロマオイルを使っている、
骨太リラクゼーションサロンというイメージ。

いまは、アロマ周りの自社製品の開発販売とセラピースクールの運営やアロマ体験に力を入れていて、残念ですが、Spaでの施術はやっていません。いつの間にかロゴも変わって「肯園」をローマ字表記した「CANJUNE」を使っています。

　

当日の待ち合わせ場所には、
Podcastを一緒にやっている近藤弥生子さんが
先に着いていました。
めちゃめちゃ眠そうです。
集合時間までに来たのは彼女のみ。

台湾人と、台湾人化した私は、
出発時間までに着く。
ギリギリでも、最初からいたように
車にしれっと乗り込むのが台湾の流儀。
いつだって全力投球の近藤さんに、
この能力はまだ芽生えてません。

全力投球近藤と、台湾化の青木。

　

車に揺られること１時間半。
到着したのは、台北の東側にある宜蘭県の
「雙連埤」（シュアンリェンピー）。

「雙連埤」（シュアンリェンピー）の発音が、二重まぶたの意味の中国語「雙眼皮」（シュァンイェンピー）に似てると思っていたら、絵画のような世界が目の前に。

　

この集落のサイズは、東京ドーム３.6個分で、
住民は40人ほど。
電気はあるけど、水道はなく、山からずっと
流しっぱなしの湧き水がみんなの生活用水。
水が流れているので、暑い時期なのによそ風が吹く。

水のせせらぎにチラチラ小花が咲く環境。台湾でよくある、夏のびっしり茂る緑が重く感じる山ではないのが、まず激しく好印象。

　

日本でも田舎には、色褪せた使えないバケツや
長靴や看板が放置してあったりしますが、
全くそういうものがない。
行ったこともないけど、小さな極楽浄土のようでした。
見たこともないけど、妖精の気配を感じました。

「雙連埤」の「埤」（ピー）は、今回初めて知る単語。
溜池とか用水池のことです。

一文字で済ますユニークな音の、
こういうほぼ使うことのない中国語って、
無駄に一瞬で覚えてしまう。
ぴー。

「雙連埤」の上空写真。山からの水を引いて溜めたのが「埤」。

このハーブ、何とも言えない甘くまろやかで爽やかな香りが、ずっと口に残りました。おかわりしたいほどに感じが良い。

放し飼いの鶏が小綺麗。全く匂いもなく「あんた、いたの？」って感じ。

　

「肯園」は、こんな集落の人たちと一緒に、
エコフレンドリーな
「犬香薷」（イヌコウジュ）の商品を作っています。

「犬香薷」ってご存知ですか？
アジアに生息するシソ科のハーブで、
ラベンダーのような香りがすると言われていますが
「ちょっと違うだろ」
「もっと別方向にいい感じの香り」が、
ラベンダーが苦手な私の意見。

左から、犬香薷精油（アロマオイル）。真ん中、犬香薷全效保濕化妝水（化粧水）、犬香薷萬用養肌精華液（美容液）。日本円でざっくり六千円ちょいくらい。興味ある方は、9/26〜28に東京で「BIOFACH Japan」に出店されますのでぜひ、クンクンしに行ってください！

　

「犬香薷」は、昔から民間で
薬用植物として扱われていました。
日本統治時代には、台湾産生薬資源のひとつとして
日本人により研究対象になり、
学術的な記録もされたものの、
戦争が終わって日本人が帰っちゃったから
広く知られることなく、地味な存在に。

ところが、台湾産は特にいい成分が多いと
分かったことも手伝ってこの植物にスポットが当たり、
「雙連埤」の地で、復育・栽培の流れになったのです。

蒸気で蒸留して香りを抽出する前に、「犬香薷」は干して水分を飛ばす。

　

今回は「犬香薷」のお里訪問でしたが、
企業がやっている地方創生とは
ちょっと違う空気があります。
現地の人たちと「肯園」の関係が、
ほっこりしています。

山中に連れていかれたものの、
お昼を食べる店がないので
「肯園」が仲良くしている集落のおじさんの
個人自宅でごはんをご馳走になり、
台湾のおしゃれなファッション誌の編集さんたちと、
食べた茶碗をおじさんちの台所の流しに
置きにいきましたよ。

一番右は、仙草ゼリー。葛も仙草も育てて、本葛粉を作るところからやっている貴重なもの。地元の食材のごはんともども、すごくおいしかった！

「雙連埤」の環境の魅力を伝えてくれた方も、「犬香薷」を育てている方も、知識も考えもあって、しっかりしてて、みんな話が上手！

　

台北市内で、バシッとかっこいい香のブランドをやってる
「肯園」がこんな集落を見つけ、
そこに少人数で質のいい人たちがいて、
消えかけたものを栽培しはじめ、いい関係で、
台湾に根づくナチュラルなものづくりをしている。

香り、かなり好みでした。天然のものなので、植物の採取期によって微妙に香りが違う。

　

香りを身につけることにさほど興味はなかったけど、
こんな背景を見ちゃったのも手伝って、
お金を貯めて必ず買うのだと心に誓いました
（現在、夏休みの散財にシビレ中）。

（注）台湾産だからって、
なんでも私は推しませんよ～。