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読者のみなさんから届いたお便り #70

 
今年の6月、祖母が亡くなりました。
104歳でした。
祖父は30年ちかく前に亡くなりましたが、
わたしが幼いころに
「おじいちゃんも鉄砲かついで戦争いったんよ」
と話していたのをおぼろげに覚えています。
それを聞いてわたしは、
もっと詳しい話を聞いてみるということも出来ず、
上手く返事もできずに、
ただそこに居ただけのような気がします。
そのころの祖父母の家には、
たしか、軍服を着た祖父が一人で写った写真が
あったような記憶もあります。
千人針のようなものが一緒にしまってあったような
記憶もあります。
ただ、わたしもほんとうに幼すぎて、
それが本当の記憶だったのか、
もしかしたら夢だったのかも、と思うくらいに
おぼろげな記憶です。
そして、お酒の好きな祖父が飲んで気分がよくなると
「かってくるぞといさましく~、手袋買いにいったのさ~」
と軍歌の替え歌を
わたしたちに向かって歌うのを聞いては
弟と一緒にケラケラ笑っていたことは、
夢ではなく本当の記憶だったと思います。
その祖父の記憶が本当の記憶だったのか、
戦争のとき、
おじいちゃんとおばあちゃんはどんな生活をしていたのか、
終戦を告げるあのラジオ放送をおばあちゃんも聞いていたのか、
自分が大人になると聞いてみたいことが
いろいろと出てきましたが、
結局、わたしから祖母に直接聞いたことはありませんでしたし、
祖母の方から戦争に関する話を聞いたことも
一度もありませんでした。
祖母が亡くなったいま、そんな話も聞いてみればよかったかな、
と思う反面、
もし今、祖父と祖母が元気だったころに戻れたとしても、
わたしはやっぱり何も聞けないのかな、とも思います。
(うさ)

2025-10-19-SUN

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  • ヴェトナム戦争/太平洋戦争にまつわる
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    テーマや話題は何でもけっこうです。
    いただいたお便りにはかならず目を通し、
    その中から、
    「50/80 ヴェトナム戦争と太平洋戦争の記憶」
    の特集のなかで、
    少しずつ紹介させていただこうと思います。

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    特集 50/80 ヴェトナム戦争と太平洋戦争の記憶