
- 父が大学生のころ、米軍基地で
新聞の勧誘のアルバイトをしていました。
米軍基地には、
ヴェトナムの帰還兵が大勢いました。
彼らは、新聞の勧誘に快く応じてくれて、
総じて悪い人や差別をする人は
いなかったそうです。
(もしかすると彼らには、
日本の苦学する少年に思われていたのかも?) - 父と仲良くなった黒人の帰還兵から貰った
コインやジッポーのライターが、
今でも家にあります。 - 帰還兵たちは
陽気に基地内のバーで飲酒しながら
騒いでいましたが、
口々に、その当時同時に勃発した朝鮮戦争や
当時まだ続いていたヴェトナムに、
また帰っていくのだと言っていたそうです。
また、
兵士間で大麻などの麻薬が常習化していたらしく、
そこらでたばこを吸うような気軽さで
吸っていたとも聞きました。 - 戦場(ジャングルの密林)で
いつ奇襲されるかわからない恐怖を忘れるために
覚えた薬物の依存症に、
その後、帰国したヴェトナムの帰還兵たちが
苦しむことになったのは、周知の事実です。 - ある日、その黒人の帰還兵が、
3センチ四方の輝石の原石の標本を
父に渡しました。
その裏には、
青いインクで書いた小さなメッセージカードが
貼り付けられていました。
そして、辞令が降りたので任地に行くから、
これでお別れだと父に伝えました。 - しばらくして
その黒人の帰還兵は再び任地へと赴任していき、
いちど父宛に葉書が来ましたが、
その後消息は途絶えています。 - (アリス)
2025-08-26-TUE

