紅色の染料や食用油をとるために栽培されるベニバナは、 古代エジプト時代から染料として利用されていたようです。 日本でも、『万葉集』にすでに 「末摘花」としてその名が見られます。 この頃に橙色の花をつけはじめ、 日が経つにつれ花の色は濃い紅に変わります。 一面のベニバナ畑は夏の風物詩ともいえるでしょう。
── 二十四節気では「小暑」になるんですね。
「すでに日は短くなり始める」
‥‥かなしい!
「一方で、暑さはこれからが本番です。
 小暑と次の大暑の間を暑気と呼び、
 暑中見舞いを出すのもこの期間です」と。
そして「温風至」。
「本格的な夏の到来」と。
もうそろそろ九州南部、沖縄は
梅雨明けしているといいな。
京おとこ スカッとね。青空で。
── 飛行機雲を見上げたり。
京おとこ そうですね!
── そんな季節の旬の魚は‥‥
おお、「鱧」だ!
鱧がきました。


一同 わー。(拍手)
── 京おとこさんに、
語っていただきましょう!
あすま女 京おとこさん、
1年間待ってたって感じ。
京おとこ いやいやいやいや(笑)。
あすま女 じゃましませんから
もう、どうぞー。
京おとこ 東京に来て、和食の店に鱧があって、
「あ、鱧ですか!」って
ちょっと関西弁で料理人に言ったら
「京都の人はハモハモうるさい」って
言われましたよ(笑)。
あすま女 いきなりけんか腰ですいません!
江戸っ子が。
京おとこ でも本当に思い入れがありますよ。
あすま女 ほーほーほー。
京おとこ 鱧の季節といえば、
祇園祭なんですよ、やっぱり。
── 「祇園祭は鱧祭」と言われるとか。
京おとこ そうです。
7月17日の祇園祭に近づくにつれて
どんどんどんどん
鱧の値段が上がっていくんです。
── はあー!
どうやっていただくのが好きですか。
京おとこ やっぱり「鱧の落とし」が
一番うまいですよね。
それを梅肉で食べるか、
山葵醤油で食べるかなんですよ。
あすま女 んんー。
梅肉は独特!
京おとこ うちの親父は山葵醤油派だったんで、
ぼくもついつい
山葵醤油派ではあるんですが。
時々京都から新幹線に乗って帰る時とか
駅近くで売ってる鱧寿司とか
ついつい買っちゃうんですよね。
あの妙な甘さのある寿司っていうのが
また、たまらなくて。
── 穴子のような煮詰めたタレ。
京おとこ 鱧は骨切りっていうのに
すごく技術がいる。
── ということは、ご家庭では?
京おとこ やー、まずしないですね。
── しない。
じゃあ、食べに行くか、
買ってくるか。
京おとこ 家で食べるときは、買ってきてました。
骨切りした鱧を買ってくるんですよね。
あすま女 もう湯引きしてあるものですね。
京おとこ ええ、それが鱧を家で食べるときのパターンです。
── 骨切りというのは
生の状態でするんですか。
湯引きした状態でするんですか。
京おとこ 生の状態でやってますね。
── 切って、それを湯引きする。
京おとこ 修業に7、8年かかるというくらいの技術だそうです。
── 骨を断つけど、肉は切らない。
落としちゃいけないわけですね。
京おとこ そうなんですよ。
あの音がね、また。
ジョリジョリっとした音が
いいんですよね。
鱧の骨切りの音。
あすま女 いいですねー。
── しかも、食べてみると、
一切のどにひっかからないでしょう。
あすま女 包丁に秘密がある?
独特の包丁使いますよね。
骨切り包丁があるらしいんですよ。
── 「有次」とかで売ってるんでしょうね、
きっと。鱧切り包丁。
あすま女 刃が厚いんです。
刃の幅が太いというか。
── おもしろーい。
京おとこ それを使うことと、
ちから加減の合わせ技で、
あの鱧ができるんでしょうね。
それから、鱧といえば、
「皮を細かく刻んで
 胡瓜と合わせた酢の物」。
これはいいですね。
── 皮!
あすま女 「うざく」みたいなものですね、
それの鱧の皮版。
京おとこ 胡瓜で酢の物にすると。
── 「葛粉をまぶして湯引きした牡丹鱧」
とかは、やっぱり食べてたんですか。
京おとこ 牡丹鱧‥‥は、食べたことないです。
あすま女 片栗粉をつけると、
牡丹の花みたいにふわっとなるそうですよ。
京おとこ 普通に湯引きしてもそういう感じになりますけど、
よりきれいに見えるんでしょうね。
── いいなあ、京都の人~。
鱧はやっぱりうらやましいです。
京おとこ 去年、京都水族館ができたんですが、
「鱧展」ってやったんですよ。
── でえー! さすが京都!
京おとこ 夏休みなので
こどもとかいっぱいいるんですけど、
こどもたちが鱧を見て
「おいしそう!」って
言ったんですよ(笑)。
いけすじゃないんだから、この水族館は。
あすま女 それ、ヨーロッパ人のこどもが
牛を見て「おいしそう」って言うみたいな?
── それにしても、東京ではいただきませんね。
京おとこ ほんっと食べさせるところ、ないですよね。
── 関東に住んでいると、
大人も大人、二十歳そこそこじゃなくて、
三十路をとうに越えてからですよ、
鱧を初めて食べたのは。
あすま女 だって、「京阪以外では、味は良いが
骨が多く食べにくい雑魚」とされているんですもの。
── 蒲鉾にされちゃったり。
もったいのうございます。
京おとこ やっぱり骨切りしてなんぼ、って
そういうもんなんでしょうね。
東京には板さんに、
骨切りの技術があるひとが
多くないんだと思いますよ。
だからちょっとした店に行かないと
なかなか出てこない。
── ちゃんと関西の料亭や割烹で修行しないと
技術は学べないんでしょうねえ‥‥。
さあ、野菜でございます。
「獅子唐辛子」。
「ししとう」ですね。
あすま女 夏っぽいですね!
京おとこ おいしいですよね。
── これ、なんで時々辛いのが
あるんですかね。
あすま女 当たりはずれがありますよね。
── あれ、「当たり」なんですか。
「はずれ」なんですか。
あすま女 ふふ。どっちでしょう(笑)。
同じ木についてても変わらないのかな。
「10個の中に1個ほど辛いものがある」
んだそうですよ。
── 食べもののロシアンルーレット。
つまり、どんなに品種改良しても
全部が甘いししとうはできない?
最近はそれでも、少なくなってきている、
という実感はあるんですが。
「カラ!」っていうのに
当らなくなった気がしますから。
京おとこ むしろ辛いというのを
売りにしたほうがいいんじゃないですか。
全部辛く揃えたほうが。ね?
── 全部辛くちゃ
「あおとう」じゃないですか!(笑)
京おとこ あははは。そうだそうだ。
── 10個に1個辛いくらいがいいのかも。
あすま女 ちょっとイベント性もありますし。
── きらいじゃないですよね。
だから食べない、っていう人
あまり聞かないですよね。
ええと、調べましたところ、
「栽培中に水分ストレスがかかったり、
 受精せず実が大きくなることがあり、
 そうなった時に辛いものが発生する」
そうなんです。
京おとこ あらら。
── 実を守るために辛くなるのかな。
京おとこ じゃあ、ありがたい気持ちで
食べたほうがいいですね。
── 「ああ、辛っ!」って
思いながらも。
「きみもつらかったね」と。
あすま女 これもまた「万願寺」とか
京野菜に、親戚がいますよね。
── あ! 京都の万願寺とうがらし!
万願寺ははずれなしにおいしい!
京おとこ そうですね。
おいしいですよねえ。
あすま女 うん、甘い。大きいし。
なんで京都って、
ああいう独特なものが育ち、
残ったんですか。
まあ、加賀もそうですけど。
あすま女 古くから品種改良が施されていた?
── 精進料理が発達したから?
魚が手に入らないうえ、
お寺では野菜を食べるから、
精進としての野菜料理が発達して、
ひいては、野菜を工夫した文化が
残ったのかな?
京おとこ ほかにうまいものが
なかったんでしょうね。
だから野菜に熱中するしか
なかったんじゃないですか。
── ‥‥京都の方に、
「ほかにうまいもんがなかった」
って言われても(笑)!
京おとこ いえ、これは本当に、京都の人間って、
生魚とか新鮮な魚のおいしさは、
わかりにくいと思うんですよ。
── そっか。鰹の刺身とか
困っちゃうかもしれないですね。
あすま女 ですよね、うん。
── 伏見、田中、山科、万願寺、
鷹峯(たかがみね)。
いろいろあるんですね。
あすま女 そうですね、伏見とうがらしっていうのも
ありますね。
── では、次にいきましょう。
「李(すもも)」!

あすま女 あら、この間似たもの‥‥。
杏か!
この間お話しした。
京おとこ 「プルーン」も李ですね。
── 「バラ科サクラ属で、
 梅やサクランボに近い」そうです。
李は味が淡泊というか、
酸味が強く、甘み少なく。
あすま女 最近は「ソルダム」がよく並んでます。
── ソルダムはすっぱくて
実がかたくて大きくて味が濃い。
緑っぽいやつですね。
李は、全体的にすっぱい印象がありますよね。
この間、スーパーで李を買ったら
「ガラリ」って書いてあったんですよ。
あすま女 「ガラリ」? 品種ですかね。
── えーっと(調べる)、
あ、ガラリは、南方系、台湾の李なんだそうです。
京おとこ 李とかプルーンって
どうしても女子のイメージが
強いんですよね、なんか。
あすま女 ああ! あんまり男子は食べない?
すっぱいから。
栄養面では葉酸、鉄分、
ナトリウムを排泄する働き、
カリウムが豊富ということで、
妊娠中の女性によいと言われますね。
京おとこ あ! 確かに、
うちの妻は妊娠中
やったら食ってました。
プルーンを。
── プルーンはお通じにもいいですね。
京おとこ それでなんとなくぼくのなかでは
女子イメージなんですね。
── 李系のくだものは、皮をむかずにがりがり。
種はあるけど、食えるので好きですよ。
皮をむくめんどくささがない。
あすま女 そのままかじれる。
── 知り合いにバナナもイヤだっていう
人がいますからね。
めんどうだからって。
あすま女 その人は蜜柑も食べない?
── 食べない。
そういう人もいます。
ま、ちょっとかわってるかもね。
京おとこ その気持ち、なんとなくわかります。
バナナって、なんかこう
食べてる姿が間抜けな感じがして(笑)。
あすま女 モンキーな感じ?
── ふふふ。
そして季節の行事は「お中元」ですね。
お中元のいわれが書かれています。
「中国では1月、7月、10月の15日を
 三元といい、それぞれ上元、中元、
 下元と呼んでいました。
 それがお盆と結びついたのがお中元」。
もともとはお盆に親類や知人を
訪ねるときに品物を贈る習慣、
これが今、日頃の感謝の気持ちを
伝える贈り物としてなったと。
でも‥‥。
あすま女 減りましたね。
一同 減りましたね。
── デパートなんかも
年々売り場がちっちゃくなってる。
京おとこ 困っているでしょうね、
デパートにしてみるとね。
あすま女 ほんとですね。
── だんだんと虚礼に
なっちゃってる部分もあるのかもしれないですね。
でもね、お中元、お歳暮の
ちょっと後にデパートに行くと
それを分解したものを
安く売ってるんですよ。
あすま女 いいこと聞いた!
京おとこ ハムとかですか。
── そーう。
けっこういいハムとか
ばらして安く売ってるので
高島屋の地下とかで
けっこう遭遇しますよ。
それ狙いのおばさまたちが
城壁のようにセール売り場を囲ってて
大変なことになってますけど。
素麺とかも普段買わない
桐の箱入りのいいやつとかが
えらい安い値段で出てたりして。
そういうのに遭遇すると買います!
京おとこ お中元の時期って、
関西と関東で違いますよね、確かね。
あすま女 関西は旧暦じゃないですか。
京おとこ そうですよね、遅いですよね、確か。
── ということで、また次回!
「蓮始開(はす はじめて ひらく)」です。
7月12日にお会いしましょう。
2013-07-07-SUN
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