紅色の染料や食用油をとるために栽培されるベニバナは、 古代エジプト時代から染料として利用されていたようです。 日本でも、『万葉集』にすでに 「末摘花」としてその名が見られます。 この頃に橙色の花をつけはじめ、 日が経つにつれ花の色は濃い紅に変わります。 一面のベニバナ畑は夏の風物詩ともいえるでしょう。
── 夏至がきました。
夏至とは「冬至とは逆に、一年でいちばん昼が長く、
夜が短くなる時期」ですと。
梅雨の盛りでもあるわけで、
「気温の面ではまだ真夏という感じはしませんが、
 日照時間はこれから冬に向かって
 少しずつ短くなってゆくのです」と。
日照時間は長いけど、
まだ暑さのピークではないんですね。
そんな季節の七十二候は
「なつかれくさ・かるる」。
あすま女 むつかしいですね。
── むつかしいですね。
乃東(だいとう=なつかれくさ)は
冬至に芽を出し、
夏至に枯れちゃうんですね。
夏に枯れる草が枯れるってことは、
夏草が生えるということですね。
ああややこしい。
あすま女 そういうことですね。
でも夏枯草自体が身近じゃないから
よくわからないですね(笑)。
京おとこ 暑くなって枯れるんですかね。
気分的には
「やってられない!」みたいな(笑)。
── こういう言い方した方が
涼しい気がするからかな?
ちなみに東京のあたりの
夏至の日没時間は19時2分頃。
あすま女 ああ、いいですねえ。
日が長くなると幸せな気分がします。
── 仕事が終わった後、
そぞろ歩きしても明るいっていうのが
最高なんですが、
こういう仕事をしているとなかなかね。
あすま女 そうですよぉ。
── だいたい暗くなってからじゃないと
帰れなかったりしますが、
それでも、いいなぁと思いますね。
ビール飲みに行こうかなんて
言っている人を見るのも、いい。
京おとこ この俳句もそれを受けているのかな。
そういうわけじゃないのか。
── 「冷酒や はしりの下の 石だたみ」
‥‥関係ないですね(笑)。
あすま女 一人暮らしの感じ?
はしりというのは台所の流し。
其角の句ですけど、この荒くれた感じが
なかなかいいですよね。
── さて、冷酒に合わせるのは、旬のさかなです。
あすま女 そのにょろにょろしたものは‥‥。
── 「太刀魚」ですね。
太刀魚大好き~。
太刀魚うまい~。
塩焼きもうまい~。
きれいですよね!


京おとこ そうですか。
太刀魚って、あんまり
パッとしないイメージが
あるんですよ。
あすま女 焼き魚でしか食べないですよね。
京おとこ そう。焼き魚で食べて
ちょっとぼんやりした
印象が強くて。
── あれ? 太刀魚感にずいぶん差が。
味も独特だし、すごく好きですよ。
京おとこ いいですか。
あすま女 太刀魚ね。キラキラ。
── どこで主に食べているのでしょう。
あすま女 地方性ってありますか、太刀魚。
── 全国じゃないかな。
あすま女 韓国の市場にも
いっぱい並んでいるのを
見た気がします。
── 骨が意外とすごいんですよね。
京おとこ ごついですよね。
あ! 思い出した。
ぼく一回喉に刺さったことがあって
それでイヤな思い出があるんですよ。
── ああ、それは痛い。
あすま女 太いんですよ。
── 取りやすいんですけどね。
うっかり食べたら危険です。
胃に入ったら
穴開いちゃうんじゃないか
っていうくらい。
太刀魚、気をつけましょう。
でも、うまいですよ。
京おとこ 泳いでいるところも
きっときれいでしょうね。
── 「体表には鱗がなく、
 その代わりに全身が銀色に輝く
 グアニン質の層で覆われている」と。
しかも「模造真珠の塗装に使われる」と。
セルロイドに練り込まれたりとかしてキラキラさせたり
マニキュアに入っていたりするそうです。
あすま女 鱗がないっていうのは
ちょっと意外でしたね。
鱗がない魚っているんですね。
── ぜひこの夏は太刀魚を!
そしてやさいは
「蚕豆(そらまめ)」です。


京おとこ おいしいですよね。
枝豆よりも蚕豆が好きです。
あすま女 わたしもそうです。
こどもの頃は逆だったのに。
── ちょっと臭みがあるからでしょうか。
ぼくは子供の頃から圧倒的に蚕豆派でした。
あの臭みがたまらんかったです。
京おとこ 茹でですか、焼きですか。
── 昔は、茹で、だけでしたね。
最近は焼きますね。
莢ごと焼いて黒こげにして
中を出すっていうのがいいですね。
あすま女 あれがおいしいですよね。
皮も食べられる。
京おとこ あと、内側についている
白いのいいですよね。
こそいで食べるの。
あすま女 ええっ!?
食べるんですか、
あのフワフワしているところ。
京おとこ わりと好きです(笑)。
あすま女 あらら、食べたことないです!
── ぼくも食べたことない。
京おとこ あ、そうですか(笑)。
あすま女 なんかエグそうな。
京おとこ いやいや。
── 全体、豆ですから
食えるんでしょうけど。
苦くないですか。
京おとこ 苦みも含めて
なんかいいかなと思って。
── そうなんだー。
あすま女 初めて聞いた。
京おとこ ぜひ一回試していただければ(笑)。
── 蜜柑でね、あのフワフワを
食べることはありますけど。
あすま女 あの筋みたいなの。
── あ、そう。
それは知らなかったなあ。
あすま女 ほんと、知らなかった(笑)。
京おとこ 何かの拍子で
店の人にすすめられて
こそいで食べたら
確かにこれイケるなと。
甘さと苦さがちょうどあって。
焼きの時だけかもしれないですが。
── そういえばテレビで
長寿遺伝子の研究の番組をやってて
イタリアだったかな、
どっかの長寿の村っていうのがあって
そこでは蚕豆の臭いをかぐと
気持ち悪くなる人がいるんです。
その人たちは長寿遺伝子を
持っているっていう
不思議な結果が出てました。
京おとこ へえー!
── だから、その村では蚕豆は
パックしないと売っちゃいけない。
気持ち悪くなっちゃうから。
サルディーニャ島だったかな。
といってこれが
アンチ長寿の食べ物ってわけじゃ
ないらしいんですけど。
あすま女 なぁるほど。
なんだろうね。
── 謎でしょ。
ところで蚕豆の粉で作った落雁は
鳩サブレの店で売っていて
けっこうおいしいですね。
あすま女 もしかして鳩の形してるの。
おいしいですよね。
── 「小鳩落雁」。
あすま女 味が濃いですね、豆の。
── そうです、そうです。
ちゃんと蚕豆の味がするんですよ。
そして、くだものです。
いよいよ出ましたよ。
「杏」ですよ。


あすま女 梅と時期が近いですね、やっぱり。
── 梅雨が始まってちょっとすると
杏の時期だね、ってなるんですよ。
杏はジャムがうまいですね。
これはジャム界の、王様?
あすま女 そうなんだー。
確かに生の杏はすっぱいですものね。
── 種を割ると白いのがあって、
これが「杏仁」です。
あんにんと読むと製菓材料、
きょうにんと読むと漢方薬でm
「咳止めや喘息」に用いられるらしいです。
あすま女 ことしは杏ジャムつくろうかな。
── それが! ことしは長野が冷害で不作だそうで、
例年の3割程度しか
出荷がないかもしれないんだそうです。
あすま女 あらっ!
── ほかの地域は大丈夫なのかな?
ともあれ例年より少ないので、
青果店でみかけたら、
迷わず買うことをおすすめします。
あすま女 そうしまーす。
── さて、季節のたのしみは、
竹が酔う日と書いて「竹酔日」(ちくすいじつ)。
あすま女 これもあんまり東京では聞かないかも‥‥?
── 奈良の大安寺で竹供養があるそうですよ。
「生活に密着してきた竹に感謝し、
 青竹を供養する」と。
「笹酒がふるまわれ、
 がん封じの効果があると
 いわれています」。
笹酒っていいですよね。
京おとこ 笹酒ね、うん。
── 笹というか竹の香りが。
あすま女 竹で飲むというのが風情がありますね。
── いいですよね。
この季節にぴったりな気がします。
ということでありがとうございました。
次回は「菖蒲華(あやめ はな さく)」。
6月26日にお会いしましょう。
2013-06-21-FRI
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