紅色の染料や食用油をとるために栽培されるベニバナは、 古代エジプト時代から染料として利用されていたようです。 日本でも、『万葉集』にすでに 「末摘花」としてその名が見られます。 この頃に橙色の花をつけはじめ、 日が経つにつれ花の色は濃い紅に変わります。 一面のベニバナ畑は夏の風物詩ともいえるでしょう。
── すすきの種と書いて「ぼうしゅ」。
あ、すすきじゃないんだ。
「のぎ」なんですね。
「イネ科植物の穂の先で、
 針のようにとがっている部分のこと。
 穀物の種まきや麦の刈入れ、
 稲の植えつけに適した時期とされました。
 一方で、そろそろ梅雨入りの報も
 聞かれる頃。
 雨空を見上げる日も増えてきます」と。
あすま女 そんな時期に蟷螂が。


── 生ず!
あすま女 蟷螂の卵、あの泡みたいなやつから‥‥。
── ぐわ~っと出てくる。
京おとこ 草むらでみつけるとちょっとね。
モワッとした気持ちになりますよね。
あすま女 蟷螂の卵だって知らないで
つかんじゃったことがあります。
── うわぁ~‥‥。
あすま女 なんだろう、この泡? みたいな。
── あわわわわ~~~。
京おとこ だいたい小学校の頃ね、
男の子が好きな女の子に
蟷螂つけたりするんですよね。
あすま女 ぺちゃっ! ってね(笑)。
そうそうそう。
── するする。
京おとこ カミキリムシよりは蟷螂でしょうね。
── 秋のうちに生みつけた卵が、初夏に、
って、あんがいサイクルが長いですね。
あすま女 そもそも蟷螂って
生まれたときから、蟷螂?
── 蜻蛉はね、ヤゴだったりしますからね。
京おとこ 蟷螂は最初からその姿ですよね。
あすま女 生まれた時から鎌がある?
京おとこ ええ。
── 蟷螂ってきれいですよね。
寄ってきても、まあ、いいかなって。
イヤじゃない。
あすま女 イヤじゃないです。確かに。
── 「蟷螂は一生の間に大量の小昆虫や、
 まれに蛙などまで捕食します」。
雌が雄を食べちゃうんですよね。
魔性の女のたとえです。
京おとこ 昔ありましたよね。
蟷螂‥‥って言われていた女性って
誰でしたっけ?
── 『かまきり夫人』!
五月みどりですよ。
京おとこ 五月みどりの映画がありましたよね。
あと、政治家の嫁かなんかで‥‥。
── それは「蜂の一刺し」で榎本三恵子。
京おとこ 蜂かー! あははは。
ひどいな、自分の記憶。
蟷螂とか蜂とかそのへんの。
あすま女 ロッキード事件の方ですよね。
京おとこ そうです、そうです(笑)。
── かまきり夫人は五月みどりです。
京おとこ 日活ロマンポルノですね。
── 1975年だそうです。
あすま女 へえー。
── 「ロマンポルノ」って名前が
すごいですね。発明ですよね。
あすま女 そうですよね。
── ロマンをつければソフトになる。
「熟女ヌードのさきがけとも言える」
とWikiに書かれています(笑)。
京おとこ でもその頃熟女といっても‥‥。
20代とか?
── 1975年で、彼女は1939年生まれ。
それなりですね。
今は熟女の低年齢化が進んでますけど。
京おとこ そうですよね。
── 当時は五月みどりさんは
ちゃんとした、「熟した」女性でいらっしゃった。
‥‥なんだか季節の感じから、
すっかり遠ざかりましたね。
梅雨どきっぽい話題にも、思えなくもありませんが。
京おとこ たまには食べ物以外の話題も
ふくらまさないと(笑)!
── そうなんですよ。
ツイートをいただきまして。
「食べ物の話題ばっかりだ」と。
まあ、いいじゃないですか。
食べ物で季節を感じるのです。
京おとこ そうです。旬の魚は
「真魚鰹(まながつお)」ですよ。
── 真魚鰹って鰹?
あすま女 ずいぶんかたちが違う気が。
── 鮃を縦にしたみたいな不思議なかたち。
ナポレオンフィッシュにちょっと似てます。
真魚鰹、これ西の海なんですね。
「紀州沖を限界として
 まれに伊勢湾に入ることはあっても
 東海へはめったに姿を現さない。
 西海に鮭なく東海に真魚鰹なしと言われる」。
名前だけは知っていましたね。
鰹というから赤身かと思ったら白身なんですね。
あすま女 どうやって食べるんですか。
── 「西京漬け、幽庵焼きなどの付け焼きに合う」
‥‥ということは
京おとこさんは馴染みがある?
京おとこ ちっさい頃から食べた覚えはあります。
確かに味つけして
焼くイメージがありますよ。
── やっぱりそうですか。
あんまりシンプルな
感じじゃないんですね。
そして旬の野菜。
「茗荷」でございます。
あすま女 茗荷いいですよね~。
京おとこ 茗荷ね!


あすま女 茗荷は常備しておりますよ。
京おとこ 茗荷、ぼくも好きですね。
あすま女 このまんま食べますもん。
味噌つけて。
京おとこ あ、そのまんま!?
あすま女 はい(笑)。
── 刻んで冷や奴にかけてもおいしいし、
味噌汁にしてもおいしいし、
漬け物にしてもうまいですね。
京おとこ 素麺もね。
── あ、素麺の薬味もいいですね。
「夏!」って感じがしますよね。
からだ冷やすんですかね。
あすま女 物忘れするから食べちゃいかん!
って言われましたよね、昔。
── そうだった!
茗荷を食べると忘れっぽくなる‥‥。
あすま女 そうそうそう。
── 団栗食べると、どもると言われました。
京おとこ あ、言われましたね。
あすま女 へえー。
京おとこ でも昔はね、それこそ
縄文時代くらいから
団栗食ってたんですけどね。
── そう。昔は主食なみに食ってるから
いずれにしても迷信ですね。
あすま女 仏教と関係ある?
── はい、そんな感じです。
「通説。釈尊の弟子に周梨槃特という聖者があり、
 生まれつき物覚えが悪く
 時に自分の名まで忘れるので
 彼は釈尊の名を大書きし
 身につけるようにと与えたところ、
 それを常に背負って歩いた。
 やがて世を去ったが
 その墓所にみも知らぬ草が生えたのを
 彼が名を背に負うて歩いたのにちなみ、
 茗荷と名付けた」。
名を背負う!
自分の名前すらも忘れちゃう
釈尊の弟子が。
シャクソン・ファイブ。
京おとこ 瀬戸内シャクソン。
あすま女 こらこらこら。すぐだじゃれを言う。
── それがこの野菜と何の関係が?
墓所に生えたと。それだけ‥‥。
だからまったく
関係がないといえばない。
あすま女 だからこの字なんですね。
茗荷の「が」って荷物の「に」だから。
── 東京に茗荷谷という素敵な地名がありますね。
茗荷が生えてるんですか。
昔はあったんですかね。
あすま女 生えてたんでしょうね。
── 早稲田に早稲の田んぼがあったように。
千駄ケ谷では日々千駄の茅を刈り取ったように。
あすま女 そうです、そうです。
── じゃあ、江戸っ子はあのへんで
採れた茗荷を食べていたんですね、
きっと。
茗荷には胃を健康にする働きがあるそうです。
いいですね。
だから薬味にいいのか。
京おとこ そう、夏場にね。
── 食欲が減退した時に
いいかもしれないですね。
メキシコ育ちのもと同僚が
茗荷だけは意味がわからないと言って
食しません。
あすま女 やっぱり口に慣れないですか。
── 「不思議な味がする」と。
京おとこ 逆にニューヨークに
住んでいる日本の人は
「茗荷に困る」っていうのを
聞いたことがありますね。
あすま女 茗荷ほしくなるでしょうね!
京おとこ 日本人が住んでいるところでも
少ないという。
── ロックシンガーの遠藤賢司さんが
お庭で茗荷を育てているのを
鈴木慶一さん経由で頂いたことがあります。
一同 ははははは。
── 太ったおいしい茗荷でした。
さて、次はお花。
「紫陽花」です。
あすま女 あら、いいですね。
梅雨時ですからね。
── 水が好きですよね。
これって、花っていうけど、
萼でしたっけ。
萼の部分が色が変わるので
花に見えるという。
大変きれいな。
京おとこ 偏見かもしれないですけど、
おばさんはだいたい紫陽花好きっていう
イメージがあるんですけど(笑)、
気のせいですかね。
あすま女 おばさんになると好きになる?
そうかも。
── そうかもしれない。
紫陽花、いまいちこどもの時は。
京おとこ 良さがわからないじゃないですか。
あすま女 わかんない。
── 紫陽花は「土壌のpHによって花の色が変わる」そうですよ。


あすま女 聞きますね、それ。
── 「酸性なら青、アルカリ性なら赤」。
リトマス試験紙みたいな萼なんですね。
あすま女 なぜか蝸牛がいますよね、葉っぱに。
── 季節だからですかね。
京おとこ 京都だと三室戸寺っていう
宇治にあるお寺なんですけど、
最近はライトアップしているらしいです。
あすま女 紫陽花のライトアップ。
京おとこ きれいなのかなあ。
あすま女 夜に見る感じしないですけどね。
京おとこ あんまりしないですよね。
暗いところで
青っぽい紫色の花を見るって
なんかこう‥‥。
あすま女 熟女好みなのかしら(笑)。
京おとこ その趣味が渋いですよね。
1万株もの紫陽花が。
── あ、そんなにあるんですか。
あすま女 関東では鎌倉ですかね。
── 「紫陽花寺」で調べましたら
全国津々浦々に山ほどあることがわかりました。
鎌倉は明月院。
紫陽花が観光の対象になったのは
第二次世界大戦以後のことらしいです。
それまでは一般的なお庭の花だったんですね。
なぜ寺にいっぱい生やしているかというと、
紫陽花の咲く頃は気温の変化が激しくて、
むかしは多くの死者が出たんだそうです。
だから、お葬式のための花として
お寺で育てたんだそうですよ。
なんと、悲しい歴史が。
京おとこ そう考えるとあの色、
仏事でもオッケーですもんね。
── 湿気は、不衛生な時代は、ものが腐り、人も‥‥。
先日、カッパというあだ名の福田利之さんという
イラストレーターさんが
湿気が多いからとても寝やすいと仰ってました。
あすま女 さすがカッパさま(笑)。
── 「お肌潤う」って。
京おとこ 個人差があるでしょうね。
湿気の反応については。
── バリ島とかに雨期に行くと悪くないですよね。
あのもわっとした湿気、素敵です。
あすま女 たしかにお肌には良さそう。
── 湿気が悪いと言いながら
季節のたのしみは「薬降る」です。
「陰暦五月五日(現行暦でだいたい六月上旬)に
 雨が降ることを『薬降る』という」と。
「この日を『薬日』と呼ぶ」んですね
「竹の節にたまった雨水は神水で、
 これを飲むと薬効があるといわれた」
ということです。へえー。
あすま女 うんうん。
── 「この日は悪魔が降りてくる日ともいわれ、
 厄除けに麝香や丁字などを入れた」
‥‥ずいぶん中国っぽいですね。
「薬玉を吊したり、
 野山で薬草をとったりしました」。
「中国では陰暦五月を『悪月』と呼んでいました。
 邪気を祓うとされる菖蒲や
 厄除け効果がある蓬が、
 端午の節句に登場するのもそのためです」と。
あすま女 なるほど。
全体に香料も殺菌っぽいですね。
においもね。
── そうですね。法隆寺の宝物殿には
丁子があったといいますものね。
やっぱり全般的に
この湿気が悪さをするので
それを退治するものが好まれた。
茗荷もそうですもんね。
ということで、ありがとうございました。
次回は「腐草為蛍(くされたる くさ ほたると なる)」。
6月10日にお会いしましょう。
2013-06-05-WED
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