くらしのこよみ 「ほぼ日」ver.
七十二の季節と旬をたのしむ歳時記

日本には72もの季節があるって、ご存じでした?
春夏秋冬が「四季」。
立春や夏至、秋分に大寒などが「二十四節気」。
ここまでは日常的に使われるのですけれど、
さらにこまかく分けたものを「七十二候」って言うんです。
365÷72‥‥ということはつまり、
季節ってだいたい5日にいちどめぐってくるんだ!
そんなこまやかな日本の季節感を、いっしょに味わうコンテンツ。
ナビゲーターは「あずま女に京おとこ」のコンビです。
四季【秋 あき】二十四節気【立秋 りっしゅう】西暦【2012年8月7日~8月11日】
七十二候【第三十七候 涼風至 すずかぜいたる】立秋を過ぎ、お盆を迎える時期になると、熱風の中にふと秋の気配を感じることがあります。まぶしいほどに輝いていた太陽も心なしか日射しを和らげ、日が落ちると草むらから虫たちの涼しげな音色が聞こえてきます。真夏日や熱帯夜が続き、
暑さは今がたけなわですが、季節は少しずつ、しかし確実に進んでいます。


── カナカナ。かなしいカナカナ。
これが鳴くともう
夏休みが終わるぅーって。
あずま女 お盆直前ですね。
京おとこ 小学校時代とか
ほんとうに蝉毎日とってましたよね。
アブラゼミとか。
あずま女 それは日本国中、
変わらぬことですよね。
イギリスでは蝉とるのかしら‥‥。
京おとこ 旬の魚は「いなだ」。
これぼくね、最初、
何かわかんなかったんですよ。
はまちか? って。
あずま女 鰤(ぶり)、はまち、いなだ。
魚の名前はむずかしいですよね。
同じ名前でも関西と関東で
呼び名が違うものもありますし。
金沢では「いなだ」っていうのは
塩漬けして天日干ししたものなんだそうです。
冬の魚だけど、夏に食べる。
── 旬の野菜は「冬瓜(とうがん)」です。
これは夏の印象がありますね。
京おとこ あります!
── なんで冬の名前がついているんでしょう。
あずま女 切らずに冷暗所で保存すれば
冬までもつので、
名前に冬の文字がついたのだそうです。
── 瓜系のものってもつんですよね。
年末の大掃除で西瓜が出てきたことがあって。
糸井事務所で‥‥。
あずま女 しょぼしょぼになってましたか?
── いや、パンパンで新鮮そのもの!
もう見るからに「今、採れました」。
当時いたスタッフが、
これは食えるって言うんですよ。
きっと昔は舟に持ってって
こうやって食ったんだって。
長持ちするはずだって。
京おとこ 保存食として?
あずま女 さもありなん。
── 西瓜だって腐るよ、という意見と、
みるからに腐ってないだろうという意見が割れて。
切ってみましたら、
無味無臭、透明の水が
サァーーって流れました。
その水は、飲めそうなくらいでした。
皮の内側がすごく薄くなってて!
赤い部分はフェルト状にぺったんこに。
あずま女 砂漠の国に行くと
たくさん瓜類作ってますけど、
お水がわりだと言いますものね。
── 冬瓜も96%水分。
おいしいですよね。
あずま女 おいしいですよね。
こればかりは関東も濃くは煮ないですよね。
醤油で色をつけない。
なんか、京都な感じしますもんね。
あっさりした。
京おとこ あんかけみたいな食べ方しました。
生姜のせてね。
あずま女 そういえばうちは中華風に食べました、よく。
とろみをつけたホタテあんと、生姜で。
とういうのはおそらく父母が
関西風の薄味の味付けを習慣にしていなかったので
中華風の塩のホタテあんにしたんだと思います。
京おとこ この時期よく食べましたよ。
あ、あとそうだ。
この時期食べるもので関東にないのが
「ウオゾーメン」。
一同 なんですか!?
京おとこ ウオゾーメン知らないですか?
ちょっとググッってくださいよ!
魚のすり身を素麺状にして
それにだしをつけて食べるんですよ。
── おいしそー。
あずま女 細切りにしたかまぼこみたいな感じですか?
イメージとしては。
京おとこ わさびつけて食べるんですよ。
知らないんですか!
あずま女 九州の「おきゅうと」と同じくらい異質な感じ。
京おとこ 冬瓜の煮物と
一緒に食べるイメージです。
なんとなくこの時期に
よく食べるんですよ。
さっぱりしていて。
あずま女 ググりました。
「魚そうめん」ってありましたよ。
京おとこ うちのほうでは「ウオゾーメン」です。
あずま女 鱧(はも)のすり身って書いてあります。
京おとこ あ、そうでしょ。
鱧でしょうね。
── 鱧のあたりがもう京都っぽいー!
あずま女 子どもの頃、
鱧は見たことありませんでした。
京料理の店でしかそもそも食べないですし。
京おとこ ぜひお試しください。
あずま女 東京で買えるのかしら。
京おとこ そういえば見ないですね。
京都にいらっしゃったら
「茨木屋」っていう
有名なかまぼこ屋がおすすめです。
わさびとタレみたいなおつゆみたいなのが付いてて、
それをちょんちょんとこうつけて
ツルツルっと食べるんです。
なぜか白と緑なんですよ。
時々ピンクもありますよ。
あずま女 すごいですねえ!
── ひやむぎとか素麺に
1本、ピンクや‥‥。
京おとこ ありましたよ!
あの当たり感がいいですよね。
── あれでワカメちゃんとカツオくんが
大げんかするんですよ。
あ、話題がそれました。
季節のたのしみとして
「地蔵盆」があるんですが、
これって‥‥?
あずま女 地蔵盆こそ関西の風習ですよね。
京おとこ 地蔵盆!
もうテンション上がりますよ!!
── これ今、
スルーしようかと思ってたのに。
京おとこ 何をおっしゃいますか。
夏休み最大のイベントですっ!
── えええええー!
京おとこ 子どものお祭りです。
地蔵盆が終わると
もう新学期が来ちゃうんです。
夏休みの宿題しないと
大変なことになっちゃうんです。
町内でやるんですよ、地蔵盆。
大人も子どももみんな集まってくるので
この地蔵盆を通じて
いろんな学年とか年代とかが交流するんです。
お地蔵さんを敬って
お参りしてお掃除したりするんです。
「数珠回し」っていうのがメインイベント。
巨大な数珠を念仏に合わせて回すんです。


あずま女 仏事ですものね。
京都に夏に行くと、
おもちゃ屋さんのところに、
「地蔵盆、景品あります」って
書いてあるんですよ。
── 景品? じゃあ、これはクリスマスと一緒?
京おとこ 夜、映画上映とかもあります。
あずま女 何歳まで参加できるんですか。
京おとこ だいたい小学生です。
保護者がまじって
映画見たりとかしますけどね。
── 中学生行くともう?
京おとこ うんー。あんまり参加しないかな。
あずま女 うらやましいですね。
子どものためのイベントって
なかなかないですものね。
── おこづかいはもらえないんですか?
お年玉みたいな。
京おとこ くじびき止まりですねえ。
あと菓子配り。
呼ぶ専門の子どもが決められて
鐘を鳴らして町内を呼ぶんですよ。
「くじびき始まりますよ~」とか、
「数珠回し始まりますよー」とか。
── 今、標準語で言ったけど
ほんとうは違うでしょう。
京おとこ 頭が京都脳にならないと出てこないんです。
あずま女 でも大人はけっこうな出費ですよね。
京おとこ 町内会が費用をもつんですよ。
あずま女 なるほど!
── この文化、静岡には伝わってないです。
京おとこ たぶん、京都だけやと思いますよ。
あずま女 あと、江戸の町は子どもが少なかったのかな。
独身男性の比率が異常に高かったらしいので。
── そういう背景もあるんですね。
あずま女 しかも、お盆の時期が違いますよね。
東京は新暦に合わせて7月ですから。
京おとこ 「地蔵盆」はものすご、切ないですよ、もう。
── この切なさは、京都の子しか
わからないんですね。
ありがとうございました。
次回は「蒙霧升降(ふかききりまとう)」。
8月17日にお会いしましょう。
2012-08-12-SUN

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