木村くんは、そういうとこあるよね。 木村くんは、そういうとこあるよね。
木村拓哉さんと糸井重里は、
かなり以前から、もう、25年くらい前から
おつき合いがあるのです。
じつは創刊当初のほぼ日のオフィスにも
ときどきこっそり遊びに来ていたり。
そんなふたりが、久しぶりに会いました。

木村拓哉さんがMCを務める
ラジオ番組「Flow」のマンスリーゲストに
糸井が呼ばれたのです。
久々に会っても自然体なふたりが
たっぷり話した約2時間。
放送されなかったトークも含めて、
だいたいぜんぶを文字にしました。
第2回 サイン色紙と雪のホーム。
写真
木村
糸井さんとの
最初の接点がなんだったかというと、
糸井さんの娘さんが、ぼくらのファンで。
糸井
そう、SMAPのファンでね。
木村
そんで友だちと一緒に
東京ドームだったりとかに来てくださって。
糸井
最初はもっと前だね。
まだドームでできない時代。
「武道館5回まわし」とかやってたころ。
木村
そうですね(笑)。
ひどいときは、「武道館6回まわし」。
糸井
「6回まわし」(笑)!
信じられないよ、ほんとに。
木村
1回目の開演時間が、9時45分。
糸井
はははははは!
木村
学校か、っていう。
糸井
朝から(笑)。
木村
9時45分に1回目の幕上がります、
って言われたのを憶えてますね。
糸井
すごいなー。
木村
そういうときから来てくれていて。
それで「どうも」って、
楽屋であいさつさせていただいて、
それからですよね。
糸井
そのまえにちょっとあってね。
まず、娘が、SMAPが好きだ、
木村拓哉が好きなんだ、
って言ってるのを聞いたんだけど、
その頃ぼくは娘になかなか会えない
複雑な時期だったんで、
なんか、じぶんが彼女の応援団だよ、
っていうことを伝えたかったんですよ。
木村
うん。
写真
糸井
で、なんとか木村拓哉という人と
接点が持てないかなと思ってたとき、
フジテレビの朝の番組で
「ウゴウゴ・ルーガ」ってあったでしょ?
あれに出てくれって友だちから言われて出て、
そこでなんでもいいから
「糸井さんからの伝言です」っていうのを
言わなきゃいけないってことになって、
「誰かこのテレビを観てる人で
木村拓哉くんに親しい人はいませんか?」
って呼びかけたんだよ。
木村
はい(笑)。
糸井
で、その直接の反応はなかったんだけど、
それが朝放送されて、その日の夜、
テレビのクイズ番組の収録で
スタジオに行ったら、
隣に木村くんが座ってるんだよ!
木村
ああー、はいはいはい。
平成教育委員会ですね。
糸井
そうそう、平成教育委員会。
で、きみが木村くんか、と思って、
「ごめん、あとでサインくれる?」
って急に言ったの、番組の最中に(笑)。
木村
はい(笑)。
シブスタかなんかで撮ってたやつだ。
糸井
あー、そうそう。記憶力いいね。
で、なんていうか、同じ若い子でもさ、
話がすごくわかって通じる子っているんだよ。
で、木村くんについてはすぐに
この子はしゃべれるなぁと思って、
合間の、はい、テープチェンジです、
みたいなときに、ちょっとしゃべったんですよ。
そしたらあとで楽屋にサインしたのを、
色紙を持ってきてくれたりして
なんていいやつなんだ‥‥!
と思ったのが、最初のきっかけで。
木村
あー、そうでしたか。
糸井
この話には続きがあってね。
うちの娘は学校の行事でスキー場に行って、
そこで熱を出しちゃったわけ。
で、帰らなきゃいけないんだけど、
帰りたくないって言ってる。
じゃあ俺が迎えに行くわってことになって、
木村拓哉の色紙を持って
スキー場に迎えに行くんだよ。
ちょっと、ほろりとするだろう?
木村
「するだろう?」って(笑)。
糸井
で、志賀高原かなんかの駅で待ってたら、
子どもが、熱があるから
真っ赤な顔してやって来て、
「これ、ほら見ろ、
 木村拓哉の色紙だぞ」って言って、
電車に乗せて、座らせて、
「ちょっと俺はジュース買ってくるから」
って言って、
出発直前にジュース買いに行ったら、
その熱のある子どもと木村拓哉の色紙が、
出発しちゃったのよ。
俺はホームに取り残されて‥‥。
木村
はははははは!
糸井
真っ赤な顔した子どもが雪の中へ、
ドットン、ドットン、行っちゃったんだよ。
もう、大変だったねー、あれは。
木村
すごいですねー(笑)。
いま、映像になってましたよ、頭の中で。
写真
糸井
それで、駅員さんが、
「娘さんが次の駅で降りるように
車掌に言っておきますから」
みたいな連絡取ってくれて、
で、だいぶ時間あるんだけど、
次の電車を待って乗って。
木村
はい(笑)。
糸井
で、行ったら、ホームに、
荷物を抱えて赤い顔した子どもが、
こう、ぼーっと立ってて‥‥。
ごめん、悪かった‥‥。
ジュースを買いに行って
乗り遅れて悪かった、って。
という一連の騒動をぜんぶまとめて、
木村拓哉なんだよ、俺にとっては!
木村
ああー(笑)、
よかったわ、なんか俺、
思い出の一部になってる。
糸井
そう、すごくかっこいいんですよ。
木村
ありがとうございます。
なんか、うれしいです(笑)。
糸井
なんていうの、
親子の物語の中の、いい役ですよ、
鞍馬天狗みたいなもんですよ。
古いなー、言うことが。
木村
‥‥そうっすね。
たぶんいま、ラジオの前のみなさんは、
「くらまてんぐ?」って、
一瞬頭にクエスチョンが浮かんだと思います。
糸井
俺もなんか、
わざと古いふりしたんじゃないか、
っていうぐらい古いの言ったね。
木村
そうですね。
ぼくも、うわ、って思いましたね。
糸井
月光仮面くらいにしておけばよかったね。
(つづきます!)
2019-09-02-MON