アメリカに暮らし、
世界じゅうを旅した子ども時代、
モデル、俳優、音楽活動を経て、
全国に6店舗を展開する人気ブランド
「ハウス オブ ロータス」の
クリエイティブディレクターを務める。

桐島かれんさんの多彩な活動には
そのたびに多くの注目が集まります。

糸井重里とは古くからの友人でもあります。

桐島さんの歩みはマイペースに見えますが、
現在の活動の根底には、
世界を巡って得た「時間の遺産」に対する発見と
静かな意志がありました。

桐島さんの「ハウス オブ ロータス」は、
2019年4月17日から21日まで東京・丸の内で開く
「生活のたのしみ展」にも参加します。

特別ですてきなものが、たくさん並びますよ。

第4回

「桐島にだって、

漢字の名前があるんだ」

糸井
かれんさんの手でひょいとすくわれた世界のものが、
「生活のたのしみ展」に来てくれるというだけで、
すごくうれしいです。
「生活のたのしみ展」に並ぶのは、洋服が中心ですか?
桐島
いいえ、小物も充実させました。
ベトナムのPPバンドという、
プラスチックのテープで編んだ
バスケットもあります。
今回はそれをチェック柄にしたんですが、
糸井さん、ベトナムには
いらっしゃったことありますか? 
ものすごいバイク文化で、
道を渡るのもたいへんなんです。

糸井
はい、知ってます。
横断歩道がなくてね。
桐島
このプラスチックバッグは、
バイクにひっかけて荷物を運んだりするのに便利で、
みなさん日用品として使ってるんですよ。
お野菜つんだり、新聞紙入れたりして。
糸井
ということは、丈夫なんだね。
桐島
すごく丈夫です。
濡れても大丈夫だし、何年も使える。
このバッグ、昔から「ハウス オブ ロータス」には
ある商品なんですけど、
今回はワンピースとおそろいにして、
何色かで展開していきます。
糸井
「生活のたのしみ展」は5日間だから、
うかうかしていると好きな色がなくなっちゃうね。
桐島
お店でもいつも人気ですよ。
ピクニックにもいいし、ビーチにもいいし、
収納にもいい。
ワンピースとそろえて、ぜひ。

私たち、洋服はけっこう
インドでつくってるんですが、
このワンピースもインドでつくりました。
もともとブロックプリントという
手押しのプリントにしていたものを、
今回はスクリーンプリントという手法にして。
糸井
家でも着られるし、外にも出かけていける。
いいワンピースだね。
桐島
着心地もいいですよ。
糸井
気楽だし、かわいい。
桐島
コットンなので、
夏のバカンスにもぴったりです。
それから、これはいわゆるスリッパなんですけれど、
ベトナムの市場で売ってるようなビーズサンダルで、
外でも履いていただけるものなんですよ。

糸井
水気も大丈夫?
桐島
プラスチックが貼ってあるので大丈夫です。
アジアの雑貨のいいところは、
お値段がかわいいので、
気軽に暮らしへ取り入れられること。
彩りを添えてくれます。

もうひとつ、おすすめなのは、
ミラーワークパンツ。
もう、これはみなさんに見逃さないでほしい。
糸井
ミラーってことは、鏡なの? 

桐島
ミラーワークといって、
ガラス素材を使った刺繍ものです。
これもインドでつくってるんですが、
インドはテキスタイルや手仕事が
すばらしいんですよ。
私はこういった、
インドの刺繍や加工のテクニックが
すごく好きなんです。

ミラーワークは、
ガラスを手で割り、丸い形にして、
手でかがっていく技術です。
グジャラート地方やラジャスターン地方の
独特の刺繍で、魔除けの意味があるそうです。
糸井
はぁぁ、すごいね。
桐島
乾燥した灼熱の砂漠地方で
けものや悪を反射して邪気をはねのける、
という意味なんでしょうね。
民族衣装やタペストリーなどの生活用品に
この加工は取り入れられています。
糸井
これもお店に並ぶの?
桐島
「生活のたのしみ展」に出るのはおすすめの、
パンツの裾にミラーワークが
あしらってあるパンツです。
ほぼ日
そのミラーワークパンツは、
ほぼ日の社内で「かわいい!」と人気が高くて
どうしても、と桐島さんにお願いしました。
桐島
このミラーワークの技術も手間がかかるものですし、
いずれなくなるかな、という感じです。
糸井
献上品は残るけど、
生活に根づいた民族のものとしては、
なかなか受け継がれていかないんだろうなぁ。
桐島
ところが、インドという国は、
いまだにほとんどの人が
民族衣装のサリーを着ています。
日本人はみんな着物を脱いでしまいましたし、
アジアを見渡しても、
民族衣装を日常で着ている民衆はほとんどいません。

でもインドは、都会のデリー以外は
ほとんどの女性がサリーを着ているから、
こういった伝統技法が残っているという
おもしろさがあるんです。
糸井
こんな服を
工場でつくるわけにいかないもんね。
桐島
たしかに大量生産の工場ではつくれないですね。
糸井
ねぇ。
桐島
服としては「ガラスが入ってるから危ない」とかで、
いろんな流通のルールにもひっかかるでしょう。
手染めだと色落ちするし、堅牢度の問題もある。
工場で市場の製品としてつくるのとは、
やっぱり違うんです。
でも、自分のお店や「生活のたのしみ展」だと、
そのあたりはきちんと説明をして、
コミュニケーションをとりながら、
いわば「ほんもの」を販売できます。
糸井
うん。きちんと伝わるところで販売するのが大事だね。
かれんさんのお店には、
キッチュでユニークなものもあるけど、
ほんとうに「質がいいなぁ!」というものもある。
縦糸と横糸のバランスがすごいと思うんです。
桐島
ありがとうございます。
糸井
お店の「ハウス オブ ロータス」という
名前なんだけど、
なんでああいう名前に?
桐島
日本の小学校に通っていた1年生のとき、
「自分の名前を漢字で書いてみましょう」
と先生が突然に言った日があったんです。

私の名前には漢字がありませんから、
当然、戸惑いました。
まだ1年生ということもあって、
日ごろは「きりしまかれん」と
ひらがなで書いていましたし。
当時、ひらがなの名前はめずらしくて、
しかも「かれん」ですから、
「桐島の名前には漢字がないし、かれんなんて変!」
と言われながらクラスメイトにからかわれて。
みんなに笑われて、
さすがに居心地が悪くなってきたそのとき、
担任の前田先生が、
「桐島の名前にだって漢字はあるんだ」といって、
黒板に「花蓮」って書いてくれたんです。
花に蓮。

「あ、私の名前にも漢字があるんだ」

そのときの先生の書いた漢字が、
それからもずっと頭にありました。
たぶん先生は、
いつもうっすらからかわれている私を
守ってくれたんだと思います。

その守ってくれた字がずっと頭にあって、
お店の名前をつけるときにも、
「あ、蓮だな」と思いました。

糸井
だから、花蓮の家で、
「ハウス オブ ロータス」。
桐島
そうです。

蓮は、アジアの仏教の象徴的なお花だし、
大好きだったということもあって、
お店の名をそこからもらいました。
糸井
泥の中からあんなにきれいな花が
咲くんだもんなぁ。
桐島
そうです。あんな清らかな花が。
“May I live like the lotus at ease
in the muddy water”
という好きな言葉があります。
泥水の中であっても、蓮のように、
清らかに、優雅に、ゆるりと寛いで生きていきたい、
といったような意味です。
糸井
世界じゅうで咲いた、
「自分たちのためにつくった」清らかな花が
並ぶお店、という意味もあると思う。
それはちょっと人を惚れさせる店だと思うよ、
やっぱり。
桐島
(笑)
糸井
いまはまだ、ちょっと寒い時期だから
よけいそうだったのかもしれないけど、
この部屋のドア開けたとき、
このワンピース姿のかれんさんがいて、
あ、お花だ、という気持ちになりました。
いや、ほんとうに。

(明日につづきます)

第4回 生活のたのしみ展

東京・丸の内

2019年にはラグビーワールドカップ、
2020年にはオリンピックとパラリンピックが、
東京で開かれます。

「世界」が東京にやってこようとするこのときに、
東京の玄関、丸の内で「東京と世界」をテーマにした
「生活のたのしみ展」を開きます。

「生活のたのしみ展」は、
ほぼ日が主催する期間限定のフェスティバルです。

よりすぐりの品が買えるだけでなく、
ワークショップやイベントも日々開催。

ちょっと立ち寄って、
のぞいてまわるだけでもたのしい催しです。

桐島かれんさんの「ハウス オブ ロータス」も、
このために制作をすすめたワンピースやシャツ、
バッグ、シューズ、小物類をはじめ、
世界各地で集めたすてきなものをたくさんそろえて
出展してくださいます。

世界のわくわくするものを東京に、
日本じゅうの魅力を世界の人びとに。

ぶらぶら見て買って食べておしゃべりして、
まざりあって遊ぶ5日間です。

みなさま、ぜひいらしてください

第4回 生活のたのしみ展

東京・丸の内

テーマ:東京と世界

2019年4月17日(水)~21日(日)

午前11時~20時
(丸の内仲通りのみ〜19時)

生活のたのしみ展について最新情報を見る

写真・濱田英明

桐島かれんさんの

ハウス オブ ロータス

ハウス オブ ロータスは、桐島かれんさんが、
さまざまな国を巡ってつちかった美意識や哲学を
「よそおう」「くらす」「もてなす」の3つの切り口で
表現していくライフクラフトブランドです。

青山、二子玉川、阪急うめだなど
全国に6店舗を展開。

オンラインショップもあります。

ハウス オブ ロータスWEBサイトへ