アメリカに暮らし、
世界じゅうを旅した子ども時代、
モデル、俳優、音楽活動を経て、
全国に6店舗を展開する人気ブランド
「ハウス オブ ロータス」の
クリエイティブディレクターを務める。

桐島かれんさんの多彩な活動には
そのたびに多くの注目が集まります。

糸井重里とは古くからの友人でもあります。

桐島さんの歩みはマイペースに見えますが、
現在の活動の根底には、
世界を巡って得た「時間の遺産」に対する発見と
静かな意志がありました。

桐島さんの「ハウス オブ ロータス」は、
2019年4月17日から21日まで東京・丸の内で開く
「生活のたのしみ展」にも参加します。

特別ですてきなものが、たくさん並びますよ。

第3回

すばらしいものは、

消えていくけれども。

糸井
「ハウス オブ ロータス」の店舗には、
じっさいにかれんさんがいることはあるの?
桐島
私はいま、基本的には
店に立たないんです。
自宅で店を開いていた頃は、
朝行って、お掃除して、お花を飾って、
お客さまをお迎えするところまでを
やっていました。
糸井
ちいさいときから旅してるから、
新しいものや古くからある技を見つけて
「ああ、これを暮らしに入れたい」と思う。
そのかれんさんの頭の中が
そのままお店になってるんだね。
桐島
そうなんでしょうね。
旅をつづけていくと、
いろんなものが消えてなくなっていくのが、
肌でわかるんです。

「あれ? 去年までここで
つくられていたものがない!」
なんてことはしょっちゅうです。

例えば、今日もここに持ってきているんですが、
このバッグもあまり見かけなくなりました。
ベトナムのもので、水草で編まれたバッグです。
15年ぐらい前までは、ベトナムでは
市場で卵を買っても、なにを買っても、
これに入れてくれました。

桐島
自分でお店をはじめたときに、
ベトナムの市場を真似て、うちもこれを
ショッパー(お買いものぶくろ)にしようと
思いつきました。
当時、無料でもらえるこのバッグをめあてに
ご来店してくださるお客さまも
たくさんいらっしゃいました。
いまはベトナムでもお買いものぶくろは
ビニールになってしまったし、
さすがにうちでもショッパーは紙袋に。
水草バッグは根強い人気なので
商品として取り扱っています。
糸井
手編みだし、手がかかってるし、
日本じゃありえないけど。
桐島
でも、そんなギャップがおもしろくて。
日本ではコンビニでも当然ビニール袋なのに、
飛行機に乗って7時間で着くベトナムでは、
こんな手づくりのものがふつうに
生活の中に存在している。
そのことが不思議でした。
糸井
その空気ごと、
お店に持ち込もうとしたんですね。

世界には、
「自分たちが使うものを、必要だからつくる」
という順でできあがったものが、
身のまわりにたくさんありますよね。
桐島
ええ。
糸井
自分たちが使うためにつくるわけだから、
機能的にもいいものです。
でもだんだん、
成り立ちを知らない人が使うものになったり、
流行になったりすると、
その「もの」が持っていた軸が
ずれてきちゃうことがありますよね。
桐島
ありますね。
南のものはまだ手軽だけど、
とんでもない値段がついたりして、
違う存在になっていくものもあります。
糸井
例えば北欧だとかはどうでしょう。
そっちも行くんですか?
桐島
北欧は、買いつけでは行かないです。
糸井
買いつけはしなくても、
旅では行ってますよね。
桐島
行きます。
北欧のものもとても魅力的ですね。

でも‥‥私はほんとうに、
生活の中で育まれた、
民具や生活雑貨や衣装が好きなんです。
そこにすばらしいものが、ほんとうに多くって。

糸井
うん、うん。
桐島
例えばモン族など、
たくさんの少数民族が、
国境をまたいで
アジアのいろんなところに住んでいます。
その人たちの衣装には、
緻密ですばらしい刺繍が施してあります。

一方、ヨーロッパの刺繍の技術も、
もちろんすばらしいです。
でも、ヨーロッパで叶えられている精密な刺繍って、
ほとんどが貴族のためのものです。
労働者が雇われて、
からだを壊しながら刺繍したものが残り、
その高い技術が受け継がれています。

お金と権力があって、
美しいものがつくられるのは当たり前です。
それで生まれる文化もあります。

けれども、ふつうの暮らしの中から
生まれた美しさには、また違う輝きがあります。
アジアの少数民族の刺繍は、例えば
母が娘のために刺繍したものだったりして。
糸井
嫁に行く前につくってく、みたいなこと。

桐島
そうです。
私はそういった、生活からうまれる芸術が
すごく好きです。
彼らが編んだ暮らしのためのカゴも、
すこし離れたところにいる私には
アートピースのように輝いて見えます。
それは、さきほど言ったように、
急速な成長のおかげで
日本がなくしてしまったものだから。

でも、日本だけではありません。
遅かれ早かれ、どうしても、
それらはいずれ消え失せてしまうものなんです。
ごくふつうに暮らしのなかにあるものだから、
それが時間の経過とともに消えてしまうのは、
しかたがないと思っています。
糸井
緩急あっても
巻き戻せないから。
桐島
ええ。
いずれ消えてしまうかもしれない
それらをすくい取って、
生活に取り入れて愛でるというか‥‥、
私のやっていることは、
そんなことじゃないかなと思います。

(明日につづきます)

第4回 生活のたのしみ展

東京・丸の内

2019年にはラグビーワールドカップ、
2020年にはオリンピックとパラリンピックが、
東京で開かれます。

「世界」が東京にやってこようとするこのときに、
東京の玄関、丸の内で「東京と世界」をテーマにした
「生活のたのしみ展」を開きます。

「生活のたのしみ展」は、
ほぼ日が主催する期間限定のフェスティバルです。

よりすぐりの品が買えるだけでなく、
ワークショップやイベントも日々開催。

ちょっと立ち寄って、
のぞいてまわるだけでもたのしい催しです。

桐島かれんさんの「ハウス オブ ロータス」も、
このために制作をすすめたワンピースやシャツ、
バッグ、シューズ、小物類をはじめ、
世界各地で集めたすてきなものをたくさんそろえて
出展してくださいます。

世界のわくわくするものを東京に、
日本じゅうの魅力を世界の人びとに。

ぶらぶら見て買って食べておしゃべりして、
まざりあって遊ぶ5日間です。

みなさま、ぜひいらしてください

第4回 生活のたのしみ展

東京・丸の内

テーマ:東京と世界

2019年4月17日(水)~21日(日)

午前11時~20時
(丸の内仲通りのみ〜19時)

生活のたのしみ展について最新情報を見る

写真・濱田英明

桐島かれんさんの

ハウス オブ ロータス

ハウス オブ ロータスは、桐島かれんさんが、
さまざまな国を巡ってつちかった美意識や哲学を
「よそおう」「くらす」「もてなす」の3つの切り口で
表現していくライフクラフトブランドです。

青山、二子玉川、阪急うめだなど
全国に6店舗を展開。

オンラインショップもあります。

ハウス オブ ロータスWEBサイトへ