季刊誌「考える人」リニューアル記念企画
おわりとはじまり展
TOBICHI2 2016年4月15日(金)~17日(日)

ワーズワースの言葉「plain living & high thinking」
(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)を
編集理念に掲げる新潮社発行の季刊誌「考える人」が
創刊15年目に、このたび大リニューアルしました。
一歩踏み出そうとしている「考える人」を
ほぼ日とTOBICHIは応援したいと思っています。
「自分の頭で考えるって、どういうこと?」
「おわり、はじまり、どう変わっていく?」
「めざすこと、なりたいものは何?」
みなさま、ぜひ、TOBICHIにおいでください。
そしていっしょに「考えること」をたのしみましょう。

糸井重里はなぜ
雑誌「考える人」に
連載を持ったのか?
その2
ほぼ日
では、具体的に
河野編集長がどうやって連載を依頼なさったのか
お聞かせください。
糸井
河野さんが
「これからこういうことやろうと思う」と
おしゃべりのように話してくれたことは
これまで何度もありましたが、
今回のような真剣さは
はじめてのように感じました。

河野さんや、優秀な編集の方からのお話というのは、
たいてい「誰かに聞いてほしい」という気持ちで
いらっしゃることが多いんです。
「あのね、こういうことを思いついたんですよ」
と、うれしそうに来てくださいます。
それって、じつはすごく「いいもの」で、
ぼくにとって、元気の材料になっています。

そうやって、河野さんが
リニューアルについて話してくださるうちに、
何が手伝えるかわからないけど‥‥と、
ぼくはいつものように自分なりの考えを話しました。
すると河野さんは、流れるように
「つきましては、依頼なんですけれども」
とおっしゃるんです(笑)。
しかも、マンガをテーマにした連載ですよ。

河野さんは、
「糸井さんと同じようにマンガが大好きだったけど
いつのまにやら見なくなっていた」
そうです。
まぁ、ぼくだってそんな感じだったのですが、
このところのマンガが
改めてすごいなぁと思って、
Twitterやほぼ日の原稿に書きました。

それを見た河野さんは
「糸井さんがそんなふうに書くようなものを
ぼくはまるまる見逃していた」
「これはたいへんだぞ」
と、たいへんなショックを受けたそうです。
「自分も、まわりの同じような人たちも
ぜひその話を聞きたいはずだと思う」
と、おっしゃいました。

それを受けてぼくは
河野さんとおしゃべりするぶんにはいいけど
連載はどうかな、と思いました。
まずぼくは、マンガについて
あいかわらずくわしくないです。
ぼくなんかよりもっと、
百科全書的に知っている人もいるし、
情熱がまさってる人もたくさんいる。
マンガって、ある意味、
読み手がすばらしい人だらけなんです。
その中でわざわざぼくが
「マンガはいいぞ」という連載をするには、
持っているものが足りなすぎると思いました。
ぼくはどちらかといえば、
お客さんとしてマンガを読んで、客席から離れずに
「あれはよかった、これもよかったよ」
ということを言いたいのです。

河野さんは、さすが、
そのことについて「すっ」と、
わかってくださいました。
しかしさらに
「ですので、その示唆がほしいのです」と言われて‥‥
ぼくは、うへぇぇええぇ、となりました。
ほぼ日
うへぇぇええぇ、と‥‥(笑)、
断れなくなって。
糸井
「くわしくないです」
「おもしろいマンガについて
その都度そんなに豊かに語れないです」
とかいろんな言い訳をしたけど‥‥
でも、河野さんに
定期的に会いたい気持ちはありました。
ですから
「やれるかどうかわからないけど
1回めをやってみましょうか」
と言ってしまったんですよ。
やれないということをわかるためにも
1回めをやる必要があると思いました。

正直、あの記事は、とてもいい記事で‥‥
いい記事なんですが、
67点くらいです。
リニューアル号に載るには、あれでいいと思います。
でも、マンガ評を
たのしく書いている人たちに対して、
「ごめん、ゆるして」という気持ちが
あることは確かです。
ほんとうは、もっとあっちこっち、
誤爆しながら前に進みたいのです。
2回め以降、おもしろくします。がんばります。
そのあたりは、「考える人」といっしょになって
磨いていきたいと思います。
ほんとうにいま、よその連載は、
ぼくはしてないですからね。
ほぼ日
そうですね。
ですが、思えば河野さんが編集長だった頃の
「婦人公論」の座談会
「井戸端会議」も長く連載していましたね。
(ほぼ日註:
この婦人公論の連載の内容は
『経験を盗め』という本にまとめられました)
糸井
当時、あの依頼がぼくのところに来たということが、
そもそもすばらしかったんですよ。
ほぼ日
というと‥‥?
糸井
あのとき、ぼくにああいう種類の
仕事の依頼が来るということは
なかったと思います。
ほぼ日
えぇ?!
そうなんですか。
糸井
連載の座談会をやってほしいと言われて
人選もいっしょに考えたい、という提案でした。
河野さんが依頼してくれたあの連載は、
当時のぼくをとても勇気づけました。
毎回「おもしろい、おもしろい」と
思いながらやってたし
自分にああいうことができるんだ、というのも
よくわかった。
ずいぶん自分の栄養になったし、
いまのほぼ日の仕事やコンテンツに
つながってきているように思います。
ほぼ日
糸井さんからみて、
河野通和さんは、どんな方でしょうか。
糸井
まずは、「正直」。
わからないことについては、いったん歩をとめて、
「それは私にはわからないんですけれども、
 たとえばどういうところに
 目をつければいいのでしょうか」
という姿勢をとります。
河野さんは、インタビューだけでなく
ひとりで執筆している文章も、
そういう姿勢で書いていらっしゃると思います。
だから、あんなに誠実な文体なんですよ。

それから、圧倒的に引用がうまい。
あれは、そうそうできないです。
毎週送られてくるメルマガを読んで思うのですが、
「この本がどういう内容か」ということを
あんなふうに書ける人を、ぼくはほかに知りません。
本の内容に、自分の考えをちゃんと重ねて、
ポジティブな側に立ちながら
問題をみんなに提示するのです。
河野さんの書くものは、必ず読みたくなる文章です。
あれを一冊にすればいいのに、と思います。

河野さんは、考えの根っこを
毛細血管のようにはりめぐらせている人です。
前編集長の松家仁之さんもそうです。誠実でね。
「誠実さ」というのは、
若いときにはかっこ悪いんだけど、
ある程度大人になってからの「誠実さ」は、
ほんとうにかっこいいのです。

自分たちが拠って立つところを
熱心に、いつでも問いかけている。
「考える人」の歴代編集長は
すばらしい人たちです。

あの人たちは、なんでしょうね、
知性とか教養とかの、実用的な存在‥‥
という気がします。
つまり、実用的な知性を持っている大人です。

知性やら教養やらって、
生きるうえでのすてきな「杖」ですよね。
そういう人たちから、
ぼくらがもらえるものはそうとう大きいし
こうして関わらせていただくことは
まことにありがたいことです。
そうやってみんなの思いや栄養が増えてって、
いいものが時代に
継投されていくんじゃないかなと思います。
ほぼ日
「つるとはな」に続き、
次の「考える人」のTOBICHIで
先輩たちの仕事に
触れられる機会にしたいと思います。
2016-4-12-TUE