「かみてつ」ってな~に? 「かみてつ」ってな~に?

紙でできた鉄道模型「かみてつ」。
電車や町が紙でつくられている、
というものはよく見かけますが、
この「かみてつ」は、
紙にプリントされた線路のうえを、
紙の電車が走る(!)という、
ちょっと不思議なペーパークラフトなのです。
第3回「生活のたのしみ展」の会場では、
この「かみてつ」を
みなさんに体験していただこうと、
子どもから大人までたのしめる
「かみてつワークショップ」を
連日開催することになりました。
「かみてつ」のデザイナーであり、
根っからの「鉄オタ」という八木澤さんに
「かみてつ」のこと、鉄道模型のことを、
たっぷりとお話しいただきました。

──
「かみてつ」を商品化するとき、
なにか苦労されたことはありましたか?
八木澤
商品化に落とし込む作業は、
ほんと、思った以上に大変でした。
──
どのあたりが大変だったんですか?
八木澤
これまではワークショップという
体験を提供していましたが、
今回、はじめてキット単体でも
販売することになって、
考える方向性は全然ちがいました。



商品化するときに、
自分が得意とするアートの領域に
引っぱることもできたんですが、
それだと自己満足になるし、
販売価格も高くなってしまいます。
そんなことを考えていたときに
「パーツを自分でつくる」
というアイデアが出てきて、
「つくることを楽しむ鉄道模型にしよう」と、
方向性が定まったんです。
──
完成品としてではなく、
自分でつくってもらおうと。
八木澤
完成品としてではなく、
自由に切ったり、貼ったりして、
自分たちの好きなように
カスタマイズできるようにしようと。
結果的に「かみてつ」を
そういう方向に持っていけたのは、
すごく良かったと思います。



将来的には、
絵本作家やマンガ家との
コラボも考えています。
線路を拡張することができれば、
いわゆる本格的な模型を
走らせることだってできます。
「かみてつ」という抽象的な世界に、
リアルなスケールモデルを走らせても、
おもしろいと思うんです。
──
夢がどんどん広がりますね。
八木澤
ぼくは「鉄道は文化だ」という思いがあって、
そのうち、鉄道各社とコラボして、
各社がその地で培ってきた文化を、
「かみてつ」で表現したいと思っています。



鉄道車両の数や知識を競い合うだけが、
鉄道のたのしみかたじゃないし、
もっと「文化としての鉄道」の
たのしみかたがあると思っています。
お金をかけなくても、
鉄道はたのしめる趣味だと思うので。
──
一般的に「鉄道」って、
すごくお金がかかるイメージですもんね。
八木澤
実際にお金がかかりますからね。
でも、どんなにお金をかけて、
レアものをコレクションしていっても、
いずれはどこかで限界がきます。
そうなると他と差別化するために、
今度は物をはなれて、概念の世界にいく。
──
物をはなれて、概念の世界に‥‥。
八木澤
鉄道模型の世界でも、
突きつめていくと
よくわからない世界になっちゃいます。
最終的には「物があったら負け」みたいな
感覚になってくるんです。
──
なんだかすごい境地ですね‥‥。
八木澤
ぼくも鉄道をはじめたころは
「模型の数なんてどうでもいい。
本当に気に入った車両だけあれば、
それでいいんだ!」といっていました。
でも、いま家に、
鉄道模型が1000両くらいあります。
──
せ、1000両!
八木澤
壁一面にドーンと1000両あります。
この世界では
それほど多い方ではないのですが、
それでも毎日それを見るたびに、
自分の未熟さに怒りすらこみあげる。
「なぜ俺はこんなにも買ったんだ!」と。
──
自分で買っておきながら‥‥。
八木澤
結局、趣味なんて、
自分が満足するためにあるので、
究極をいえば「妄想のためのツール」なんです。
だから、どの分野でも究極のマニアというのは、
物への執着がなくなっていくような気がします。
物が手元になくても、
妄想さえできればそれでいいわけですから。



鉄道模型をガチでやってる人も、
はじめはリアルを追求していきますが、
それを突きつめてしまうと、
今度は「見立て」に移行していきます。
──
リアルから「見立て」に。
八木澤
そもそも子どもって、
みんな「見立て」の天才です。
子どもはなにもなくても、
「見立て」だけで遊ぶことができます。
あの想像力こそ、
お金ですべてを解決しようとする
大人たちが見習うべきものなんです。



ということを、
1000両の電車をみながら、
毎日自分に言い聞かせてます(笑)。
──
はぁ、すごい世界です‥‥。
でも、その「見立て」の能力って、
女性はけっこう持ってますよね。
八木澤
それはあると思います。
おそらく女性は、
不自然な状況に対する耐性が
強いんだと思います。



逆に男性は「見立て」が苦手ですね。
鉄道好きの中にも
「この路線にこの電車はおかしい」
「ここは何系じゃなきゃダメ」とか、
そういうことにこだわる人が多い。
もうね、ぼくとしては、
その不自由な世界をなんとかしたい(笑)。
──
そういう意味では、
「かみてつ」は鉄道がモチーフですが、
女の子やお母さんたちでも
気軽にたのしめるものといえますね。
八木澤
そう思ってもらえるとうれしいですね。
鉄道はほんとにおもしろい世界なので、
そのことを「かみてつ」から広めたいです。
──
いやぁ、今日は「かみてつ」のことから、
ご自身の趣味のことまで、
幅広くありがとうございました。
八木澤
こんな話で良かったんでしょうか(笑)。
どうもありがとうございました。
──
「たのしみ展」のワークショップも、
どうぞよろしくお願いします。
八木澤
はい、どうぞよろしくお願いします。
(終わります)
2018-06-04-MON


▲「かみてつキット」の制作風景