「かみてつ」ってな~に? 「かみてつ」ってな~に?

紙でできた鉄道模型「かみてつ」。
電車や町が紙でつくられている、
というものはよく見かけますが、
この「かみてつ」は、
紙にプリントされた線路のうえを、
紙の電車が走る(!)という、
ちょっと不思議なペーパークラフトなのです。
第3回「生活のたのしみ展」の会場では、
この「かみてつ」を
みなさんに体験していただこうと、
子どもから大人までたのしめる
「かみてつワークショップ」を
連日開催することになりました。
「かみてつ」のデザイナーであり、
根っからの「鉄オタ」という八木澤さんに
「かみてつ」のこと、鉄道模型のことを、
たっぷりとお話しいただきました。

──
そもそも八木澤さんは、
どういう経緯で「かみてつ」を
つくることになったんですか。
八木澤
えっと、それはですね‥‥。
もとをたどると、
「私が鉄道好きだった」という
だけの話なんです(笑)。
──
ということは「てっちゃん」だった?
八木澤
そうです、てっちゃんです。
子どものころからずっと鉄道オタクです。
中学生ぐらいになって、
ちょっとまわりを意識しはじめたころに、
他の趣味に移った時期もあるんですが‥‥。



そのあと30歳をすぎたあたりで
「やっぱり鉄道っていいなぁ」と思って、
あらためて火がついた感じです。
いまでは東京ビッグサイトで行われる
「鉄道模型コンテスト」の審査員長もしています。
──
なにがきっかけで、
そんなにも鉄道にハマったんですか?
八木澤
すべてのはじまりは、
3歳のときに「プラレールがほしい」と
サンタさんにお願いしたことです。
その年のクリスマスの日の朝、
起きたら枕元に置いてあったんです。
鉄道模型の「Nゲージ」が(笑)。
──
あ、プラレールじゃなかった(笑)。
八木澤
本格的なやつでした(笑)。
そこから約40年、
途中ブランクはありますが、
いまも鉄道模型にハマってます。
母には大人になったあとで
「なんであのときプラレールじゃなかったの?」
と聞いたんですが、
「Nゲージのほうがコスパが良さそうだから」
といってました。
──
コスパがいい?
八木澤
つまり、プラレールって
大人になったら遊ばなくなっちゃう。
いずれは使わなくなっちゃいます。
母はそれがイヤだったみたいで、
だったら大人になっても遊べる
「Nゲージ」のほうがいいだろうと。



そのとき買ってもらったものは、
いまだにずっと持ってますから、
コスパはかなりいいと思います(笑)。
──
さきほど、中学生くらいで
「他の趣味に移った」とおしゃっていましたが、
それはどんな趣味だったんですか?
八木澤
簡単にいえば「ミリタリーもの」です。
──
ミリタリーというと、軍服とか鉄砲とか?
八木澤
ミリタリーもの全般です。
ただし、ミリタリーといっても
「軍服の格好をする」とか
「鉄砲を撃つ」とか、
そういう方向ではなくて、
プロダクトとしてのおもしろさだったり、
デザイン性に惹かれていきました。



ミリタリー製品って、
誰にも媚びてないデザインだし、
機能や要求に応じてつくられるので、
価格もめちゃくちゃ高いんです。
予算ありきでつくられていないので、
アートに近いものを感じるんです。
でも、その趣味をどんどん追求すると
「欲しいものは買えないし、
買えるものは欲しくない」
という状況になってしまいます。



それで、その趣味が
ちょっとしんどくなってきた
30歳ぐらいのときに
「やっぱり鉄道っていいかも」
と思い直すようになって、
それで「復帰」することを決めました。
──
「復帰」っていうんですね(笑)。
八木澤
ちなみに、大人になって復帰した人は、
子どものときより
お金が使える状況になっているので、
復帰した途端に、
当時のリベンジをしようとするんです。
──
あぁ、それは危ない‥‥。
八木澤
なので、
「自分は絶対にそうなるまい!」
と思って復帰したんですが、
やっぱりそうなりました。
──
いっぱい買っちゃった(笑)。
八木澤
セーブしてた自信はあったのですが、
気がついたら結構な数になっていました。
ま、それはいいのですが、
復帰してあらためてわかったのは、
鉄道模型の世界というものが、
以前に比べてマニア向けの趣味になっていて、
気楽にゆるくたのしめる余地が
少なくなっていたんです。



ぼくとしてはそれが
「ちょっともったいないなぁ」と、
ずっと思っていました。そんなときに‥‥。
──
「かみてつ」を発明する?
八木澤
いきなり「かみてつ」ではなく、
東京大学発のスタートアップ、
「エレファンテック」創業者の友人から
「導電インクでつくる印刷回路を使った
ワークショップをいっしょに考えてほしい」
という相談を受けます。
──
あの、すみません、
たしか「導電インク」というのは‥‥。
八木澤
「導電インク」とは、
銀を使ったインクみたいなもので、
マーカーで描いたり、プリンターで印刷すると、
その部分が通電するものです。



パソコンやスマホの中には、
電子基板が使われていますよね。
エレファンテックという会社は、
この回路基板を、プリンターで印刷して、
安く、早くつくる技術を開発したんです。



それで、ワークショップの相談を受けたときに、
「導電インクのペンで線路を描いたら、
鉄道模型が走るんじゃない?」と思って、
その場で実験して、Nゲージをのせてみたら、
本当に電車がピューッて走ったんです。
──
おぉ、それはすごい!
八木澤
なので、はじめのころは
「自分で線路を描きましょう」という
ワークショップだったんです。
それが1年くらい前の話で、
そこからいろいろ改良を重ねながら、
いまの「かみてつ」になっていきました。
──
今回はワークショップだけじゃなく、
組み立てキットの販売もあるんですよね。
八木澤
はい。1年くらい前に、
ワークショップを見た凸版印刷さんが
「いっしょに何かやりませんか」と
声をかけてくださったんです。
それで今回、組み立てキットを
共同開発することになったんです。
──
まさにトントン拍子で、
ここまで来たというわけですね。
八木澤
おかげさまで、はい、ありがたいことです。
もう人の縁のおかげですね。
(つづきます)
2018-06-03-SUN


▲「かみてつキット」の制作風景