- 糸井
- 清水さんに大昔にさ、ぼくが筋トレに‥‥
- 清水
- ああ、あれ、どうなったの？今もやっているの？
- 糸井
-
いや、やってないよ。会員としては、ジムにまだいるよ。
いつ行ってもいいんだよ。サボってるんだよ、ずっと（笑）。
- 清水
- あ、そう（笑）。
- 糸井
-
で、当時、筋トレが面白かったから、
どんどん前のめりにやっていって。清水さんにその話をして、
「ほら、ほら」って言って胸とかを突き出したら、
「誰もあんたにそんなこと望んでない」って。
- 清水
-
ひどいねえ（笑）
私、その頃ね、ちょうど内山君に
「これ食べたら太るかな」つったら、
「清水さんが太って困る人、どこにいるんですか」と言われて。
しまった、自分だけが美に関して意識しているって思って。
糸井さんに言ったのは、その前後だったかもしれない。
- 糸井
-
実はね、感動したんですよ。
どうしてみんな気づいてないんだ、それにって（笑）。
でも、清水さんも自分でトレーニングしているもんね。
- 清水
- そう、ジムでね。
- 糸井
-
それ何か理由があって始めたんですか。
誰もそんなこと望んでないんじゃない（笑）。
- 清水
- あはは、私は単なる体力維持。
- 糸井
- 持ちをよくするため。
- 清水
-
持ちをよくするため。
あと、意外とストレス発散になるってことがよくわかった。
だから、糸井さん、なんでやめたのかなと思って。
- 糸井
- 俺はやっぱり、社長業になったからだよ。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
-
何ていうの、ある時間ここに拘束されていれば、
ここは自由です、みたいなふうにはなってないから。
やっぱり‥‥
- 清水
- ずっと忙しいってこと？
- 糸井
- ずっと気は休まらないよね。やっぱり嫌なものだよ。
- 清水
-
えぇー。私、今日、最終的に聞きたいと思ったのは、
糸井さん、死にたくないだろうなってことなの。
- 糸井
-
ん？ 死にたくない？
死にたくないよ、そりゃ。
- 清水
- 当たり前か（笑）。
- 糸井
- 死んだらしょうがないとも思うし。
- 清水
-
うんうん。私のイメージの中で糸井さんは、
貧乏生活もしてきた少年が、孤独とか知りながら、
いつの間にか70人超える大会社の社長になっていたわけじゃん？
- 糸井
- 大会社じゃない（笑）。
- 清水
- でも、すごいサクセスストーリーでもある。
- 糸井
- ああ‥‥。
- 清水
-
そういう人が一番怖いのって
やっぱり健康じゃなくなることとか、
死ぬことかなって思ったの。
- 糸井
-
いや、それは別に怖いとかじゃなくて、
永ちゃんのちっちゃいサイズだよ。
つまり責任があるんだよ。それだけのことだよ。
だから、忙しいんだよ。
- 清水
- 「もうやめたい！」ってならない？
- 糸井
- やめたいって言っちゃいけないじゃん。
- 清水
- ああ、そうね。
- 糸井
- （笑）
- 清水
- そうだねえ。
- 糸井
-
そんなことを思っているだけでも、
ちょっとストレスだよね、きっと。
- 清水
- そうね。
- 糸井
-
いや、でも、清水ミチコ事業という体系があるよね。
だから「私は倒れちゃいけない」って
いうぐらいのことは、きっと思っているでしょう？
- 清水
-
本番で倒れちゃいけないとは思うけど、
でも、私はやっぱり糸井さんとは全然違います、スタンスは。
- 糸井
-
そうか。でも、その色、形、大きさは違うけども、
大人はみんな責任があるわけで、
子どもだったときには、ないふりをして、
生きているわけじゃない。
- 清水
- そうだね。
- 糸井
-
で、大人になっちゃっているから、
そこはもうしょうがないよね。
で、まんざらでもないところも、あるじゃないですか。
「皆さん、お元気ですか」つったら、「元気でーす！」って
返ってくるみたいなところが、ある。
- 清水
- うんうん。
- 糸井
-
その「元気でーす！」って声も含めて、
ぼくじゃないですか、もう。
- 清水
- そうか。
- 糸井
-
清水さんなら、ライブをやっている武道館でずっこければ、
みんながワーッて湧くみたいなのも含めて、私じゃないですか。
- 清水
- なるほど。
- 糸井
-
ぼくは、ただ、もう引退の準備をしながら、
やれるうちはやろうっていうのを、
一生懸命やっているみたいな状況ですよ。
- 清水
- あ、本当？
- 糸井
- うん。それは、しがみつく人になったらやっぱり悪いからさ。
- 清水
- 悪いっていうのは、次の世代に？
- 糸井
-
うん。得意で社長やっているわけじゃないから。
もっと社長が得意な人がやったほうがいいのかもしれないし、
それはわかんない。
本当の金儲けの種をもっとぼくにやらせるには、
早く社長をやめさせてあげたほうが儲かると思うんだよ。
- 清水
- なるほど。糸井さんを使ったほうがいい。
- 糸井
-
うん。で、ちょっとほったらかしにしといて、
「いいのができたんだよ」っていうもののうち、
５個中１個ぐらいが当たったりするほうが、
社長をやらせているよりは、いいような気はしているのよ。
- 清水
- そうかもね。
- 糸井
-
うん。そこはだから、何とも言えなくて。
こういう変な社長だからできていることもあるし、
逆に言うと本人がブレーキをかけている部分もあるし。
だから、そこは何とも言えないんだけど、
まあ、年取ったらよしたほうがいいなと思って。
- 清水
- あ、そう？
- 糸井
-
ずっとしゃがんでいたあとで、
立ち上がったときに、ひざが痛いもん。
- 清水
- なるほどね（笑）。
- 糸井
- 清水さんとか、先どうするみたいなこと考えるの？
- 清水
- 考えないけど、占いの人のところに行ったときがあって（笑）。
- 糸井
- 自分で考えたくないんだ（笑）。
- 清水
- うん、そうですね。でも、私、不幸になるような気がしない。
- 糸井
- それがすべてだと思うね。その「運悪くないし」みたいな。
- 清水
- うん、そうね。
- 糸井
- ボーフラでもそうなんだよね。
- 清水
- ん？
- 糸井
- ボーフラでも多分そうなんだよね。
- 清水
- ボーグルって何？
- 糸井
- ボーフラってあの‥‥
- 清水
- あ、ボーフラ！失礼だな、この会社（笑）。
- 糸井
- いや、あんなやつらでも、あれ「運悪くないし」と思っていると思う。
- 清水
-
やめてよ（笑）。
- 糸井
-
いや、思ったのよ。俺、孫ができたじゃん。
で、見ているともうね、うらやましいの。
- 清水
- あ、楽観性？
- 糸井
- そう。
- 清水
- 子どもって、でも、とくにそうなんですよね。
- 糸井
-
清水さんは母親やっていたから知っていると思うけど、
ひとりでは生きていけないのに、一切心配しないで、
フャーッとか言っているっていう（笑）。
- 清水
- それで、自分で大きくなりましたって顔するからね、みんな。
- 糸井
- うん。だから、それないとやっぱり生き物ってダメでさ。
- 清水
- そうね。
- 糸井
-
だから、ものすごく考える子どもがいたりしてね。
「将来、勤めたいと思うところは‥‥」とか言ったら、
不幸になるぞって思わない？（笑）
- 清水
-
うん。今どきの子、えらい頭いいからね、
ちょっと心配なとこあるよね。
- 糸井
-
それよりは、なんとかなるような顔してニッコニコしていたら、
「おまえ、結局、俺の話聞いてないだろ」つったら、
「ごめん」みたいな（笑）。
- 清水
- 南伸坊さんみたいなね。
- 糸井
- そう。それのほうがやっぱり生きるよね。
- 清水
- うまくいく人は、大体そういう人多いからね。
- 糸井
-
ぼくなんか、ちょっと余計に考え過ぎるほうでさ。
自分の中に２人いるんですよ、
ものすごく考える私と、何も考えない私が。
いつもリレーをやっているんです。
ものすごく考える私っていうのが、
「本当大変なんですよ」って言いながら、
さあ本番ってなると、考えない私のとこにバトンが行く（笑）。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
-
おかげでなんとかなった。
まあ、清水さんのサクセスストーリーを
順番に語っていくような企画にはならなかったけれども（笑）。
- 清水
- やり直して、これ（笑）。
- 糸井
-
でもぼく、３年か４年前に、
初めて武道館のライブをやったときに、
清水さんもボスになったんだと思ったよ。
- 清水
- え、本当？
- 糸井
-
うん。つまり、立候補しないのにボスになった人って、
一番いいなと思ったよ。
何ていうんだろう、みんな利害関係なく集まっているんじゃん。
- 清水
- ああ、そう、そう。よくわかりますね（笑）。
- 糸井
-
別に清水プロダクションに入ったわけでも、
何でもないのに集まっていて。
その場所に立つのって、なかなか大変なことでさ。
- 清水
-
目指したらね、きっと大変だと思う。
運もよかった。
- 糸井
- 清水さんは、人の世話をしてきた覚えもないじゃないですか。
- 清水
- あんまりだな、ボーフラ扱い（笑）。
- 糸井
-
改めてお聞きしますが、
「私は人の世話をしてきたんですよ」って
思っていますか？（笑）
- 清水
-
ああ、してない。でも、若い頃は思ったの。
私も永六輔さんみたいになって、新人のライブを見に行って、
「こうしたほうがいいよ」とか背中を押してあげるような
そんなおばさんになれたらいいなと思った。
けど自分は、自分の今日明日のことで、一杯一杯なのよね。
だから、この歳になったら、人に教えてあげるって人は、
たいしたものなんだなと思った。
- 糸井
- つまり、してないって。
- 清水
- してなーい。これからもしなーい（笑）。
- 糸井
- でも、「こんなんでもいいんだよね」は見せているよね。
- 清水
- うん、そうだね。こんなんでも大丈夫ですよって（笑）。
- 糸井
- いや、面白かった。
- 清水
- 面白かった。あっという間。
- 糸井
-
こういう会話は、仕事じゃないとやっぱりありえないんだよなあ。
