共感から生まれる、笑いをつくる
担当・平塚 朱里

第3回 笑いの世界と解像度
- 糸井
-
忌野清志郎さんのモノマネは、
初期と今とでは、圧倒的に今のほうが似ているよね。
- 清水
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あ、そうですかね。
- 糸井
-
うん。何それって、改めて自分では考えたことはない?
- 清水
-
モノマネしている人ってみんなそうだと思うけど、
私も10代のときに影響された人で止まっていて。
30代、40代超えてからは、増えたレパートリーっていうと、
瀬戸内寂聴さんぐらいで(笑)。
- 糸井
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あと、真矢みきさん。
- 清水
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でも、歌手ではもうほとんどいないかもしれない。
- 糸井
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ということは、たとえば今流行っている、
仮に西野カナさんのマネしなさいって言われても、
西野カナさんのことが、そんなにしっかり聞こえないんだね。
- 清水
-
そうですね。よくわかりますね。

- 糸井
-
たとえば、絵描きが、
水の中に氷が浮かんでいますっていうスケッチとかを
描けるじゃないですか。
それは氷が見えているから描けるわけですよね。
- 清水
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うん。
- 糸井
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でも、ぼくらにはその氷が浮かんでいるものが、
見えてないんですよ。解像度が低い。
- 清水
-
そうそう。
- 糸井
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だから、描きようがない。
- 清水
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確かにそう。だから、安室奈美恵さんが引退するときに、
号泣したりする人たちの気持ちに
1回なろうと思うんだけど‥‥やっぱりなれない。
- 糸井
-
その世代の清水ミチコがいたら、
安室奈美恵さんのコピーができているんだろうね、きっと。
- 清水
-
うん、きっとそうだと思いますね。
- 糸井
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絵描きと清水さんは、どちらも違うものが見えているところが、
おそらく同じだろうなと思っていて。
でも、今日清水ミチコさんに会って、
「あ、西野カナさんはできないんだ」って。
- 清水
-
聞こえ悪いな(笑)。

- 糸井
-
つまり、10代のとき夢中になった人はマネできるってことは、
そのときは受け止める側の脳細胞がバッチバッチに‥‥
- 清水
-
そうそうそう。歌で泣いたりとかね、
一緒に喜んだりとかしていて、感受性が違う。
この年になると‥‥
- 糸井
-
脳がついてってない(笑)。
- 清水
-
多分、私が解像できない。
- 糸井
-
年とってからでも好きになった人はいるっていうのは、
多少はある?
つまり、歌手ではなくということなんだけど。
- 清水
-
瀬戸内寂聴さんとか、あとは、山根会長とか(笑)。
そういえば昔、糸井さんとメールでやりとりしていて、
「どうせ清水は今、あれなんだろ、
田中眞紀子さんを練習中なんだろ?」って書いてあって、
そうだ、田中眞紀子さんをやんなきゃと思って、
あのとき自分に火がついて。
- 糸井
-
それは自分では思いついてなかったんだ。
- 清水
-
うん、そのときはね。
ああいうなんか、面白がりましょうよっていう気持ちは
やっぱりあるから。
- 糸井
-
あのあたりのモノマネは、
普通の人が意に介してないものを、
ちょっとピントを合わせて見ているんだよね、きっと。
- 清水
-
あ、そうですね。
- 糸井
-
だから、商売にするにはちょっと、
本当は足りないでしょうね。
ユーミンと山根会長を比べると、完成度が‥‥
- 清水
-
全然違う(笑)。
- 糸井
-
後者は、ちょっと混ぜるっていうぐらいでいいんだよね。
- 清水
-
そう。もう余生はそうやって暮らす(笑)。
- 糸井
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でも、清水さんのベースになるユーミンのモノマネは、
今でも聞きたい人がいるから、
時代にのまれなかったんですよね。
モノマネの人ってけっこう難しくてさ、
大ヒットが出たりすると、
その人と共に消えたりするじゃないですか。
- 清水
-
ああ、本当だ。
- 糸井
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でも、清水さんの場合は、
なんやかんやいって、編集し直すっていうか(笑)。
- 清水
-
編集(笑)。
- 糸井
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ユーミンはユーミンなんだけど‥‥
- 清水
-
薄めて、薄めて。
- 糸井
-
もう1回、ここに置けば違って見えるとか。
- 清水
-
そうそうそう(笑)。ごまかし、ごまかし。
- 糸井
-
それで武道館ライブができちゃうんだから。
- 清水
-
本当だね。
私の好きな桃井さんとか矢野さんとかユーミンさんの世代が、
まずキャラクターが強いっていうのもありますよね。
みんな知っているし。
- 糸井
-
お客も濃いんだね。好き度がね。
- 清水
-
そうそう。
私の心を込めた歌はいいから、
ユーミンやってって(笑)。
- 糸井
-
心を込めた自分の歌のほうに、
よく行き過ぎないで留まっています(笑)。
- 清水
-
でも、1回モノマネじゃなくて、
そういうのをやってみようかな。
どんなに嫌な時間か(笑)。