こういう風に見えている

第5回 プロデュースの原点
- 糸井
-
大昔、俺が、筋トレが面白くてどんどん前のめりにやってる
っていう話をして、
「ほら、ほら」
って胸とかを突き出したら、
「誰もあんたにそんなこと望んでない」
って言ったよね。
- 清水
-
ひどいねえ、言いそう(笑)。
- 糸井
-
その一言が、なんて当たってるんだろうって(笑)。
俺は感動したんですよ、実は。
どうしてみんな気づいてないんだ、それにって(笑)。
- 清水
-
私、ちょうどその頃、内山君に、
「これ食べたら太るかな」って言ったら、
「清水さんが太って困る人、どこにいるんですか」
って同じこと言われた(笑)。その前後だったかもしれない。

- 糸井
-
その後、自分でトレーニングしてるもんね。
- 清水
-
そう、ジムでね。
- 糸井
-
それ何か理由があって始めたんですか。
- 清水
-
私は単なる体力維持。あと、意外とストレス発散になるってことがよくわかった。
- 糸井
-
それは効果があるんですか。
- 清水
-
うん、そう思った。だって帰り道の人はみんな、スッキリしたーって顔してます。
糸井さん、なんでやめたのかなと思って。
- 糸井
-
俺はやっぱり、社長業になったからだよ。
- 清水
-
あ、そう。
- 糸井
-
うん。ある時間ここに拘束されてれば、ここは自由です、みたいにはなってないから。
- 清水
-
ずっと忙しいってこと?
- 糸井
-
ずっと気は休まらないよね。
- 清水
-
私、今日、最終的に聞きたいと思ったのは、糸井さん、死にたくないだろうなってことなの。

- 糸井
-
ああ、死にたくないよ、そりゃ。
- 清水
-
当たり前か(笑)。
- 糸井
-
死んだらしょうがないとも思うし。
- 清水
-
私のイメージでは、70人を超える会社を動かすようになった人が一番怖いのって健康じゃなくなることとか、死ぬことかなって思ったの。
- 糸井
-
いや、それは別に怖いとかじゃなくて、さっきの永ちゃんのちっちゃいサイズだよ。つまり責任があるっていうだけのことで、だから、忙しいんだよ。
- 清水
-
「もうやめたい!」ってならない?
- 糸井
-
やめたいって言っちゃいけないじゃん。
- 清水
-
ああ、そうね。
- 糸井
-
清水ミチコはモノマネをやめたいなんて思う必要がないわけだよね。でも、「私は倒れちゃいけない」っていうぐらいのことは思ってるでしょう?
- 清水
-
本番で倒れちゃいけないとは思うけど、糸井さんとは全然スタンスが違います。
- 糸井
-
その色、形、大きさは違うけど、大人はみんなそこはあるよね。子どものときにはないふりをして生きてるけど。
- 清水
-
そうだね。
- 糸井
-
だから、そこはもうしょうがないよね。今は引退の準備をしながら一生懸命やってるみたいな状況ですよ。
- 清水
-
あ、本当?
- 糸井
-
うん。それは、しがみつく人になったら悪いからさ。
- 清水
-
次の世代に?
- 糸井
-
うん。得意で社長やってるわけじゃないから、俺。
もっと社長得意な人がやったほうがいいのかもしれないし、わかんない、それは。
清水さんは、この先どうするみたいなこと考えるの?
- 清水
-
先どうするは考えないけど、占い師のとこ行ったときがあって(笑)。

- 糸井
-
自分で考えたくないんだ(笑)。
- 清水
-
人に頼った(笑)。
- 糸井
-
じゃ、考えたくないのはあるんだね。
- 清水
-
そうですね。でも、私、不幸になるような気がしない。
- 糸井
-
ああ。それがすべてだと思うね。その「運悪くないし」みたいなね。
- 清水
-
うん、そうね。
- 糸井
-
ボーフラでもそうなんだよね。
- 清水
-
ボーフラ(笑)。失礼だな、この会社(笑)。
- 糸井
-
いや、思ったのよ。俺、孫ができたじゃん。で、見てるとうらやましいの、やっぱり。
- 清水
-
あ、楽観性?
- 糸井
-
そう。母親やってたから知ってると思うけど、ひとりでは生きていけないのに、一切心配しないで、フャーッとか言ってるっていう(笑)。
- 清水
-
(笑)。そうね。それで、さも自分で大きくなりましたって顔するからね、みんな。
- 糸井
-
うん。それないとやっぱり生き物ってダメでさ。
- 清水
-
そうね。

- 糸井
-
「ぼくがこの小学校に入ったとするじゃない?」とか、ものすごく考える子どもがいたりして。
- 清水
-
心配性(笑)。
- 糸井
-
「将来、今のところ勤めたいのは」とか言ってたら、不幸になるぞって思わない?(笑)
- 清水
-
うん。今どきの子、えらい頭いいからちょっと心配なとこあるよね。
- 糸井
-
それよりは、なんとかなるような顔してニッコニコして、「おまえ、結局、俺の話聞いてないだろ」つったら、「ごめん」みたいな(笑)。そのほうがやっぱり生きるよね。
- 清水
-
うん。うまくいく人は大体そういう人多いからね。
- 糸井
-
そういえば、3年か4年前、武道館の最初やったぐらいのときに、ああ、清水さんもボスになったんだと思ったよ。
- 清水
-
え、本当?
- 糸井
-
うん。立候補しないのにボスになった人って一番いいなと思ったよ。利害関係なく集まってんじゃん。
- 清水
-
よくわかりますね(笑)。
- 糸井
-
別に清水プロダクションに入ったわけでもないのに集まって、「こうやったほうがいいかな」つったら、「そうじゃない?」って言うやつがいるみたいになってるでしょ。
- 清水
-
えらいもんでそうですね(笑)。
- 糸井
-
その場所に立つのって、なかなか大変なことでさ。
- 清水
-
目指したらきっと大変だと思う。運もよかった。
- 糸井
-
で、人の世話をしてきた覚えもないじゃないですか。
- 清水
-
うん。ボーフラ扱い、あんまりだな(笑)。
- 糸井
-
改めてお聞きしますが(笑)、何か「私は人の世話をしてきたんですよ」って思ってますか。
- 清水
-
してない。
でも、若い頃は私も永六輔さんみたいになって、
新人のライブを見に行って、「こうしたほうがいいよ」とか
背中を押してあげるような人になれたらいいなと思ったけど、やっぱり今日のことで一杯一杯なのよね。
だから、人の背中を押してあげる人は大したものなんだなとこの年になって思った。
- 糸井
-
つまり、してない。
- 清水
-
してなーい。これからもしなーい(笑)。
- 糸井
-
(笑)。でも、「こんなんでもいいんだよね」は見せてるよね。
- 清水
-
うん、そうだね。こんなんでも大丈夫ですよって(笑)。
- 糸井
-
というのは見せてるね。それから、あんまり、ツッパってないよね(笑)。どうでもいい番組における、どうでもいい居方についても、別にそれはそれでっていう(笑)。
- 清水
-
(笑)。どうでもいい番組とは何だ、きみ(笑)。

- 糸井
-
例えば清水ミチコがゲストなんだけど、二言ぐらいしかしゃべんなくて、お笑いの本職の人だとわりと気にするんだけど、全然気に(笑)‥‥。
- 清水
-
しょうがないじゃんつって(笑)。
- 糸井
-
番が来なかった(笑)。
- 清水
-
もう終わった(笑)。
- 糸井
-
そのときには、ピアノも弾くしみたいな(笑)。
- 清水
-
初めて客観的に自分を見たような気がした。
- 糸井
-
意識はしてないよね。
- 清水
-
うん、してない(笑)。
- 糸井
-
来る仕事であまり嫌じゃないのは全部引き受けますよってことしてるんですよね。
- 清水
-
そうですね。
- 糸井
-
清水さんが、いい気にならないモードを保っていられるのは、いい気になっちゃいけないと思ってるからですか(笑)。

- 清水
-
いえ、そんな立場にないからです(笑)。
- 糸井
-
役割として、多少偉ぶってくれないと困るんですって場面に呼ばれることはないですか。
- 清水
-
あ、審査員とか?
- 糸井
-
それとか、新人が集まってる場所とか。
- 清水
-
あるある。
- 糸井
-
そのときは当然、役目として何かしますよね。
- 清水
-
やっぱりちょっと偉そうなほうが、おさまりがいいんですよね。
- 糸井
-
それを経験していくと、けっこう大勢の方々がそうなっていっちゃうじゃないですか(笑)。
自分はいい気になってないと思うんです。なんないようにしてるから。なんない理由の一つは、失われるものが大き過ぎるからだよね。
- 清水
-
ああ、そうかもね。
- 糸井
-
守るものの大きさもあるのかもしれないけど、誰でもいい気にはなれるじゃない?
- 清水
-
うん。
- 糸井
-
それを何回も機会があったろうに、逃げてきた人はちゃんと逃げてるし。
- 清水
-
ああ、そうね。でも、気がつかずになってたかもしれないけどね。
- 糸井
-
なってたんだ。

- 清水
-
しまったー、自白した(笑)。
- 糸井
-
(笑)。でも、奪われるもののほうが多いよっていうのは気づくね。
- 清水
-
そうね。あとやっぱり、自分を客観的に見てナンボの商売だから、私たちは。
- 糸井
-
そうか。「こう見えてるよ」が仕事だからだ。
- 清水
-
それもあると思う。
- 糸井
-
なるほどね。「こう見えてるよ」っていうの、実はプロデュースの原点だね。
- 清水
-
そうね。
- 糸井
-
モノマネがプロデュースの原点です。
- 清水
-
やめてよ、軽薄(笑)。