こういう風に見えている

第2回 ハガキ職人の幸せ
- 糸井
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いや、ぼくもね、清水さんについては、言ったり聞いたりしてみたかったのよ。
伸坊ともそんな話っていうのはあまりしてないしさ。
- 清水
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旅行行ってもそうだった?
- 糸井
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うん。しょうもないことは言ってんだけど(笑)。
- 清水
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あ、わかる。
- 糸井
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大学の勉強とかってしたの?
- 清水
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うちの田舎って短大とか大学行く以上は、教師免状を取るのが当たり前みたいな常識があったの。
だから、それを取るまではちゃんと勉強しましたね。
- 糸井
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へっちゃらなんだ、そういうの。
- 清水
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へっちゃらってことはないですけど。
家政科なんだけど、料理は好きだし、面白かった。
- 糸井
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つまりドロップアウトをしてないんですよね。
- 清水
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うん、してないです。親に心配かけるようなことはしてない。
- 糸井
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なのに、やってることは、ずーっと(笑)。
- 清水
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うちの両親は、とにかく森山良子さんの「ざわわ」をやめろやめろって(笑)。
- 糸井
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(笑)
- 清水
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「まあまあ、もう今年でやめますから」つって30年もやって(笑)。
- 糸井
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森山良子さんを見てるとき、清水ミチコを思い浮かべるように(笑)
- 清水
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なっちゃうじゃないか(笑)。
- 糸井
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なってしまう(笑)。

- 清水
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私の家系のひいおじいちゃんって人が「エイザブロウ」って名前なんだけど、「嘘つきエイザ」って呼ばれてて(笑)。
- 糸井
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うん(笑)。
- 清水
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普通の人は自分の名誉とかお金のために嘘をついたりするけど、ひいおじいちゃんはそうじゃなくて、本当に自分の楽しみのためにだけ嘘をついてたの。
昔はお坊さんってすごく地位の高い人なんだけど
そのお坊さんのところに行って
「田中んちのじいちゃんが死んだから、すぐ行け」
って。
お坊さんも真顔で言われると飛んで行くでしょう?
それを見て、
「飛んでった、飛んでった」
ってすっごい笑ってたんだって(笑)。
- 糸井
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単純な嘘だね(笑)。
- 清水
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そう。それを何回も繰り返して1人で笑ってたって人が
私の祖先なの(笑)。
- 糸井
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おじいちゃんは嘘つきかもしれないけど、「私」はちゃんといい子だったんですか。

- 清水
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私は、いい子でも悪い子でもなく、パッとしないような子だったんだけど、高校の時に糸井さんの「ヘンタイよいこ新聞」を読んだり、『オールナイトニッポン』を聞いたりとかして、だんだんお笑いの世界みたいなのを‥‥
- 糸井
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パッとしていったわけ?
- 清水
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自分の中ではパッとしていったけど、ほかの人はみんな恋愛してる中で、自分だけが「ビックリハウス」載ったとか、ラジオで投稿読まれたとか、幸せの度合いがちょっと違う感じだった。
- 糸井
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だけど、ラジオで選ばれたり、「ビックリハウス」載ったりするのって、実はけっこう難しいことで、俺、今やれと言われたら載る自信ないよ。
- 清水
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本当ですか。
- 糸井
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うん。それができちゃったわけでしょう?
- 清水
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そんなことばっかり考えてたからね、青春時代ずっと(笑)。
- 糸井
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ハガキ職人ですよね、いわば。
- 清水
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そうそう。ハガキ職人ってけっこう幸せっていうか、夢ありましたよね。
- 糸井
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いつも考えればできるの?
- 清水
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今はもう無理かもしれないですね。そういう試されるときがないから。もう思いついたらライブのためのネタにしてるっていうふうになっちゃったから。
- 糸井
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松本人志さんが、面白いことの共通一次みたいなテストを作ったことがあったんですよね。で、ぼくもそれやったんだけど、ちっとも面白くないの、自分が。
- 清水
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へぇー。
- 糸井
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中でもはっきり覚えてるんだけど、「一番ごっつ濃い鉛筆は何ですか」っていう質問。つまり4Hから4Bまであるんだけど、それを超える濃い鉛筆は何ですかって。
- 清水
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何て書いた?
- 糸井
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提出するわけでもないんだけど、「できないよ、俺」みたいになってるわけ。そしたら、あとで見た模範解答が、「鬼B」。
- 清水
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悔しい(笑)。
- 糸井
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悔しいだろ?(笑)

- 清水
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バカリズムさんが、謎かけができない人の気持ちがわからないって言ってたけど、あるんでしょうね、きっと個性が。
- 糸井
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できないんだよ、俺(笑)。
- 清水
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普通できないんじゃない? やっぱり(笑)。
- 糸井
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『IPPON』みたいな番組、めちゃくちゃ面白いじゃないですか(笑)。
- 清水
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すごいよね。
- 糸井
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清水さん、あれ、もしゲストで呼ばれたらどうですか。
- 清水
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いや、全然無理です。
- 糸井
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写真で一言みたいな何か(笑)。
- 清水
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全然できない。
私は、やっぱり耳で聞いたことを、自分なりに、「こういうふうに感じました」っていうことを提出すると、違っててもおかしいんだろうね、きっと。
- 糸井
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昨日、「明日清水さんに会うんだ」と思って、何か一つぐらい自分で「これを思ったんだよね」ってこと言いたいなと思って発見したのが、清水さんは「『私はこう感じてます』っていうことをしてるんだね」ってことだったの。
- 清水
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当たってます(笑)。
- 糸井
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で、なぜそういうことをお風呂に入りながら考えたかというと、批評してないんだよ、全然。
- 清水
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あ、うれしい。

- 糸井
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通信販売をする瀬戸内寂聴さんとかあるじゃないですか。
- 清水
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はい(笑)。
- 糸井
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あのとおりしてないんだけど、「私にはそう見えてますよ」っていうだけでしょう?
- 清水
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(笑)。そうかも、さすが。
- 糸井
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本人は悪気があるとかないとか全然言うつもりはないんですけど、こう見えてるんですよね(笑)。
- 清水
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確かに。
- 糸井
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そうするとお客さんが、「そう見えてる、そう見えてる」って(笑)。
- 清水
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「あるある」つって(笑)。共感の人が多いでしょうね、きっと。
- 糸井
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共感ですよね。ツッコみ過ぎないじゃないですか。
- 清水
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あ、そうですね(笑)。
- 糸井
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立ち直れないようなことしないじゃないですか(笑)。
- 清水
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そうかも(笑)。
- 糸井
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モノマネだから、そういうふうに表現できるわけで、あの芸を文章で書いてもつまんないよね。
- 清水
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そうだと思います。
- 糸井
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でも、文章は文章で面白いんですよ。ぼく、清水さんの文章を「みんな、このくらい書けるようになりなさい」って言った覚えありますよ。

- 清水
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本当?
- 糸井
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うん。言っては悪いですけど、文章の修業をしたつもりは全然ないわけだから。
「修業したつもりのない人がこんな文章を書けるっていうことに、もっとおののいてください」って社内で言ったことありますよ。
- 清水
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わあ、うれしい。頑張ろう。
- 糸井
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清水さんがうちで子どものこととか書いてる時代があったじゃないですか。あのときに、いつもいいなあと思ってて。
- 清水
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へぇー。
- 糸井
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ご自身は、文章は何だと思ってるの?
- 清水
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ブログなんかは、寝る前に、一日こういうふうだったってことを書くとスッキリして寝られるので、トイレみたいな感じですかね(笑)。
- 糸井
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でも、何も思わないで生きてたら、書けないじゃないですか。
- 清水
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うんうん。
- 糸井
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例えばアシスタントの子が気が利くなあって思ったから、そのことが書けるわけじゃない?
- 清水
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うん。
- 糸井
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思ってる分量は多いよね。
- 清水
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うん、きっと多いと思う。
高校のときの自分の面白ノートに真面目なエッセイ欄があって、それを「今回も書きましたけど、読む?」って回して、その人が笑ってると、もうすごい幸せみたいな。
- 糸井
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周りの人が面白がるみたいなのが原点。
- 清水
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そうですね。