こういう風に見えている

第4回 モノマネの解像度
- 糸井
-
どうして声が似るのっていうのは聴かれたことある?
- 清水
-
ない。どうしてだろう(笑)。
- 糸井
-
おかしいよね。声が似るってさ。
- 清水
-
しかもそれで生計立ててるっていうね(笑)。
- 糸井
-
(笑)。しゃべりの癖を似せるのはわかるよ?ここがこうだなとかいうのを耳コピして再現してるわけでしょ?
- 清水
-
そうそう。
- 糸井
-
それはできるんだけど、声の質まで。
- 清水
-
ああ、そうか。
- 糸井
-
だってユーミンさんと矢野顕子さん、似てないじゃん。
- 清水
-
うん、全然違う(笑)。
- 糸井
-
どうして清水ミチコが挟まると(笑)。

- 清水
-
(笑)。ユーミンさんのモノマネして、矢野さんのモノマネしたら、似てるって錯覚するけど、ユーミンさんやって、ここにユーミンさん来て一緒に歌ったら、全然違うってわかると思いますよ。
- 糸井
-
でも、近いことやったことあるでしょう。矢野顕子さんとはやってますよね。
- 清水
-
うん。そうですね、ユーミンさんとやったときも、ちょっと似てるなと思った(笑)。
- 糸井
-
ほら。
- 清水
-
自分ではわかんないな。どうしてなんだろう。
- 糸井
-
どうしてなんだろうね。
- 清水
-
あんまり自分の表現したいものがないからかもね(笑)。
「私の歌を聞いて」って気持ちには全然ならないけど、
「私が演じる誰かを聞いて」っていう気持ちにはすごいなる。
- 糸井
-
その人の代わりに歌ってる(笑)。
- 清水
-
そう、「その人の代わりやるから、こっち聞いて」っていうのは強いと思う、人より。
- 糸井
-
だって、井上陽水さんもやったよね。
- 清水
-
うん。
- 糸井
-
無理だろ、普通に考えたら(笑)。
- 清水
-
今考えたらそうだね(笑)。
- 糸井
-
清志郎さんをなんとかしちゃったもんね。初期と今とでは、圧倒的に今のほうが似てるよね。
- 清水
-
あ、そうですか。
- 糸井
-
うん。改めて自分で考えたことはない?
- 清水
-
でも、モノマネしてる人ってみんなそうだけど、レパートリーっていうと10代のときに影響された人止まりで、30代、40代超えてから増えたのは、寂聴さんと真矢みきさんぐらい(笑)。
- 糸井
-
ということは、今、仮に西野カナさんのマネしなさいって言われたら、西野カナさんのことがそんなによく聞こえないんだね。
- 清水
-
そうです。よくわかりますね。
- 糸井
-
例えば水の中に氷が浮かんでる絵を描く人は、見えてるから描けるわけですよね。
- 清水
-
うん。
- 糸井
-
でも、ぼくらにはその氷が浮かんでるのが見えてないんですよ。

- 清水
-
そうね。
- 糸井
-
解像度が低い。だから、描きようがない。
- 清水
-
確かにそう。だから、安室奈美恵さんがやめるっていうときに号泣する人たちの気持ちに1回なろうと思うんだけど、やっぱりなれない(笑)。
- 糸井
-
その世代の清水ミチコがいたら、安室奈美恵さんのコピーができてるんだろうね、きっと。
- 清水
-
うん、きっとそうだと思いますね。
- 糸井
-
絵描きが見ている世界は違うものなんだよっていうのと、まあ、おそらく同じなんだろうなと思いながら、今日、清水ミチコさんに会って、初めて、あ、できないんだって。
- 清水
-
聞こえ悪いな(笑)。
- 糸井
-
つまり、10代のとき夢中になった人はできるってことは、そのときは受け止める側の脳細胞がバッチバッチに‥‥
- 清水
-
そうそう。感受性がもう、歌で泣いたりとか、一緒に喜んだりとかしてたのが、やっぱりこの年になると、出ないんですよね、そういう歌手の人って。

- 糸井
-
脳がついてってない(笑)。
- 清水
-
解像できない。
- 糸井
-
年とってからでも好きになった人はいる?
- 清水
-
瀬戸内寂聴さんとか、山根会長とか(笑)。
- 糸井
-
山根会長(笑)。
- 清水
-
ああいうなんか、面白がりましょうよっていう気持ちはやっぱりある。
- 糸井
-
あのへんは、普通の人が意に介してないものを、ちょっとピントを合わせて見てるんだよね、きっと。
- 清水
-
あ、そうですね(笑)。
- 糸井
-
だから、商売にするには本当はちょっと足りないでしょうね。
- 清水
-
ああ、そうですね。
- 糸井
-
ユーミンと山根会長を比べると、完成度が(笑)。
- 清水
-
全然違う(笑)。
- 糸井
-
でも、ちょっと混ぜるっていうぐらいでいいから(笑)。
- 清水
-
そう。もう余生はそうやって暮らす(笑)。

- 糸井
-
でも、ベースになるユーミンさんは今でも聞きたい人がいるわけだから、案外、浮世に流れなかったんですよね。モノマネの人ってけっこう難しくて、大ヒットが出たりすると、その人と共に消えるじゃないですか。
- 清水
-
ああ、本当だ。
- 糸井
-
でも、あなたの場合は、なんやかんやいって、編集し直すっていうか(笑)。もう1回、ここに置けば違って見えるとか(笑)。
- 清水
-
そうそう(笑)。ごまかし、ごまかし。
- 糸井
-
それで武道館ができちゃうんだから。
- 清水
-
本当だね。私の好きな桃井さんとか矢野さんとかユーミンさんの世代が、まずキャラクターが強いっていうのもありますよね。みんな知ってるし。
- 糸井
-
そうか、お客も濃いんだ。好き度がね。
- 清水
-
そうそう。
- 糸井
-
「またユーミンやって!」って言いながら来るわけだもんね。
- 清水
-
そうですね。私の心を込めた歌はいいから、ユーミンやってって(笑)。
- 糸井
-
(笑)。心を込めた歌のほうに、よく行き過ぎないでとどまってます(笑)。

- 清水
-
そういえば昔、糸井さんのメールで、
「どうせ清水は今、田中眞紀子さんを練習中なんだろ?」
って書いてあって、
そうだ、田中眞紀子さんをやんなきゃ
って自分に火がつきました。
- 糸井
-
(笑)。あ、それは自分では思いついてなかったんだ。
- 清水
-
うん、そのときはね。
- 糸井
-
じゃ、またもし思いついたら、ぼく、言うよ。
- 清水
-
うん。お願いします(笑)。
- 糸井
-
つまり、それはなんで言ったかっていったら、見たいと思ったから(笑)。
- 清水
-
あ、リクエストだったの(笑)。
- 糸井
-
「あれやって」ってやつなの(笑)。
- 清水
-
お任せください。伸びるから、ぜひリクエストを(笑)。
- 糸井
-
飴細工のおじさんに「ゴジラ作って」って言ってるみたいな(笑)。
- 清水
-
「ゴジラか、こんなんかな」って(笑)。
- 糸井
-
今、じゃ、山根会長以外だと?
- 清水
-
大坂なおみさんかな。「スゴク、ツカレタ」(笑)。
- 糸井
-
ああ(笑)。
- 清水
-
めっちゃかわいいですもんね、あの人。そのくらいですかね、ここ最近は。
- 糸井
-
女の人のほうがいいしね、できたらね。
- 清水
-
うん。