- 糸井
- どうして声が似るの、っていうのは聞かれたことある?
- 清水
- ああ、ない。どうしてだろう。
- 糸井
- おかしいよね。声が似るってさ。
- 清水
- 本当だ。しかもそれで生計立ててるってね(笑)。
- 糸井
- だってユーミンさんと矢野顕子さん、似てないじゃん。
- 清水
- うん、似てないですね。全然違う。
- 糸井
- どうして私が挟まると(笑)。

- 清水
- ‥‥自分ではわかんないな。どうしてなんだろう。
- 糸井
- どうしてなんだろうね。
- 清水
-
うん。
でも、私も松村(邦洋)さんもそうですけど、
自分で表現したい
ってものがあんまりない人が得意かもね。
「私の歌を聴いて」って気持ちに全然ならないけど、
「私が演じる誰かを聴いて」っていう気持ちにはすごいなる。
- 糸井
- その人の代わりに歌ってる。
- 清水
-
そう、
「その人の代わりにやるから、聴いて。面白がって」
っていう気持ちは強いと思う、人より。
- 糸井
-
ああ。
そうだ、井上陽水さんもやったよね。
- 清水
- うんうん。
- 糸井
- 無理だろ、普通に考えたら(笑)。
- 清水
- 今考えたらそうだね(笑)。
- 糸井
-
(忌野)清志郎さんをなんとかしちゃったもんね。
「なんでやろうと思った?」って、
改めて自分で考えることはない?

- 清水
-
でも、10代のときに影響された人が多いな。
30代、40代超えてから増えたレパートリーっていうと、
瀬戸内寂聴さんぐらいで(笑)。
- 糸井
-
ということは、今例えば流行ってる、
仮に西野カナさんのマネしなさいって言われたら、
西野カナさんのことがそんなによく聞こえないんだね。
- 清水
-
そうですね。
糸井さん、よくわかりますね。
- 糸井
-
絵描きさんがね、
例えば水の中に氷が浮かんでますっていう
スケッチとか絵を描けるじゃないですか。
それは、見えてるから描けるわけですよね。
- 清水
- うん。
- 糸井
- でも、ぼくらにはその氷が見えてないんですよ。
- 清水
- そうね。
- 糸井
- うん。解像度が低い。
- 清水
- そうそうそう。
- 糸井
- だから、描きようがない。
- 清水
-
そうそうそう。本当確かにそう。
だから、安室奈美恵さんがやめるっていうときに
号泣した人たちの気持ちに1回なろうと思っても、
やっぱりなれない。
- 糸井
-
その世代の清水ミチコがいたら、
安室奈美恵さんのコピーができてるんだろうね。
- 清水
- うん、きっとそうだと思いますね。
- 糸井
- 年とってからでも好きになった人はいる?
- 清水
-
瀬戸内寂聴さんとか、山根会長とか(笑)。
なんか、面白がりましょうよっていう気持ちは
やっぱりあるから。
- 糸井
-
普通の人が意に介してないものを、
ちょっとピントを合わせて見てるんだよね、きっと。
- 清水
- ああ、そうですね。
- 糸井
-
モノマネの人ってけっこう難しくてさ、
大ヒットが出たりすると、
ほとぼりが冷めればその人と共に消えるじゃないですか。
でも、ベースになるユーミンは
今でも聴きたい人がいるわけだから、
案外、浮世に流れなかったんですよね。
- 清水
- ああ、本当だ。

- 糸井
-
あなたの場合は、
なんやかんやいって、編集し直すっていうか(笑)。
- 清水
- 編集(笑)。
- 糸井
- もう1回、ここに置けば違って見えるとか(笑)。
- 清水
- そうそうそう(笑)。ごまかし、ごまかし。
- 糸井
- それで武道館ができちゃうんだから。
- 清水
-
本当だね。
私の好きな桃井さんとか矢野さんとかユーミンさんの世代が
まず強いっていうのもありますよね、キャラクターが。
みんな知ってるし。
- 糸井
- そうか、お客さんの好き度も濃いんだね。
- 清水
- あ、そうそうそう。
- 糸井
-
「またユーミンやって!」って言いながら来るわけだもんね、
要するにね。
- 清水
-
そうですね。
私の心を込めた歌はいいから、ユーミンやってって(笑)。

- 糸井
-
俺も清水さんに言われたな、
「誰もあんたにそんなこと望んでない」
- 清水
- いつ言いましたっけ?(笑)
- 糸井
- 大昔にさ、筋トレしてたじゃない。
- 清水
- ああ、あれ、どうなったの?
- 糸井
- いや、やってないよ。
- 清水
- もうやめた?
- 糸井
- サボってるんだよ、ずっと(笑)。
- 清水
- あ、そう(笑)。
- 糸井
-
で、そのときは面白かったから
どんどん前のめりにやっていて。
あるときその話題になって、
「ほら、ほら」って鍛えた胸とかを突き出したら、
「誰もあんたにそんなこと望んでない」

- 清水
- ひどいねえ、言いそう(笑)。
- 糸井
- で、その一言が、なんて当たってるんだろうって。
- 清水
-
私、その頃ね、ちょうど内山君に、
「これ食べたら太るかな」って言ったら、
「清水さんが太って困る人、どこにいるんですか」
って言われて。
しまった、自分だけがこう、美に関して(笑)‥‥
- 糸井
-
ああ。そのへんって、いい、いいね。
俺はね、
そこに感動したんですよ、実は。
- 清水
- どういうこと?
- 糸井
-
ツッパってないよね。
どうでもいい番組における、
どうでもいい居方についても、
別にそれはそれでっていう。
- 清水
- どうでもいい番組とは何だ、きみ。
- 糸井
- いや、一切ないんだけど(笑)。
- 清水
- うん(笑)。
- 糸井
-
例えば清水ミチコがゲストなんだけど、
結局二言ぐらいしかしゃべんなくても、
お笑いの本職の人だとわりと気にするんだけど、
全然気に(笑)‥‥。
- 清水
- しょうがないじゃん、って。
- 糸井
- 番が来なかった。
- 清水
- もう終わった。
- 糸井
-
で、そのときには、
まあ、ピアノも弾くしみたいな。
- 清水
- いざというときには(笑)。

- 糸井
-
あの、だから、
全部アリですよねっていうのは、
ちょっといいですよね。
- 清水
- ふーん。
- 糸井
- 意識はしてないよね。
- 清水
- うん、してない。
- 糸井
-
清水さんがいい気にならないモードを保っていられるのは、
いい気になっちゃいけないと思ってるからですか。
- 清水
- いえ、そんな立場にないからだよ(笑)。
- 糸井
-
ああ‥‥。
じゃ、役割としてさ、
「多少偉ぶってくれないと困るんですよね」
って場面に呼ばれることはないですか。
- 清水
- あ、審査員とかね? うんうん。
- 糸井
- それとか、新人が集まってる場所とか。
- 清水
- ああ、そうですね、うん、あるある。
- 糸井
- そのときは、役目として何かこう、しますよね、当然ね。
- 清水
-
うん、そうですね。
やっぱりちょっと偉そうなほうが、
その場合いいんですよね、おさまりが。
- 糸井
-
おさまり、おさまり。
で、それを経験していくと、
そういう人にどんどんなっていっちゃうじゃないですか。
- 清水
- 糸井さんもそう、やっぱり?
- 糸井
-
うん。
だって俺、大体どこ行っても今、年上になってるしさ。
- 清水
- ああ、そうかそうか。
- 糸井
-
で、自分はその、いい気に‥‥多分なってないと思うんです。
なってないのは、
なんないようにしようとしてるからだと思ったんですよ。
で、清水さんとかもなってないのは、
理由の一つはさ、やっぱり、
失われるものが大き過ぎるからだよね。
- 清水
- ああ、そうかもね、うん。
- 糸井
-
そうなっちゃったら
これできない、あれできない
が、あるよね。
- 清水
-
そうね、うん。
あとやっぱりほら、
自分を客観的に見てナンボの商売だから、私たちは。
- 糸井
-
ああ、そうかそうか。
「こう見えてるよ」が仕事だからだ。
- 清水
- そうそう。それもあると思う。
- 糸井
-
そうだ、そうだ。なるほどね。
「こう見えてるよ」っていうのがプロデュースの原点だね。
- 清水
- あ、そうかね、うん。
- 糸井
-
モノマネがプロデュースの原点です。
ほら、終わった。
- 清水
- やめてよ、ちょっと。軽薄(笑)。
- 糸井
-
こんな終わり方でいいかな?
いや、面白かった。
- 清水
- 面白かった。あっという間。
- 糸井
-
こういう会話は
仕事じゃないとやっぱりありえないんだよなあ。
- 清水
-
そうだねえ。
こういう機会、ほんとにないもんね。
またやりましょうよ。
- 糸井
- やりましょう。

(おわります)