もくじ
第1回インタビュアー・ミチコ。 2019-02-05-Tue
第2回「わたしはこう感じてますよ」 2019-02-05-Tue
第3回プロデュースの原点。 2019-02-05-Tue

よく食べ、よく寝て、よく生きていきたい、26歳です。

あらためて聞く、お互いのこと

あらためて聞く、お互いのこと

担当・なかこー

第3回 プロデュースの原点。

糸井
どうして声が似るの、っていうのは聞かれたことある?
清水
ああ、ない。どうしてだろう。
糸井
おかしいよね。声が似るってさ。
清水
本当だ。しかもそれで生計立ててるってね(笑)。
糸井
だってユーミンさんと矢野顕子さん、似てないじゃん。
清水
うん、似てないですね。全然違う。
糸井
どうして私が挟まると(笑)。

清水
‥‥自分ではわかんないな。どうしてなんだろう。
糸井
どうしてなんだろうね。
清水
うん。
でも、私も松村(邦洋)さんもそうですけど、
自分で表現したい
ってものがあんまりない人が得意かもね。
「私の歌を聴いて」って気持ちに全然ならないけど、
「私が演じる誰かを聴いて」っていう気持ちにはすごいなる。
糸井
その人の代わりに歌ってる。
清水
そう、
「その人の代わりにやるから、聴いて。面白がって」
っていう気持ちは強いと思う、人より。
糸井
ああ。
そうだ、井上陽水さんもやったよね。
清水
うんうん。
糸井
無理だろ、普通に考えたら(笑)。
清水
今考えたらそうだね(笑)。
糸井
(忌野)清志郎さんをなんとかしちゃったもんね。
「なんでやろうと思った?」って、
改めて自分で考えることはない?

清水
でも、10代のときに影響された人が多いな。
30代、40代超えてから増えたレパートリーっていうと、
瀬戸内寂聴さんぐらいで(笑)。
糸井
ということは、今例えば流行ってる、
仮に西野カナさんのマネしなさいって言われたら、
西野カナさんのことがそんなによく聞こえないんだね。
清水
そうですね。
糸井さん、よくわかりますね。
糸井
絵描きさんがね、
例えば水の中に氷が浮かんでますっていう
スケッチとか絵を描けるじゃないですか。
それは、見えてるから描けるわけですよね。
清水
うん。
糸井
でも、ぼくらにはその氷が見えてないんですよ。
清水
そうね。
糸井
うん。解像度が低い。
清水
そうそうそう。
糸井
だから、描きようがない。
清水
そうそうそう。本当確かにそう。
だから、安室奈美恵さんがやめるっていうときに
号泣した人たちの気持ちに1回なろうと思っても、
やっぱりなれない。
糸井
その世代の清水ミチコがいたら、
安室奈美恵さんのコピーができてるんだろうね。
清水
うん、きっとそうだと思いますね。
糸井
年とってからでも好きになった人はいる?
清水
瀬戸内寂聴さんとか、山根会長とか(笑)。
なんか、面白がりましょうよっていう気持ちは
やっぱりあるから。
糸井
普通の人が意に介してないものを、
ちょっとピントを合わせて見てるんだよね、きっと。
清水
ああ、そうですね。
糸井
モノマネの人ってけっこう難しくてさ、
大ヒットが出たりすると、
ほとぼりが冷めればその人と共に消えるじゃないですか。
でも、ベースになるユーミンは
今でも聴きたい人がいるわけだから、
案外、浮世に流れなかったんですよね。
清水
ああ、本当だ。

糸井
あなたの場合は、
なんやかんやいって、編集し直すっていうか(笑)。
清水
編集(笑)。
糸井
もう1回、ここに置けば違って見えるとか(笑)。
清水
そうそうそう(笑)。ごまかし、ごまかし。
糸井
それで武道館ができちゃうんだから。
清水
本当だね。
私の好きな桃井さんとか矢野さんとかユーミンさんの世代が
まず強いっていうのもありますよね、キャラクターが。
みんな知ってるし。
糸井
そうか、お客さんの好き度も濃いんだね。
清水
あ、そうそうそう。
糸井
「またユーミンやって!」って言いながら来るわけだもんね、
要するにね。
清水
そうですね。
私の心を込めた歌はいいから、ユーミンやってって(笑)。

糸井
俺も清水さんに言われたな、
「誰もあんたにそんなこと望んでない」
清水
いつ言いましたっけ?(笑)
糸井
大昔にさ、筋トレしてたじゃない。
清水
ああ、あれ、どうなったの?
糸井
いや、やってないよ。
清水
もうやめた?
糸井
サボってるんだよ、ずっと(笑)。
清水
あ、そう(笑)。
糸井
で、そのときは面白かったから
どんどん前のめりにやっていて。
あるときその話題になって、
「ほら、ほら」って鍛えた胸とかを突き出したら、
「誰もあんたにそんなこと望んでない」

清水
ひどいねえ、言いそう(笑)。
糸井
で、その一言が、なんて当たってるんだろうって。
清水
私、その頃ね、ちょうど内山君に、
「これ食べたら太るかな」って言ったら、
「清水さんが太って困る人、どこにいるんですか」
って言われて。
しまった、自分だけがこう、美に関して(笑)‥‥
糸井
ああ。そのへんって、いい、いいね。
俺はね、
そこに感動したんですよ、実は。
清水
どういうこと?
糸井
ツッパってないよね。
どうでもいい番組における、
どうでもいい居方についても、
別にそれはそれでっていう。
清水
どうでもいい番組とは何だ、きみ。
糸井
いや、一切ないんだけど(笑)。
清水
うん(笑)。
糸井
例えば清水ミチコがゲストなんだけど、
結局二言ぐらいしかしゃべんなくても、
お笑いの本職の人だとわりと気にするんだけど、
全然気に(笑)‥‥。
清水
しょうがないじゃん、って。
糸井
番が来なかった。
清水
もう終わった。
糸井
で、そのときには、
まあ、ピアノも弾くしみたいな。
清水
いざというときには(笑)。

糸井
あの、だから、
全部アリですよねっていうのは、
ちょっといいですよね。
清水
ふーん。
糸井
意識はしてないよね。
清水
うん、してない。
糸井
清水さんがいい気にならないモードを保っていられるのは、
いい気になっちゃいけないと思ってるからですか。
清水
いえ、そんな立場にないからだよ(笑)。
糸井
ああ‥‥。
じゃ、役割としてさ、
「多少偉ぶってくれないと困るんですよね」
って場面に呼ばれることはないですか。
清水
あ、審査員とかね? うんうん。
糸井
それとか、新人が集まってる場所とか。
清水
ああ、そうですね、うん、あるある。
糸井
そのときは、役目として何かこう、しますよね、当然ね。
清水
うん、そうですね。
やっぱりちょっと偉そうなほうが、
その場合いいんですよね、おさまりが。
糸井
おさまり、おさまり。
で、それを経験していくと、
そういう人にどんどんなっていっちゃうじゃないですか。
清水
糸井さんもそう、やっぱり?
糸井
うん。
だって俺、大体どこ行っても今、年上になってるしさ。
清水
ああ、そうかそうか。
糸井
で、自分はその、いい気に‥‥多分なってないと思うんです。
なってないのは、
なんないようにしようとしてるからだと思ったんですよ。
で、清水さんとかもなってないのは、
理由の一つはさ、やっぱり、
失われるものが大き過ぎるからだよね。
清水
ああ、そうかもね、うん。
糸井
そうなっちゃったら
これできない、あれできない
が、あるよね。
清水
そうね、うん。
あとやっぱりほら、
自分を客観的に見てナンボの商売だから、私たちは。
糸井
ああ、そうかそうか。
「こう見えてるよ」が仕事だからだ。
清水
そうそう。それもあると思う。
糸井
そうだ、そうだ。なるほどね。
「こう見えてるよ」っていうのがプロデュースの原点だね。
清水
あ、そうかね、うん。
糸井
モノマネがプロデュースの原点です。
ほら、終わった。
清水
やめてよ、ちょっと。軽薄(笑)。
糸井
こんな終わり方でいいかな?
いや、面白かった。
清水
面白かった。あっという間。
糸井
こういう会話は
仕事じゃないとやっぱりありえないんだよなあ。
清水
そうだねえ。
こういう機会、ほんとにないもんね。
またやりましょうよ。
糸井
やりましょう。

(おわります)