糸井

…これすごいな。全部俺に聞かれてるな。

清水

私も聞きたいことがいっぱいあって。

糸井

いや、ぼくもね、清水さんについては、
言ったり聞いたりしてみたかったのよ。

清水

うんうん。

糸井

清水さんは、大学の勉強はしたの？

清水

うん、家政科で。
うちの田舎って短大とか大学行く以上は、
教師免状を取るのが当たり前みたいな常識があったの。
だから、それを取るまではちゃんと勉強しましたね。

糸井

へっちゃらなんだ、そういうの。

清水

へっちゃらってことはないですけど、
料理は好きだし、面白かった。

糸井

ドロップアウトをしてないんですよね、つまりね。

清水

うん、してないです。
親に心配かけるようなことはしてない。

糸井

なのに、やってることは、ずーっと。

清水

とにかくうちの両親は、
森山良子さんの「ざわわ」をやめろやめろって（笑）。

糸井

（笑）

清水

「まあまあ、もう今年でやめますから」って言いながら
30年もやって（笑）。

糸井

森山良子さんを見てるとき、
清水ミチコを思い浮かべるように（笑）‥‥

清水

なっちゃうじゃないか（笑）。

糸井

なってしまう（笑）。

清水

うちの家系はひいおじいちゃんが
エイザブロウって名前で、
「嘘つきエイザ」って呼ばれてて（笑）。

糸井

うん（笑）。

清水

普通は自分の名誉とかお金のために嘘をついたりするけど、
そうじゃなくて、
本当に自分の楽しみのためにだけ嘘ついてて。

糸井

性欲のように嘘つきな欲。

清水

そうそうそう。息をするように（笑）。
例えばお坊さんのところに行って、
「田中んちのじいちゃんが死んだから、すぐ行け」って、
真顔で言うと飛んで行くでしょう？　
それを見て、１人ですっごい笑ってんだって。
「飛んでった、飛んでった」って（笑）。

糸井

単純な嘘だね（笑）。

清水

そう。
それを何回も繰り返して
１人で笑ってたって人が私の祖先なの（笑）。

糸井

ちゃんといい子だったんですか。
おじいちゃんは嘘つきかもしれないけど、「私」は。

清水

私は、いい子でもなく悪い子でもなく、
パッとしないような子だったけど、
やっぱり糸井さんの「ヘンタイよいこ新聞」とか
そういうものを高校のときに読んだり、
『オールナイトニッポン』聞いたりとかして、
だんだんそういうお笑いの世界みたいなのを‥‥

糸井

パッとしていったわけ？

清水

自分の中ではね。
ただ、ほかの人はみんな恋愛してるなかで、
自分だけが「ビックリハウス」に載ったとか、
ラジオで投稿読まれたとか、
幸せの向く方向がちょっと違う感じだった。

糸井

ハガキ職人ですよね、いわば。

清水

そうそう。
ハガキ職人ってけっこう幸せっていうか、
夢ありましたよね。

糸井

そうだよね。

糸井

昨日ね、
ああそうだ、清水さんに会うんだなと思って、
何か一つぐらい自分から言いたいなと思って発見したのが、
「『私はこう感じてます』っていうことをしてるんだね」
ってことだったの。

清水

あ、本当？　当たってます（笑）。

糸井

ねえ。
なぜそういうことを
お風呂に入りながら考えたかというと、
批評してないんだよ、全然。

清水

あ、うれしい。

糸井

「通信販売をする瀬戸内寂聴さん」とかあるじゃないですか。

清水

はい（笑）。

糸井

現実であのとおりにはしてないんだけど、
私にはそう見えてますよっていうだけでしょう？

清水

そうですね、うん。

糸井

で、いいとか悪いとか一つも言ってないんですよ。
「私はあなたのことを
こんなふうに面白いなあと思って見ちゃってますよ」

清水

「ちょっと一回やってみますね」って。

糸井

そうするとお客さんが、
「そう見えてる、そう見えてる」って（笑）。

清水

そうそうそう（笑）。
共感の人が多いでしょうね、きっと。

糸井

共感、共感ですよね。
ツッコみ過ぎないじゃないですか。

清水

あ、そうですね（笑）。

糸井

モノマネだからそういうふうに表現できるわけで、
文章で書いてもつまんないよね。

清水

うん、そうだと思います。

糸井

でも、文章は文章で面白いんですよ。
ぼく、清水さんの文章を取り上げて
「みんな、このくらい書けるようになりなさい」
って言った覚えがありますよ。

清水

本当？

糸井

うん。
言っては悪いですけど、
文章の修業をしたつもりは全然ないわけだから。

清水

うんうん。

糸井

「修業したつもりのない人が
こんな文章を書けるってことに
もっとおののいてください」
って、社内で言ったことありますよ。

清水

わあ、うれしい。頑張ろう。

糸井

ご本人は、文章は何だと思ってるの？

清水

ブログなんかはやっぱり、
寝る前に「こういう１日だった」ってことを書くと
スッキリして寝られるので、
トイレみたいな感じですかね。排泄（笑）。

糸井

ほう。
でも、何も思わないで生きてたら、
書く段になって書けないじゃないですか。

清水

うんうん。

糸井

思ってる分量は多いよね。

清水

うん、きっと多いと思う。
高校のときに面白ノートというのがあって、
「今回も書きましたけど、どう？　読む？」
みたいな感じでクラス中に回して、
読んだ人が笑ってると、もうすごい幸せみたいな。

糸井

ああ。
ちょっと似てるんですよね。
生い立ちというか成り立ちが、さくらももこさんに。

清水

ああ、そう。

糸井

思わない？

清水

ああ、でも、ちょっとそうかな。

糸井

思ってることを別に人に言うわけじゃないけど、
「あいつがこうしたな、ああしたな、
あ、おかしいことしてるなあ」って見てて。

清水

あとで、ちまちまと（笑）。

糸井

頭とんがらせたりなんかしながら描いて。

清水

で、本人幸せっていうね。

糸井

そう。いっくらでも描けるって言ってたもん。

清水

ああ、そう。

糸井

「ネタが尽きるってことは私にはないんじゃないか」って。

清水

へぇー。

糸井

だから、今の清水さんの話も、
面白がり、面白がられる、みたいなのが原点。

清水

あ、そうですね、うん。

（つづきます）