もくじ
第1回ことばを持たなかった子供時代 2019-03-19-Tue
第2回ちょっとずつ、人間らしく 2019-03-19-Tue
第3回果たせなかった想い 2019-03-19-Tue
第4回漫画を描くということ 2019-03-19-Tue

漫画家・イラストレーター・たまにデザイナー。
「アユム」と読まれがちな「アユミ」です。女子バスケの漫画を描いています。

伝える仕事を選んだのは、</br>いつも伝えられなかったから

第3回 果たせなかった想い

引退試合の日、僕は名前を呼ばれなかった。

かろうじてユニフォームはもらっていたものの
そもそも戦力外だったわけだから、
強豪相手の試合で出してもらえるはずもない。

あんなに練習したのに、
絶対叶えるんだと信じてやまなかったのに。
「自分がプレーする姿で感謝を伝える」という
ささやかな夢は、あまりにもあっけなく終わってしまった。

仲間たちは、「よく辞めなかったよね」と労ってくれたけど、
想いを伝えられなかった虚しさは、
卒業してからも尾を引いた。

本当は自分のプレーで伝えたかった。
言葉だけでは伝わるはずのない感謝を。
何もできないところから仲間に入れてもらった自分だったからこそ、
その夢にかける想いは強かった。

何年間かは虚しさを引きずったが、時間を経ていく中で
それはあるところに着地していった。

この無念を悔やみ続けるんじゃなくて、
誰かのために活かしたい。

バスケットボールが教えてくれた
色々な感情の数々、人とのつながりや、
もっと言葉にできないたくさんのもの。

そういうものを、作品にすればいいんじゃないか?
きっと「作品」という形にすれば、より沢山の人に届けられるし、
ポジティブなものに変換できる。

少し話が戻るが、僕が「バスケ部に入る!」と決めたのは中3の夏で、
高校入学まで約1年間あった。
実はその間、退屈しのぎのためだけに
バスケ漫画の設定を描いていたのだった。

果たされなかった夢が、思いがけず新しい夢を連れて来た。
今回こそは必ず叶えてやる。

僕はバスケ漫画を描くと決めた。

(つづきます)

第4回 漫画を描くということ