表現を仕事にするって?
担当・あおね

第3回 目に映る世界すべてがデザイン
- 私
-
では、聞いていきますね。
よろしくお願いします。
- 小出
-
え、緊張してきた。
- 私
-
雑談の気持ちで!(笑)
小出が、自分のデザインで
お金をもらい始めたのはいつ?
結構、経つよね?
- 小出
-
うん。
20歳くらいの時に、まきちゃんから、
「友達とピアノのリサイタルをやるから、
チラシとかデザインしてみない?」って言われて。
「やるやるー!」って軽く返事してやってみたら、
ちゃんとしたのができちゃったから、
そこからお金もらったかな。
そこから、コンスタントに作っている感じ。

- 私
-
13年前!
その前までは、そういう絵やデザインを
自分の中でやってたりしたの?
- 小出
-
そうだね。
紙1枚の上で何かを表すみたいなことはしてた。
- 私
-
それは休みの日とかに
「よーし、絵を描こう!」みたいになるの?
- 小出
-
「週末にはキャンバスを立てて窓辺で…」
みたいな気取ったことは嫌で。(笑)
チラシの裏とか、何かの隅っことかに
思いついたら何か書くってタイプだから、
時間もなにも決まってないかな。
ただ、思いついたことをそこにぎゅっと
表すみたいなのはずっとやってるかな。
- 私
-
それは子供のころから?
- 小出
-
そう、子供のころからかな!
- 私
-
それは、何を思いついたら書くの?
やろうと思う瞬間というか。
- 小出
-
私はさ、空を見ていて「雲の形が○○に似ている」って
発想したものをすぐ表現する子供だったの。
それを「いいぞ!もっと言え!」みたいな両親なの。
「お前はそう見えるのか、俺にはこう見えるぞ」
みたいのを言い合ったりね。
「あなたには見えているもの、
私には見えてないけど認めるよ。」みたいな
空想めいたものでしゃべれる家族なの。
だから、現実のものよりも空想のものに
重きを置いていても何も言われない環境だったの。
- 私
-
なんか、ご両親を知っているから想像つくね。
それが小出の絵の元?
- 小出
-
そう。
たとえば「おなか痛い」と思ったら、
おなかが痛いとかどんよりしている絵を描くの。
- 私
-
それは「おなか痛い」って口に出すのと、
同じ感覚で絵を描いているってことなのかな?
- 小出
-
そうそうそうそう。
- 私
-
じゃあ、書くときは気分に左右される?
楽しいときには超ハッピーな絵を描くみたいな。
- 小出
-
そうそう。
でも、それはみんなと合ってないかも。
楽しいとき、みんなは女の子が跳んでて音符とか
書くかもしれないじゃん、一般的には。
私は「超ハッピー」っていう感情を持っているんだけど、
ただ点と線をつないでぐるぐる書いただけが
私にとっては「超ハッピー」の表現かもしれないし。
私的なハッピーであって、
人からみたらハッピーな絵ではない可能性がある。
- 私
-
おもしろいね。
- 小出
-
芸術家とか絵を描く人は、
変わっている人が多いって言われるけど、
本当、どれだけ変になれるかっていうのはあると思う。
自分の世界で、色やものがどういう風に見えてるかっていう。
- 私
-
小出から見ている世界が、
私と同じように映っているとは限らないわけだね。
- 小出
-
そうそう。
その表現を絵やデザインでしているよね。
あとはちょっとだけ、
「変わっている自分をわかってほしい」みたいな
自己顕示欲みたいのが強く出る時期もあるかな。
- 私
-
「自分が楽しくて、自分だけがこの表現が分かれば良い」
じゃないときもあるんだ?
「これを見てくれ!私は今こう思っている!」みたいな。
- 小出
-
ある。
言葉でいうよりも絵で描くほうがうまく出せる気がする。
あと、私にとって「文字」も絵のひとつだから、
みんなにとって字は言葉ための手段であるけど、
字の「とめ・はね・はらい」で表現したいみたいのはある。
- 私
-
文字自体が絵とかデザインかぁ。
改めて聞いたことなかったけど、
そこまで考えていて、
高校進学、大学進学、デザインや絵を
学ぼうとは思わなかったの?
- 小出
-
確かに!
うーん。興味ないんだよね。
- 私
-
え?
興味ない?
- 小出
-
誰かから教えてもらうもんじゃないって思いが
自分の中にはあって。
歴史を学ぶなら授業が必要なのもわかるよ。
学校とかを否定するわけじゃないけど。
芸術は教えてもらうより感性だと思っているのかも。
- 私
-
デザインは?
- 小出
-
デザインは教えてもらわないとだめかも!(笑)
- 私
-
子供のころ何になりたかったの?
- 小出
-
考古学者。
- 私
-
デザインじゃなかったんだね。
- 小出
-
面白いのが、
私の世界観は西洋のアートでできているってだけなの。
西洋文化。
そうしたときに、勉強しなきゃいけないのは
英語じゃんって常に思ってたの。
- 私
-
それは西洋文化を理解するためにってこと?
- 小出
-
うんうん。
- 私
-
あ、すごい。
小出がずっと、英語を勉強している理由につながった。
だから、高校も英語コースで、
大学でも英語を勉強してたんだ。
- 小出
-
うふふ。そうなのよ。
つながった?(笑)
小さいときから英語に興味はあったんだけど、
今はツールの一つだなと。
私は、仕事にもあまり興味がなくて。(笑)
西洋のように物事を整えたいだけなのね。
- 私
-
今は、本業で事務員をしているよね。
デザインをメインの仕事にしようと思わないの?
- 小出
-
それはない。
なんでないんだろ、わかんないんだけど。
- 私
-
今、副業だけど、
デザインでお金もらってるじゃん?
- 小出
-
メインの仕事にするってことはさ、
すごく自分を消すことになると思ってるのかも。
お客さんに合わせることが必要になる。
- 私
-
会社とかに入ったら、
会社の方向性とかテイストに合わせるとか?
お客さんの希望するデザインにしなきゃいけないみたいな?
- 小出
-
そうそう。そういうのがいやで。
わがままなの。
でも、本当に好きだからわがままになるのであって。
やりたくないから言っているんじゃなくて、
ただ自分の時間に味わいたい何かな気がする。
- 私
-
趣味の延長線なのかな?
- 小出
-
そう。
「なんで整えないんだろう」っていうのを
ただ、整えたいだけなの。
- 私
-
じゃあ、クライアントは口出ししません、
すべては小出の思うように作ってくれたものを買います
ってだけだったら本業にする?
- 小出
-
それはもう私にとっては働いてないと同然だね。(笑)
- 私
-
納期くらいは設定しよう。(笑)
デザインはすべてお任せ。
- 小出
-
最高じゃんそれ。
- 私
-
じゃあ、ネックになっているのは
自分の思う通りにできないってことだね。
- 小出
-
うん!!!!
- 私
-
じゃあ、誰かのためとかじゃないんだね。
- 小出
-
じゃないじゃない!!
やりたいからやってるだけ。
それがたまたまお金になっているから副業なんだよね。
自分が好きでやっているうちに、
身に付いたことで人を助けることができるっていうのが
自然に増えていっただけ。

- 私
-
お金にしようみたいな気持ちじゃないってことだね。
- 小出
-
そう、目的が最初じゃない。
続けてきて、できるようになったから、
相手に対して「どうですか?これ使いますか?」みたいな
選択肢の一つとして小出があるだけなのよ。
- 私
-
そうかー。
相手の選択肢のひとつとして提示しているんだ。
- 小出
-
そうそう。
好きだからやってんのよ。
だから、デザインについて話してくださいって
言われたいくらでも話せるよ。
見えているもの全部がそうなんだもん。
そりゃもう大変だよ(笑)
- 私
-
あ、じゃあ小出は四六時中見えているものを
デザインとして「あれは○○だなぁ」とか思っているんだ。
- 小出
-
そう、だから尽きることはない。
- 私
-
芸術は人に教わるものじゃないって話していたでしょ?
デザインへの感性は生活の中で磨いているのかな?
- 小出
-
自覚はないけど、
自然とトレーニングしているかもしれない。
楽しくて仕方がないの。
自分で目に見えるものを課題にして解を探している。
誰かに言われたとかじゃなくて自分でやってるの。
問題を出す→考える→解答と何百周もやっているから、
人に教えてもらうとは別の意味があると思っているし、
これをやっていると学び方は一方向じゃないなと思う。
- 私
-
目に映るものは他人がデザインしたものじゃん?
どういう気持ちで見ているの?
- 小出
-
「私にはこんな絵は描けない」っていう人は
世の中に沢山いるわけじゃん。
「何これ、うまー!どうやって描いてんの?」みたいな。
2Dである紙の上に、彼らが見ている3Dの世界を
のせていくわけでしょ。
そういうものに出会うと
「私はここまで見えているな」
「でもここは見えないな」ってのがあるの。
人が描いた世界をみて
「自分はここまで見えているな」っていうのを
確認していたりする。
- 私
-
「見える・見えない」なんだ。
「この表現はできないな」
「この技術はないな」とかじゃないの?
- 小出
-
もちろん、それもあるんだけど、
「見える・見えない」が大きい気がする。
- 私
-
描かれている対象を同じように見たときに、
「私にはそれは見えないぞ」ってこと?
- 小出
-
そうそう。
- 私
-
じゃあさ、うまい人とかみて、
「この人にはこれが見えてる」とかで
嫉妬したりすることはあるの?
- 小出
-
ないっ!
- 私
-
言い切った!
しないんだ?
- 小出
-
「はい、あなたの世界すごい!」であって、
私の世界は別にあるから。
- 私
-
じゃあ、テクニックの話じゃないんだね。
- 小出
-
うん。
私は、ロマン派とか写実派とかだけじゃなくて
古代の土偶とかも好きだったりするの。
人が脳内で考えたことが好きだから、
人との差もないし上下もない。
比べたりすることではないと思っている。
「あれ私もやってみたい」はあるけど、
上に上にみたいな気持ちはないね。
- 私
-
じゃあデザイナー小出として、
世に名を馳せたいみたいのは…
- 小出
-
なーい!
お金持ちになりたいって気持ちはあったとしても、
お金を持ちたいんじゃなくて仕事しなくて、
デザインだけをみていたいっていう(笑)
自分に重きを置いてなくて、
自分の中で起こる感情とか表現の方に興味がある。
- 私
-
「小出にとってデザインとは」って
聞かれたらなんて答える?
- 小出
-
うーん。
なんだろ、面白くない答えかもしれないけど、
デザインは解決策なんですよ。
- 私
-
なんの解決策?
- 小出
-
いつも、何を見ても課題が浮かんでいるから。
- 私
-
自分の中の課題ではなく世の中の?
- 小出
-
そう、整理したいんだよ私は。
- 私
-
それは「課題に対して挑む」みたいな気持ちなの?
- 小出
-
どうなんだろ。
自然に発生している感じなんだけど。
綺麗に整理したいだけじゃないんだよね。
デザインとしてあるべき姿に
完成させたいみたいな気持ちがあるの。
等間隔に綺麗に並べるだけがデザインじゃないから。
デザイン対象にとっての正解っていうのがあると思うの。
- 私
-
たとえば、それは名刺のデザインを依頼されたときに
「この人が持つ名刺としてはこれが最適」ってのがある?
- 小出
-
そう。
デザインとしての正解を導きだしたくて。
それが色であったり、フォントであったり、
紙の質だったりで表すんだけど、
私は、その前の時点で
その人自身や雰囲気を見たりして、
反映させるのがデザインだと思ってる。
デザインは人に教えてもらわなきゃいけないって
言ったけど、見えないものもひっくるめてデザインだから
やっぱり人に教えてもらうものじゃないかもね。
- 私
-
デザインはやっぱり日々の意識や
自分が見ている世界で磨かれていくってことだね。
小出にとっては紙に書くことだけじゃないんだね。
- 小出
-
そんなかっこいいものじゃないかもしれないけど、
作ったものは私から見たその人自身になっている…
はず(笑)
そうでありたいと思って作っているね。
だから本業にしないで、
副業として個別に受けて自由にやりたいのかも。
- 私
-
小出はこれからもずっと描くのかな?
- 小出
-
そうね。
死ぬまで描くかもね。
- 私
-
自分の棺桶とかデザインしちゃうのかな。
- 小出
-
いいねいいねいいいね!
楽しくなってきちゃった。(笑)