わたしには、小山内のようなストレートな生き方はできそうにない。
でも、「やさしく」はなりたいし、理想的な「やさしさ」とは、
彼女のやっているようなことを指すのだと思う。
‥‥自分1人で考えていてもきっと埒が明かない。
大学院を卒業して、今は関東で働いている小山内に会い、
わたしが考える「やさしさ」を伝えつつ、
直接彼女の考えを聞いてみることにした。
- わたし
-
「やさしさ」について色々考えているんだけど、
小山内とわたしの考えている「やさしさ」って、
対極にある気がしていて。
例えば、小山内って結構、
人に、はっきりものを言うじゃないですか。
そういうことって、わたしは相手に
受け入れられなかった時を考えて
すごく怖いなって思うんだけど、
小山内は、どういう風に考えてる?
- 小山内
-
わたしも一回、中学生の時に、周りに合わせて
人の話を「うんうんうん」って聞く
八方美人キャラを演じてみたんだけど、
そうすると、自分の発言の重みを
周りのせいにできちゃう気がしたんだよね。
でもそうやって、自分の発言に
責任を持たないのは失礼だと思ったの。
相談されたってことは、
相談に対する答えが欲しいんだろうなって思うから、
誠心誠意返さないと、相談してくれた人に対しても失礼だし、
だから厳しいことでもちゃんと言わないと、って思うんだよね。
相手も身を削って相談してくれてるのに対して、
優しい言葉をかけることは、わたし以外の人にもできるから、
わたしは厳しいことも言おうって決めて言ってる。
- わたし
-
なるほど‥‥。
それで言うと、わたしはまさに小山内とは正反対で、
わたしは相談を受けても、
共感して欲しいんだろうな、って思ってしまって、
アドバイスじゃなくて、相手が欲しがっている言葉を探して
言うみたいなことをしてしまうんだけど、
でもそれって自分から見たら、
すごい短期的でしかないというか、効果が続かないな、と思って。
- 小山内
-
そうそう。
適当にその場しのぎで受け流すと、また同じことを聞かれたり、
繰り返しになっちゃうと思う。
繰り返すとその分、フォローしなくちゃいけないじゃん。
結局そういう対応をしなきゃいけない人って、
別に自分にとって大切な人じゃないのかなって思うんだよね。
ただ自分の話を打ち明けて、
共感して欲しいって思ってるだけの人だったら、
その相手はわたしじゃなくてもいいし、厳しいかもしれないけど、
わたしの時間を割く必要はないな、と思う。
- わたし
- それならもっと大切な人に時間を割いた方がいいな、ってこと?
- 小山内
-
そう思うかな。
相談ってさ、わたしが思うに、
あんまり自分のためになることってない気がする。
でも、例えば、わたしが言ったことに対して
「こう思うんだけど」、って反論してくれる人がいたら、
わたし自身も「そういう考えもあるのか」って
知見が広がったり、気づきがあったりするなって。
でも共感は、新しいことは何も生まなくない?
- わたし
-
そうだね、それはあるかも‥‥。
もう7年間くらい一緒にいるけど、
小山内はわたしが小山内とは正反対のことを
やってきてるのも知ってるじゃん。
それに関して、小山内から見てわたしってどう思う?
- 小山内
-
どっちがいいかっていうのはわからないけど、
生きづらそうだな、と思う部分と、
生きやすそうだなと思う部分って、お互いにあると思うんだよ。
わたしは結構思ったことを言うけど、
それで相手がわたしを嫌いになってしまったら、
もう諦めるしかないんだよね。
でも、アプローチする相手は自分から選べるし、
逆に、しない人も選べるけど、
そのわたしが選ばなかった人たちに
文句を言われたりすることが、
わたしの生きづらさなのかもしれない。
でもかもちゃんは、相手を選べないよね。
それが波風を立てないことの素敵さだと思うし、
その分、自分が背負わなくてもいいものを背負ってしまってるな、
っていう生きづらさを感じる部分ではありそうだな、とは思う。
実際、わたしも八方美人やってた時期があるからちょっとわかるし。
多分かもちゃんとわたしがこんなに正反対なのに
うまく付き合ってこれているのは、
お互いの生きやすさと生きづらさが
全く反対で、お互いどこが痛くてどこが美味しいか
知ってるからだと思うんだよ。
- わたし
- ああ、たしかに。
- 小山内
-
自分の生きやすいって思った方を選べばいいから、
どっちがいいとかっていうのはないと思うよ。
一番いいのは、私たちの生きやすさを両立した
思ったことも言って人に好かれるやり方だと思う。
でもそれをやっていくのって結構難しいじゃん。
例えば、既婚者を好きになってしまった、って
相談を受けたとして、みんなその事実にフォーカスするけど、
その奥の層に、もっと違う核となる話があると思うんだよ。
もしかしたら根本には仕事の悩みがあって、
それを聞いてくれたのがたまたま既婚者のその人で、
話を聞いてくれるなら、その人じゃなくてもいい、
みたいな形で解決することもあるかもしれない。
でもそれを聞き出すってなると、体力的にも
精神的にもかなりしんどいと思う。
だから、人を選ばさるを得ないし。
- わたし
-
そうだね。
わたしも一回、小山内のやり方を真似して、
思ったことをちゃんと言う、みたいなことを
しようと思ったんだけど、
まず、その人の悩みの本質を掴むのが難しいし、
それを掴めたとしても、これを言って、
この人の人生が変わっちゃったらどうしよう、
と思うことがあったんだけど、
そう言うのは、受け取る側の問題だから、
みたいな感じで割り切って考えてる?
- 小山内
-
うーん、そもそも、わたしの言葉は
そんなに影響力を持っていないと思うなあ。
厳しいことを言うとは言っても、
それって相手に選択肢の1つを与えてるだけ、
みたいな感覚でいるかな。
- わたし
-
そこまで重たく受け止める人もいないのか。
自分の発言で人生が変わっちゃう人がいるっていう
考えが傲慢なのかもしれないと今思った。
- 小山内
-
かもちゃんの考え方で面白いのがさ、
「わたしは表面だけのやさしさで取り繕ってる」って言うけど、
結局今の話聞いてると、
根本の部分で人に影響を与えられる
って思ってるわけじゃん。
- わたし
- ああ、たしかに。
- 小山内
-
逆にわたしは結構、核心を得るように話を進めていくけど、
結局、わたしが相談してきた人に伝えられることって、
その人の表面的なことであって、
根本には迫れていないって思ってるから。
- わたし
- そうか。そこも真逆だね(笑)。
- 小山内
- そう、真逆だなと思う(笑)。
(つづきます。)